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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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百五十五日目 リードのおやつ

ーーーーーーー≪ブランサイド≫


「キリカッ!」


 起きて直ぐに何があったのか思いだし、上の階で友里さんと寛いでいたキリカを軽く怒鳴り付けた。


「なんでそんな怒ってるのよ。キリカさん、ツキの包帯換えたりとか相当献身的に……」

「それはわかってる。けどあれはやりすぎだろ」


 友里さんが不思議そうに首をかしげた。どうやら包帯を換えたことは知っていてもその前に何があったのかは知らないらしい。


「キリカってば包帯換えるために突然ぶん殴って気絶させてきたんだぞ⁉」


 限度があるだろ限度が!


 流石の俺でもビビるわ!


「えっ」


 友里さんがキリカを恐ろしげなものを見る目で見るが、キリカは特に気にしていないらしい。サラッと受け流している。


 服脱いでください、って言いながら綺麗な右ストレートだよ。疲れてたのもあってモロに喰らったし。


「マスターならば死なないと思いまして」

「やり方があるだろやり方が!」


 俺のことなんだと思ってるんだ。確かにあれくらいじゃ死なないけど‼


「いいかキリカ。世の中にはやって良いことと悪いことってのがあるんだぞ」

「存じております」

「キリカにとってあれは良いことなのか⁉」

「結果としては良いことなのでは?」


 確かに俺は起きているときじゃキリカに包帯交換してなんて言わないからそう考えるとやっぱり気絶させてからの方が楽かもしれないな。


「いや……俺は思わない」


 少なくとも強制寝落ちは疲れるから嫌なんだけど。


「まぁまぁ、もう過ぎたことなんだしツキもそれぐらいにしてやってよ」

「なんで友里さんが間にはいるんだ」


 まぁでもこのままじゃ埒があかないだろうし、俺がカッカしていても意味ないな。


 やり方はあまりにも強引そのものだったけど傷も塞がりかけてるし、結果オーライ……だと個人的にはあまり思いたくないな。


「はぁ……もういいや。で、二人はなにしてんの」

「これからの予定を話し合っていただけです」

「そう。……朝飯は?」

「まだだけど」


 じゃあ泊めてもらってる身だし、俺が作るか。


「んじゃ俺が作るよ。冷蔵庫開けていい?」

「えっ料理できるの」

「なんだその反応。俺だって状況によっては一時的に独り暮らしとかだってしてたんだぞ」


 魔大陸に渡ってすぐの時はずっと一人だったし、その前でも情報屋として名を上げるために一人で活動することもあったしな。


「友里さん苦手な食べ物は?」

「きゅうり」

「りょーかい。適当に作るわ」


 冷蔵庫開けてビックリ、食べ物が全然ない。調味料はなぜか充実してるのに食材がない。


 しゃあない、手持ちから出すか。


「んー、ほんと空っぽだな」


 失礼だが本当になにもない。冷凍食品らしきものはわりとあったがみたことないものが多かったのでやめておいた。


 朝だしリゾット辺りにしとくか。ご飯ならあるし。


 ご飯を煮込もうとすると面白いことに鍋がない。この家今までどうやって料理してきたんだ⁉


「あっつ……ぉおー。すげぇ」


 火力が強い。よく観察してみるとただの火じゃないのは直ぐにわかった。可燃性のガスではなく酸素を使っているらしい。どういう原理なのかは俺にはわからん。


 だが地下で暮らすに当たってのいろいろな工夫は家中にみられた。


 空気を地上から取り込むパイプや光を取り込むための特殊な窓。俺の見たことのないものがたくさんあって面白い。


「こんなもんかな」


 塩で味を調えてから持っていくと二人が大きな紙を広げて何やら話し込んでいた。


「できたけど」

「ありがとう。そこ置いといて」


 二人ぶんの皿をおいてそれを覗き込むと入り組んだ線の書き込まれている地図だった。


「ああ、この辺の地図か」

「わかるの?」

「この辺りの地形は粗方覚えたからな」

「いつ⁉」

「昨日車で来たときに。俺の本職だしな」


 アニマル達に町中走り回ってもらっている。


「マジシャン?」

「そうさ」


 情報屋としての仕事だけどな。魔法を使っているのでマジシャンと言えないこともない。


「本日はどうされますか?」

「とりあえず金を作らなきゃな。金になりそうなものならいくらかは持ってるんだが」


 そういえばこの世界でならもしかしたら意外なものが価値が高いかもしれない。


 色々と調べてみるか。


「友里さん。これって価値高い?」

「……なにこれ」

「石」

「盗んだりしてないよね?」

「誰が盗みなんてするか」


 盗みをするときは貴族の脱税証拠書類とかしか盗まんぞ。


 宝石の類いなんてわざわざ盗むものじゃない。そもそもこれはリードのおやつだし。


「これ売れるかな」

「売れるよ流石に……どんだけでかいの」

「いくらくらい」

「私に聞かれても」


 そりゃそうだよな。


 ま、俺からすればそこらで簡単に手に入るし特に高価なものだとは思ってないからな。


「これどうせ手持ちの鉱山で出たクズ石だし」

「手持⁉」


 おっと口が滑った。


「キリカなら上手い具合に値をつり上げてくれるだろう?」

「お任せを」


 クズ石をある程度常識の範囲内の大きさにしてから袋に放り込んでキリカに渡す。


 中にはルビーとかダイヤモンドとかオパールとか、まぁ、色々と入ってるしそれなりの値段にはなると願いたい。


「食べ終わってからでいいから売ってきてくれ。多少は安く買い叩かれても問題ないから、トラブル起こさないようにだけは気を付けておいてくれ」

「畏まりました」


 唖然とする友里さんを他所に、キリカにどこに売り付けるかを話す。


「表の店じゃ怪しまれるかもしれないからな。裏で売ってきてくれ。店はもう調べてあるしなにかしら変なトラブルがあってもなんとかできる」


 アニマルたちで調べあげたルートを書いた紙(読まれると困るからこっちの言語でかいてない)をキリカに手渡してから料理のあとの片付けを開始した。


「ちょちょちょ⁉ 聞き捨てならない言葉が一杯聞こえたんだけど⁉」

「あー、あれだ。友里さんは関わらない方がいいよ」

「余計に気になるんだけど」


 知らない方がいいこともあるんだよ。多分。


 俺たちみたいに素性の知れない輩が持ってきた大量の宝石をサラッと購入してくれる人なんて多分殆どいない。


 盗品だと騒がれるのが関の山だろう。だったらもう最初から直接ブラックマーケットにでもなんでも流してやればいい。


 もっと稼げる方法は知ってるんだけど、けっこう時間がかかるので今のところはやめておく。そんなにお金が欲しいとも思ってないしね。


 滞在費用とかそれぐらいだ。


 ……キリカ、ちゃんと手加減してやってくれよ。


 威圧して脅しとるとかやめてくれよ……。

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