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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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百六十三日目 わかりやすく倒せそうだな

 あけましておめでとうございます‼

 こそこそっと友里さんに手招きをして柱の近くに来てもらう。


 服で隠してるから死角になって他人には見えてないはずだし、友里さんと目を合わせなければあまり話しているのもバレないはずだ。


 周りは少しずつ帰り始めているし。


「どうしたの?」

「一番奥から数えて3本目の柱。そこに一番近い扉の廊下の二本向こうに不審物を見つけた。四角く薄い鉄の箱に覆われていて、火薬の臭いが付着している。大きさは縦20、横15、高さ10ってところか」


 爆弾でもおかしくないサイズだ。そして友里さんはこれの存在を知らなかったらしい。


「なにそれ?」

「因みに、天井の吊り照明の窪みに上手いこと隠してあるんだがとった方がいいか?」

「爆弾だったらどうするつもり⁉」

「そりゃ解除するよ? 出来なかったら宇宙まで飛ばすなりなんなりできる」


 大抵のやつなら解除可能だけど、やけに凝ってるやつだとたまに危ないんだよね………


「解除できるの?」

「? うん。多分。トラップの宝庫だったら流石にキツいけど」


 盗賊シーフのスキルだってあるし、余程矢鱈に爆発させようとしてくるレベルのものでなければ大抵はなんとかなるはずだ。と思う。


 解除できなかったやつが滅多にないからよくわからんが。


「じゃあ、お願い。気を付けて」

「おう。解除できなかったら海にでも沈めとくわ」


 爆弾である保証もないけどね。


 そっと場を脱け出して例の場所に向かう。


「っと、すみません」

「いえ、こちらも見ていなかったもので」


 ぼさっとしていたら背の高い男の人とぶつかった。気を抜きすぎだな、俺。


 もっと緊張感もって仕事しないと。うん。


 っていうか、今日はやけに男性と絡むなぁ。ソウルが嫉妬しそう。


「先程の手品凄かったですね」

「え? あ、ありがとうございます」


 手品じゃないけど。


「あれどういう仕掛けなんですか?」

「いやぁ、流石に教えられませんよ。商売道具ですし」


 教えたところで理解されないだろうし、良くて中二病扱い。悪くて精神病患者と見られるだろうね。


「そうなんですか、残念です」


 駄目元で言っていたのか、ちょっと残念そうにはしているもののそこまで落ち込んではいないっぽいな。


 ……そして、俺が確証はないけど疑っている人物でもある。なんか妙に嫌な気配がするんだよね、この人。


 顔では取り繕ってるけど、鼓動までは取り繕えない。さっきから心臓の動きが急激に変化するのを繰り返している。


 パーティーに緊張している風には見えないが……少し揺すってみるか?


「友里さんにご招待いただいて、こんなパーティーに出させていただいたんですが……どうも緊張してしまっていて。貴方は慣れていらっしゃるようですね」

「いえいえ。こんな所に来れば誰だって緊張しますよ。作法がおかしくないか、気が気でなくて」


 ………今のところは変じゃない。


「やはり皆さんそうなんですね。慣れない場ですと少し疲れてしまって。今もこうやって少し離れたところに来て、落ち着かせているんです」

「そうなんですか。僕はてっきり――――」


 その時、耳をつんざく何かが割れた音が響いてきた。ホール……友里さんの居るところだ。


「行ってみましょう!」


 その人が手を出してきたので、一瞬迷ったがそれを掴んだ。暗器を隠し持たれていたらゼロ距離で喰らうことになってしまうが、ここで掴まなければ怪しまれる危険もある。


 ……やっぱりこの人、さっきから心拍数が殆ど変化していない。こうなることを判っていたのか、それとも鋼の精神力の持ち主なのか。


「いったい何が……」


 着いてみると、鉄臭い臭いが鼻腔をくすぐった。


「血の匂い……!」


 ヤバイヤバイヤバイヤバイ!


 咄嗟に息を止めた。本気で喉乾くからマジでやめてくれ!


 血の匂いがするのは、一人二人じゃない。10人くらい怪我してるんじゃないのか⁉


 奥へ入ってみると、二人の男性が拳銃と折り畳みナイフを持って参加者たちを脅していた。


 怪しいと思って最初からマークしていた人達だ。後手に回るくらいなら先に動いとくべきだったか……。


 っていうかそんなものどこにあったんだ? 俺が見逃すとは思えないが……。何かカラクリがあるのか? それとも俺の腕が鈍ったのか?


「そこの二人もさっさとそっちに行け。じゃないとこの会場のどこかに仕掛けてある爆弾のスイッチを押すぜ?」

「………」


 スイッチを奪うのは容易い。だがあれ一個とも限らないし、もしもの為にと衝撃を受けただけで発動する仕組みになっているかもしれない。


 それよりやっぱりあれ爆弾だったんだ。何でもないやつに過剰反応してたって恥ずかしいことにならなくて良かったよ。


 爆弾があることについてはなんにも良くはないんだけど。


「先に取っとくべきだったなぁ……」

「ほら、さっさと行け!」


 さてどうするか。……一先ず従っとこ。廊下の方では見張りの人が数人刺されて倒れてるし、下手に抵抗すればああなる可能性が高い。あ、でもゴーレムを送り込んで治癒魔法かけてるけどね。


 素人のナイフごときが俺の体に傷をつけられるとも思わないけど、友里さんと広大さんに正式に化け物認定されて追い出されたくないし。


 ついでにちょっと怯えてるっぽくしとこ。


 半分嘘泣きしながらちょっと体を縮こませて震えてみる。


 柱の近くにしゃがまされた時、手を握っている男性がそっと肩を抱いてくれた。わぉ、いっけめーん。まぁ俺なんも怖がってない上にパートナーいるんでどうも感じないけどな‼


 ソウルだったらこんときどうするかな。


 ………即座に殲滅に動いてそうだ。


「動くんじゃねーぞ! そのまま待ってろ‼」


 そう言うと二人はトランシーバーっぽいので連絡を取り始めた。やっぱりこの人たちは主犯じゃない。末端のチンピラってのが一番正しい見解かな。


 そしてこんな風に俺を群衆に紛れ込ませ、目を離してくれたこと、感謝するよ。


 魔法で爆発物を回収しろとゴーレムに通達、すぐにハエ型ゴーレム蝿君22号が動き出してくれた。22号から送られてくるデータをもとに動きを指示する。


 まず外箱を違和感がないか確認しながら外し、えっと……暗くて見えづらいな。あ、そこだ。右の上の方のああ、それ。それ切って。で、そしたらその左下の。それそれ。んで、奥にある紫のを切らないでその上のやつ。ああ、うん。それでいい。で、


「あの、大丈夫ですか?」

「ひっ⁉ え、あ、大丈夫です……」


 あっぶねぇ……操作に夢中になりすぎたか。


 演技もしつつ、電気の回路をどんどん切っていく。あんまり歯応えなくてつまんないなぁ。もっと小難しいやつにして欲しかった。


「よし、電源を……」

「電源?」

「あ、いや、なんでもないです……」


 つい声に出てしまった。まぁでも解除は成功。これで心置きなくこいつらぶっ飛ばせるな。

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