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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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百三十七日目 オークロード

 主の期待以上の働きをして見せましょう。


 目の前に醜い豚共が立ち塞がる。その事がまず不愉快です。


 即座にルーンを描いてイメージを固め、


雷槍(サンダーランス)


 放つと白色の光を纏った雷の槍が辺りを焼きつつ直線上に豚共を感電死させていきます。


 派手な魔法なので牽制にもなるでしょうし。


 さて、では私の目的を果たすといたしましょう。


縮地ステップ


 道中襲いかかってくる豚を手刀で斬り捌きながら目的に向かいます。剣術の足裁きである縮地ステップを使っているのは、早くソウル様方のところへ行って根絶やしにするためで、特に捕まっている人間のことを思ってではありません。


「クカカカカッ! いいですねぇ! 弱いなりに楽しませて下さいよぉ!」


 手を一閃するだけで直ぐに首が飛んでいく。つまらないとはこの事ですが、この豚があげる悲鳴は及第点でしょう。


 以前襲った人間の盗賊共(ウジ虫)よりも良い声で鳴きます。


「返り血がついてしまった……。いけませんね、これでは」


 主なら微風ですら避けられるでしょうし。その証拠に血まみれになっているところなどほとんど見たことがありません。


 っと、あそこですね。


 電気や雷の魔法に特化しているとはいえ、私も他の系統の魔法が使えないわけではありません。


風の刃(ウィンド・カッター)


 数本の不可視の鎌鼬が小屋の壁になっている布を切り裂きます。やはり、この魔法はあまり精度はよくありませんね。


 主が好んで使うのですが、風は目に見えないので扱いづらいです。


 きっと主ならば音も立てず私の倍以上の本数を出せますね。


 さて、中に入るとしますか。もう丸見えですけどね。


「ブモッ⁉」

「遅い。豚が」


 中にいた豚を斬り飛ばしてから人間に目を向けます。7人の女、それも殆どが意識を失っている上に腹が大きく膨らんでいる。


 一人辛うじて起きているものがいますが、怯えたように震えているだけで反応がありません。


 私の肩の上に小鳥ちゃん2号改が降り立ちました。


「主。どうされますか」

『酷いな、これは……』

「人格が壊れているので生かす意味はないかと」

『そうもいかんだろ。本当にお前は他人に興味がないな……』


 呆れさせてしまったでしょうか。


「申し訳ありません」

『いや、謝られても。っていうかこの人たち動けそうにないな。怪我も酷いから回復魔法かけるまでは下手に移動させるのはやめておこう。彼女達は一旦任せる。オークロードが倒されたか確認してからじゃないと俺達も近づけないからな』

「ここを守れば良いのですね?」

『できるか?』

「勿論です」


 そこまで話されてから主はまた別の所の様子を見に行かれました。では私はここの守りを固めますか。







ーーーーーーーー≪ソウルサイド≫







「ソウル! 敵がいないぞ!」

「ごめんなさい! やらかしました!」


 初撃に力を入れすぎて寧ろオーク達が散り散りになって逃げ出してしまう。


 これじゃあ殲滅なんて出来ないぞ⁉


「あああ……なんで手加減しなかったんだ……」

「悔やんでも仕方ないだろう‼ ロードに逃げられる前に仕留めに行くぞ!」

『お困りだね?』


 目の前に鳥が降りてきた。これは、ブランさんのゴーレム!


 手を出すとその上に乗って毛繕いをし始めた。いや、羽繕い?


 本当にどうでも良いところに手が込んでいる。


「ブランか。なぜここに?」

『いや、ライトを見てきたんだが問題無さそうだったから。それにお前ら今オークが逃げてることに困ってんだろ?』

「え、あ、はい」


 ゴーレムがくいっと首をかしげる。


『俺が何とかしようか』

「できるのか」

『小鳥ちゃん2号改に不可能はない』


 なんでそんなに自信満々なんだろう。


 妙に上から目線なのはいつもと変わらないけど。


「どうするんです?」

『結界はってやるよ。それでいいだろ』

「ああ、なるほど」


 言うが早いがゴーレムが飛び立って数秒後、幾何学模様がドーム状に広がって集落から逃げ出せないように檻をつくった。


 相変わらず仕事が早い。


「では、行くか」

「はい」


 魔法使い系のジョブしかとっていないから僕の体力はメイド達とそう変わらない。


 エルヴィンさんに時々待ってもらいながら集落の中心に走った。


「ここだな」

「多分」

『おーい、お前らー』

「あ。ブランさんだ」


 また来た。


『ロードはそこじゃない。逃げようとしてたみたいで東のやぐら辺りにいる。結界で足止めできてるけど俺が直接かけた魔法じゃないからもうあんまり持たない』

「えええ……走ったのに」

『すまん。見付けてから少し尾行してたから言うの遅くなった』


 結構足が疲れた……。


「ソウル」

「?」

「乗れ」

「へっ?」


 エルヴィンさんに背負われて現在走行中。すっごい恥ずかしいけど、僕が走るより数倍早い。


『快適だなぁ』


 ブランさんのゴーレムは僕の手の中で休憩中。一人だけ安全地帯にいるくせに‼


「いたぞ‼」


 視線を前に移すと、確かにいた。オークロードとその腹心なのか何匹かの上位種が。


「ぶちかませっ!」

氷の礫(アイス・バレット)!」


 間髪いれずに背負われたまま魔法を放つ。とてつもなく間抜けな体勢だけど、狙ったとおりにオークロードの顔面に………


 当たるはずが近くの盗賊オーク・シーフが身代わりになって防いできた。


「一筋縄では行かないということか」


 ボソッとエルヴィンさんが呟く。


「もう下ろしてもらって大丈夫です。ここから先は任せます」

「了解した!」


 エルヴィンさんの手が足から離れた瞬間に後ろにとんで指を構える。


「っ、障壁ブロック!」


 オークがエルヴィンさんに向けて放った矢を魔法で防ぐ。


 エルヴィンさんはそのままの勢いで目の前にいたオークの上位種を二匹倒し、オークロードに対峙する。


 邪魔をしてくる魔法使い(オーク・メイジ)を魔法で隔離してから氷の矢で確実に殺し、エルヴィンさんの援護にはいる。


 エルヴィンさんが剣を振ると、オークロードの腕が落ちた。


 その隙に顔面に魔力で適当に形成した弾をぶつける。これはルーンも詠唱も必要ない、ただの魔力の塊。威力は子供のパンチくらいしかない。


 だが、発動のしやすさと速度から不意打ちにはもってこいなんだ。


 オークロードの頭が少し揺れる。


「……余所見をするな」


 そこに再び剣をきり返したエルヴィンさんの切っ先がオークロードの腹に深い傷をつける。


「ブモォォオオオオ⁉」

「終わりだ」


 倒れ込むオークロードの首を跳ね、殺すことに成功した。


「あっさりでしたね。流石です」

「なに。あのタイミングの魔力弾は私でも引っ掛かる」


 ところで、ブランさんのゴーレムはどこに行ったんだろう?

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