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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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百二十四日目 騎獣はよく考えて選びましょう

「おお、ようやく来たか! さっさと座れ」


 どうやら相当切羽詰まっているらしい。貴族の礼すらすっ飛ばして突然本題に入るみたいだ。


 ところで俺の頭の上の一人と一匹はスルーですか?


「お前が以前言っていたことが現実に起こってしまった」

「以前言っていたこと……魔物の変質でしょうか」

「それだ。知っているか?」

「まだ魔大陸の情報網が拙く」


 そんな重要なこと、人族の国なら速攻で気付けたのに。


 やっぱりまだこっちに寄越してる人数が少なすぎるか……。


「知らなくともよい。ただ、問題なのは一ヶ所で済んでいる話ではないのだ」

「……理解しました。何ヵ所でしょう?」

「確認できているだけでも7ヶ所だ」

「7……」


 明らかにおかしい。元々魔物が沸くところは瘴気が集まりやすいところだからある程度は予想できる。


 だが、稀に滅茶苦茶な強さの魔物を作ってしまう瘴気がある。これによって変質した魔物は普通の同種の魔物の三倍以上の強さを持つ。


 瘴気がでる場所はわかっているから皆定期的にそれを散らす。あれを吸い込んだだけで病気になるし。


 だけどそんな変質した魔物をだすような瘴気溜りがそこらにゴロゴロとあるとは考えにくい。


「これを、どう見る?」

「人為的なものでしょうね……。自分の情報網が拙いとはいえ、そこまで大量に発生しているのなら流石に気づきます。それが自然に起こったとは奇跡としか言いようのないくらいの確率です」

「どれくらいの確率だ?」


 ええと……瘴気溜りの未発見の確率に、更に魔物の出現数を割って、そこからまた変質の可能性のある確率を……


「……最大で、0,001%でしょうか。大雑把に計算して、端数を繰り上げしてそれなので実際はもっと低いかと」

「………だろうな。前代未聞だからな」


 エルヴィンの蔵書や図書館に置いてある過去の文献にもそんなことがあったなんて書かれていなかった。禁書でもそんな内容は見たことがない。


「事態の沈静化は?」

「なんとか、といったところだ。相当な数の兵を投入してやっと駆逐した」


 なら、とりあえずは大丈夫か……


「どうするべきだろうか」

「今は原因も判らないのでまた出てきたら兵力で押し返すしか今のところ方法はないかと。発生した場所に兵を配置していつ来ても対処しておくのが現状できる精一杯のことでしょう」


 荒業だけど、今はこれしか方法がない。


「それと、これを」


 鞄からルーペに似た道具を取りだして机の上に置く。


「これは?」

「魔力を見ることができる魔法具です。魔力消費も必要ありませんから誰でも使えるはずです。試しに覗いてみてください」


 使い方を教えてからそれを渡すと、不思議そうな表情をしながらもそれを目に当てた。


「ぉ⁉ ひ、光ってるぞ……?」

「魔力に反応して発光しているようにみせるんです。瘴気の場合は黒い霧みたいなものが見えるようになってます。20本ほど提供しますのでどうぞ使ってください」


 俺が作ったものは基本、信用できる人にしか渡さないんだが今回はそんなことを言っている暇はない。


 なるべく急いで終わらせないと魔大陸全土が戦場になるのも時間の問題だ。


「魔王様。自分は自分で原因を探ってみたいのですが、宜しいでしょうか?」

「ああ、構わん。場所は地図に印してある。これを使え」

「ありがとうございます。では失礼します」


 20本の魔法具を置いて直ぐに部屋を出た。


『ねぇ、どうするの?』

「とりあえずアニマルの飛べる子達は場所に向かわせた。俺は一番近いところを直接見に行こうと思う」


 鳥や虫のアニマルゴーレムは話を聞いてるときに直ぐにリンクを繋いで現地に行ってもらった。


 先に拠点に馬車を置いてから俺も空を飛んで状況の確認に行くつもり。


「キュ、キュアッ!」

「え?」


 いつのまにか頭の上から肩に乗っかっていたリードが羽をパタパタと動かす。


『乗せても良いってさ』

「キュ」


 えっ?


 俺一人で飛んだ方が速い気がするんだが……


 まぁでも消費魔力は少ない方がいいし、乗せてもらうメリットはある、か?


「クキュ!」


 でも本人スッゴいやる気なんだよなぁ……


 俺一人で飛んでくからって言っても聞き入れてもらえなさそうだ。レイジュも同じ反応するよな……あれか。俺の騎獣はちょっと面倒になるっていうルールでもあるんだろうか?


「あー、うん、頼むわ……」


 もう、どうにでもなればいい。


 リードが元の大きさに戻ってから直ぐに拠点に帰ってから町の外に出てリードに跨がる。


「あ、鞍つけ忘れたぁぁぁアアアア⁉」


 即座に浮き上がるリード。


 リードの背は鱗で覆われてます。これがめっちゃ刺さる。


「ちょ、リード‼ 痛い、痛いから‼」

「キュアアアア!」

「話聞いてよ⁉」


 どうやら嬉しいらしいリードは俺の話も聞かずにそのまま一気に加速し始めた。途端に風圧を受ける。鱗更に食い込む。


「あだだだだ⁉」


 血が! 最早切れてるから‼


 お前の鱗どんだけ鋭利なの⁉ 凶器だよこれ⁉


 風を極力避けるために姿勢を低くするのでブスブスと全身に刺さりまくり何回か意識が……。


 ついた頃には既に満身創痍だった。


「俺貧血になりやすいんだって……うっ……」


 しかもテンションが上がりすぎたせいか、上に乗ってることを忘れているのか判らないが。正直に言おう。乗り心地最悪だ。


 フワッと浮いたかと思えば即座にかかるG。上下に左右に振られまくってどっちが下なのかもわからなくなってたよ、一瞬。


 俺じゃなかったら落ちてたね。


「リード……お前もっと上に乗る人のことも考えるんだぞ……?」

「きゅ?」


 あ、駄目だこいつ……上がどんな状況になってるのかもわかってない感じだ……。


 ……帰りは自分で飛ぼう。

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