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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 一冊目
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十六日目 適合者


ーーーーーーーーーーー《セドリックサイド》


 この前のリリスの墓参り。ちょっと失敗したかもしれない。


「あの、リリスさん」

【なぁに】

「なんで俺の腕ごと石化するんですかねぇ?」

【さぁ?】

「いや痛いんだよ⁉ お前はわからないかもしれないけど石化って進行するとき割りと衝撃来るからな⁉」


 リリスが石化でわざわざ俺の腕を固定するようになってきた。


「別に置いてくつもりはないんだからいいだろ」

【あら、貴方にもわかるように愛を見える形で表現してあげているのよ】

「お前の愛ってはっきりした愛じゃないと思うんだ、俺」


 少なくともヒメノが俺に言ってくる愛とこいつの愛は根本的になにかが違うと思う。


【あら、またあのメス豚の話をするのかしら】

「メス豚って…………」


 まだあのキスの件怒ってらっしゃるご様子です。


【ほら、来たわよ】

「いや、固まってると動かしにくいんだって!」


 リリスで殴り付けるとダークネスウルフと呼ばれる影魔法を操る魔物が一瞬でドロップ品に姿を変える。


【戦えてるじゃない】

「難しいんだって! 重いし!」

【私の愛の重さだと思って受け入れなさいな】

「なんかやだその愛…………」


 徐々に削られていくHPを横目に思いっきり殴り付ける。すると、ポーンという間の抜けた音がする。


「お。カンストした!」


 転職しようっと。


【あら、私も転職するところ見てみたいわ】

「えー………」

【いいじゃない。石化は解いてあげるから】

「はいはい………」


 リリスがすぐに石化を解いてくれたので腰につけてからドロップ品を拾って広場へ向かう。


「祭りで人が多いなぁ」

【今度来てみたいわ。勿論実体で】

「実体って。俺の負担ガン無視かよ」

【死んでも復活するから良いじゃないの】

「問題はそこじゃない」


 端から見たら独り言が多い変なやつに見えるかもしれないが、ここではそういう人も多い。


 正確に言うとパーティチャットって言って電話がわりになる機能があるんだけど、あれパッと見独り言言ってるように見えるんだよね。


「さて、転職転職」

【なんか貴方がニートに見えてきたわ】

「恐ろしいことを言うな」


 広場から転移しとある扉の前へ。


「お、セドリックじゃん。元気?」

「シリュウ。お前まだここでバイトしてんの?」

「もち。中々報酬がいいんだこれが」


 シリュウは俺とほぼ同期みたいなものでこのゲームを発売からプレイしている古参の一人。


「お前また転職? どんだけやったらそんなにカンストするんだよ」

「俺は運がいいだけだからなぁ。じゃ、またこんど」

「おう」


 扉の中に入っていき、置いてある板に手を翳す。すると転職可能な職業がそこに表示される。


 俺は知りうる限り全ての職業をやり尽くした。筈だ。


 スクロールしていくと全ての職業の横にレベルMaxと書かれている。


「え、もしかして全部の職業終えてもなにもないとかそんなオチ?」


 隠し職業くらいあると思ったんだけど…………お?


「変なところに見たことがないやつがある」


 何故か生産職の大工と料理人の間に微妙な隙間を発見した。ズームしてみると、


《適合者 レベルーー》


 って。


「リリス。これなに?」

【私に聞かないで。ニンゲンとの交流なんて殆どないもの。知らないわ】

「へぇー」


 っていうかレベルーーってなに?本来やったことのないやつにはレベル1って書いてあるはず。


 ゴーグルをはめて見てみると、


『適合者:全ての職業をやり終えたもの レベルーー:該当なし』


「該当なしってなに⁉」


 重ねて鑑定をしてみると、


『該当なし:その物の概念がない』


【余計わからなくなったわね】

「どうしよう。でもこれ凄い基本ステータス高い」


 確認してみたら普通何かに偏るはずなのに全ての基礎ステータスが面白いほどに底上げされていた。


「試しに転職して二度と他のやつ選べなくなりましたとかやだなぁ…………」


 どうしよう。ん? なんか下にアイコンがある。


 タップしてみたら、これは職業というより称号みたいなもので扱いなので他の職業と重複して就けるらしいことが判明。


「おお、スゲェ」


 けどなんか怪しいんだよな………無理矢理これに就かせようとしてる感が半端ではないというか。隠し方が露骨というか。


「杜撰………」

【早く選んでよ】

「わかったっての。なんか怪しいからやめとくわ」

【あら、そう】


 よし、最近前に出ることが多いからアタッカーのそれなりに防御高いやつにしよう。


 それこそドラグーンでいいかな。


「えっと、ドラグーン、ドラグーン………あ、あった」


 触れる瞬間に何故か突然勝手に画面が動いて適合者をタップしてしまった。


 しかも普段ならあるはずの確認画面すらすっ飛ばして勝手にステータスに適合者が追加された。


「なんでやねん!」

【結局それにするの?】

「ち、違っ、勝手に! 見てただろ⁉」


 ウィルスとか仕込まれてるんじゃないだろうか。もしそうだったら最悪以外の言葉では表現できない。


「あ、でもドラグーンは選べる………」


 どうなってんだよ、全く…………。ここにはいる前に自動的にセーブされるから切ってやり直すこともできないし。


「なんなんだよ、これ」

【おまけってことで受けとればいいんじゃないかしら】

「ポジティブだな、お前………」


 仕方ない。もうなってしまったものは仕方がないんだ。


 でも不安ではあるから運営の方に問い合わせてもらった。


 そしたら。そしたらだよ。


《該当なし》


「こっちもかよ⁉」


 該当なしってなに⁉ いや、ゴーグルの鑑定がうまく働かなくて該当なしってのはまだいいよ⁉


 俺が聞いてるの運営の方だからね⁉


「じゃあこのステータスなんなんだよ………」


 運営も把握していないのってちょっと不味いのでは。


【そんなことより】

「なに」

【もう一回いきましょう? 今度はドラゴンがいいわ】

「あれ本来はパーティ推奨のクエストなんだけど」

【いいじゃない。私がいれば百人力よ】

「ああ、ソウデスネ………」


 リリスの破壊衝動って酒飲んでるときくらいしか無くならないんだよな。そう考えるとこいつが静かなときって基本ないのではないだろうか。


【早く♪ 早く♪】

「はいはい………」


 尻に敷かれるってこういうことを言うんだろうか。

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