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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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百九日目 オッドは50円

「お、おい……なんでこんなに警備が少ないんだ」

「そんなこと言われましても……」


 俺が警備員配置してるわけじゃないんだし。


「ここ最近は賊の出入りとかもほとんどないそうなのでその分の警備兵は減らしてるのでは? 兵を雇うのもただではないですし」


 経費削減じゃないかな。俺の家は使用人が警備員兼ねてるけど。


 無駄話しているうちに魔王様の部屋についた。一度通信機でコールをかけてから戸を叩く。


 こうすれば俺が訪ねてきたってわかりやすいだろ。


「……入れ」


 数秒の間の後に中から声が聞こえてきた。扉を開けると、パンツ一丁……というかほぼ全裸の魔王様が書類を広げていた。


「………何故裸なのかお訊ねしても?」

「暑いからだ」

「……そうですか……」


 普通人前でほぼ全裸になる王様なんていないと思う。俺だから良いものの他の女性だったら悲鳴あげるぞ。


「して、後ろの者は」

「自分の付き添いで来て貰いました」

「何かあるのか?」

「今入院中の病院を抜け出して来ていまして……」

「………」


 ウッ、沈黙が辛い。


「そんな状態で来られても困る」

「ですが自分がここに来るのをよく思っていない方々の事も考えると今日来ないわけには……」

「はぁ……」


 あからさまにため息つかないで欲しい。


「まぁいい。座れ」

「はい」


 第82代魔王ドラクロワ・バトラー。なんか名前からして戦い好きに見えるけど実際は争い事が苦手なちょっと臆病な人だ。


 前回の戦争はこの人の前の代の魔王が強行したものだったらしくこの人が魔王になったときは引き継ぎ期間だったので権力がほぼない状態だった。


 なんとかして戦争を止めさせようと思っていたところに俺の登場だ。互いにラッキーだったとしか言えないタイミングだよな。


 先代魔王のところに停戦交渉にいかなくて良かったぁ……確実に殺されてたわ。


 運が良かったよな。本当に。相手も同じこと考えてたなんて思いもしないもん。だってあっち攻めてきてるんだぜ? 焦るに決まってるでしょ普通は。


「ではすぐに話を終わらせるとしよう。白黒にはこれを調べてもらいたい」


 数枚の紙が入ったファイルを渡された。なかを確認してみると……


「ああ、これなら今すぐにでもお話しすることは可能ですが、いかがでしょう?」

「なに?」

「いえ、勘でどんな依頼が来るのかなんとなくわかるようになっていまして……これなら事前に調べていたものと一致します。今お話しましょうか?」


 この国の内政に関わりそうなことは大抵調べている。情報は鮮度が命だからな。魚じゃないけど。


 情報は時期が過ぎれば空気と同価値位でしかないけどタイミングを見計らうことさえできれば黄金を遥かに越える価値を出す。だから下調べは大事なんだ。


「それは本当か?」

「はい。ある程度の事は調べてありますので。例えばこの商業ギルドの汚職疑惑ですが、海産物の流通を担っている部署で少し問題がありました。が、それは冒険者ギルドとの諍いで今回の件は全く問題がありませんでした」

「諍いとは?」

「なんでも道中の護衛の依頼料が少なすぎると冒険者の方から後で苦情が来たらしく、それが殴りあいの喧嘩まで進んだというだけです」


 ただの喧嘩だ。調べてみたがそれ以上もそれ以下もなかった。


 っていうか魔王様。服着てください。見てるこっちが寒くなってくる。


「ふむ……それはどうやって調べた?」

「企業秘密です」


 ドローンで調べました。


 それから先は全部仕事の話だった。面白くないので割愛する。


 けど、軽く内容を言うと……市場の話から貴族関連の話までしたと言っておこうか。


「それと……最後にひとつだけ。何か嫌な予感がします。このアストさんが住んでいた村もそうですが、あらゆるところで水源が枯れていっているらしいです。土地柄雨が降りにくいから、にしても異常です」


 俺が知っている限りでは四件おきている。しかも全ての地域に小さな村がある。


「誰かがやっているのか」

「恐らくは。確証は御座いませんので聞き流していただく程度でも結構ですが……それに加え、アストさんの村に滞在している時に天使に襲われました」

「召喚者は?」

「とりあえず現在位置だけは把握していますが接触してこないのでなんとも……」


 マーキングはしてあるんだが、マップ外なので大雑把にしか場所を把握できない。


 絞りこむことのできる魔法もあるにはあるけど多分使ったらバレるし。


「では様子見を続けろ。警戒するようには呼び掛ける」

「お願いします」


 とりあえずは放置するしかない。俺を知ってて襲いかかってきてる感じはなかったし、狙われてはいないだろう。恨まれてはいるかもしれないけど。


「では報酬の13800オッドだ」

「っと、確かに受けとりました」


 ちょっと忘れてた。俺一応商人なのに。あぶないあぶない。


 忘れて帰ったらソウルに怒られる。


 ちなみにオッドとは魔大陸での通貨で1オッドは大体日本円で50円くらいだろうか。690000円稼いだことになる。


 まぁ、今回はそれほど危険なこともしてないし依頼も簡単なものばかりだったし69万円くらいが妥当か。


「た、大金だ……」


 なんか後ろからそんな声が聞こえてきたけどまぁ、無視で良いだろう。


「もう帰るのか?」

「はい。通常業務を家族に任せっきりにするのは心苦しいですし……それにもうすぐ子供の入学式があるので」

「「子供がいたのかっ⁉」」

「い、いや、正確には養子です。流石にこの年で生んだ子供が学校に行くまでに育つのは無理がありますし。自分が12、13歳で子供生んだ計算になっちゃいますから……」


 不可能だろ。いや、不可能ではないのか……?


 あ、でも俺最初に生理あったの中二だな。無理だ。


 遅いって? チビだったからその分いろいろと遅いんだよ。


「そうなのか……」

「なんだ……」


 なんか残念そうに言うなこの二人。


「「ん?」」

「へ? なんです?」

「今、産むことになるって言ったよな?」


 言ったけど?


「お前雌なのか」

「め、雌って……まぁ、女ですけど」

「「なっ⁉」」


 アストさん。雌ってのはないと思うぜ。動物みたいだよ。


 女の子に雌呼ばわりはモテないぞ。


「言ってませんでしたか?」

「「初耳だ!」」

「そうでしたか……じゃあ今言いました」


 それにしてもそこまで驚くことか?


「お、女に裸を見られてしまった……」

「俺……こいつの目の前で堂々とやってしまった……」


 堂々と? ………ああ、トイレか。


「いや、別にどうも思わないんですけど……」

【女としてそれはどうかと思うわよ】


 ………確かに。

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