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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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百五十四日目 家がない?

 浅間家に到着した、らしい。


 らしいっていうのは、正直見た目じゃさっぱりわからないからだ。だってパッと見ただの更地なんだけど……


「え、いつも野宿してるの?」

「なに言ってるの? こっちよこっち」


 公衆電話ボックスくらいの大きさの箱に地下に降りる階段があった。


 な、なんかすごい。


 この辺りは住宅地。その全部が地下に家があるらしい。お陰で町中なのに見晴らしがいいのなんのって。


 お店とかは地上に作り、それ以外のこういう普通の家の地上は駐車場とかになってるんだとか。


 地下って面倒じゃないの? って聞いたら防犯の面でも地下の方が楽なんだとか。まぁ、窓壊されて侵入されるとかないだろうしね。


「おおー。思ってたより大分広い」

「どんな小さい家想像してたのよ……」

「地下室ってなんか小さいイメージがあって……」


 俺の家の地下室は敷地が大きいからけっこう広いけどな。


「地下三階に余ってる部屋が一個あるからそこでいい?」

「ああ。ありがとう」

「ありがとうございます」


 借りた一室は大体10畳ほど。机と金庫が置いてあった。え? 金庫は開けないよ。開けれるけど。


「マスター」

「ん?」

「服を脱いでください」

「……ぇ⁉」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








 なんか変な人を家に入れてしまったのではないかと少し後悔している自分がいる。


 お父さんは私に確認もとらずにあの人たちの滞在を許しちゃうし……。


「ねぇ、お父さん。あの二人大丈夫なの? どう見ても胡散臭い上に怪しすぎるんだけど」

「そうかもしれんが恩人を追い返すのもな……。とりあえず様子を見てみるのが一番だろう。あれほどの強化スーツを軽々と使いこなす人達だ。色々と隠したいことも多いだろう」


 強化スーツの試作品、それの体験者は非常に危険が伴う。


 強化スーツは体を無理矢理動かして本来の人間の力の数倍を出せるようにするもの。下手に使えば体が壊れてしまう。


 普通に考えてあの二人はあの強化スーツをあそこまで長い時間稼働できるほどの身体能力の高さがもとから備わっている。


 車を止めたときの布とか、意味不明のマジックとか怪しすぎるところが多いけど多分ツキ自身は素直な人なんだと思う。キリカさんはわからないけど。


 それに二人の名前すら偽名かもしれないし。


 ………やっぱりちょっと不安になってきたかも。


「あのスーツ、凄い薄かったね。どこの会社のものなんだろ?」

「あれほどの薄さだとハクレス社か、それともブリッジ社か」

「でもそこだとあそこまでの商品出せないよね? どっちかと言うとお洒落を売りにしてる会社だし」


 世界最強の強化スーツを出してる会社はイネル社だけど、あそこはゴッツイのばかりだしイネル社の製品は基本工事現場用のだし。


「どう考えても浮かばないなぁ……」


 全く無名の新会社があれを売り出そうとしているっていうのならわからないのも当然だけど……その場合、あの二人は……


「申し訳ありません」

「きゃああああ……ぁあ、キリカさん……」


 いつのまにか目の前にいたキリカさん。心臓が破裂するかと思った……。


「どうしたの?」

「包帯などはありますでしょうか? なければそれで良いのですが」

「確かこっちに……ああ、これでいい?」


 仕事の関係でよく使うから沢山あるんだよね。


「ありがとうございます」

「何に使うの?」

「マスターの怪我にです」

「え、怪我してるの?」

「……見ますか?」


 え、見ますかって……本人嫌がるんじゃないのそういうの?


「ツキが嫌がるかも」

「言わなければバレませんよ。先程お休みになられましたし」

「もう寝たの⁉」


 寝付き良すぎない⁉


 そのまま断れず、大量の包帯を持って下の階段を下りていく。


 ドアを開けるとツキは本当にもう寝ていた。床で。


「なんで床で寝てるの」

「鞄をおいた直後に倒れられましたので」

「それ救急車呼ぶ案件じゃない?」


 本当にこの人たちなんなの。


 心配してるのがバカみたいに思えてくる。


 キリカさんはツキの服をどんどん脱がせていく。なんか犯罪者になった気分……。私なにもしてないけど。


 最後の一枚を脱がした瞬間、真っ赤に染まった包帯が至るところに巻かれていたのが初めてわかった。


「申し訳ありません。なにか桶などはございますか? 思っていた以上に血が出ていたので」


 どうしてそんな冷静でいられるのだろう。一般人が見たら叫びそうなほどグロい光景を眉ひとつ動かさずに淡々と処理している。


 やっぱり、この人……


「バケツならありますよ」

「ではそれを」


 私の部屋に置いてあった黒いバケツの中に赤黒い液体で染まった包帯が入れられていく。


 勿論、全部が血で染まっている訳ではないけど……


「これで、生きてるの? っていうか今までずっとこんな状態だったの?」

「はい。ここまで気を張りっぱなしだったのでしょう。塞がっていた筈の傷まで開いています」


 どうしてここまで我慢して……


「言ってくれれば良かったのに……」

「言えませんよ。マスターの性格上、他人には特に注意を払って行動していますから」


 なんで注意を払う必要が?


「……マスターは仕事柄、必然的に敵が多いのです」

「仕事柄って……ツキっていくつから仕事してるの?」

「お仕事を始めたのは17の頃です」


 親の仕事をついだ、とかなのかな。そもそも謎が多すぎてよくわからないけど。


 それにしても凄い出血量。失血死してもおかしくないくらいなのに本人は割りと平然としている。


「輸血とか、しなくていいの?」

「マスターの場合はとりあえず大丈夫でしょう。喉が乾くかもしれませんが」


 喉が乾くのって、そんなに重要なことなの?


 そう思ったけど、何故かそれを聞く気にはなれなかった。キリカさんがあまりにも真剣そうな表情をしていたから。


 ……否定してはいたけど、やっぱり好きなんじゃないのかな……。

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