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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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百一日目 バートン族

 薄々気づいていた。いや、わかってはいた。


 イベルが普通の人間じゃないってことぐらいは。


「おい、イベル……でかすぎじゃない?」

「それ、僕も思ってました……」

「人間の幼子はここまで成長が早いものなのか」

「「いや、それはない」」


 ついこの間まで年相応の体の大きさをしていたはずが、どうみても小学生くらいにまで急成長していた。


 え、お前いくつ? 2、3歳だよね? 正確な誕生日わからんから知らんけど。


「ブラン、おかえり」

「ああ、ただいま……」


 ついこの前から今日までの間に一体何が起こった。


「マスター、お帰りなさいませ」

「ちょっと教えて。これ、どういうこと? なんで急成長してんの?」

「はい、イベル様は人間ではなかったようですね」

「軽いな……」


 何故に満面の笑み。また俺の家族の人間率が減ったということか。


「かといってハーフでもなさそうだな……あれか、先祖返りかクォーターか」


 見た感じ魔力とかは完全に人間なんだよな。


「それにしても……なんで俺達と離れたときだけ急成長したんだ?」

「魔法を使えるようになったからでしょうか」

「え、魔法教えたの?」

「駄目でしたか?」

「いや、いいんだけど……そういうことかぁ……」


 理解しましたわ。多分何の種族が混じってるかもわかった。


「イベル。話がしたいから俺の部屋に来てくれるか?」

「う、うん……?」


 イベルを連行、念のために防音の魔法をピネにかけてもらった。


 よし、先ずは。


「イベル。学校に行きたいって言ってたのは本気か?」

「……うん。色々と知りたいんだ。魔法や外の事を」

「そうか。パンフレットを知り合いから譲ってもらったから」


 じっちゃんの書き込みが大量にしてあるパンフレットを出す。


「なんか凄い書いてある……」

「うん。じっちゃんも孫の学校選びにはかなり慎重にしてたみたいだし」

「じっちゃん?」

「ネベル王国って知ってるか?」

「人間五大国」

「そう。そこの国王」


 もうイベルも驚かなくなってきたようですね。


 まぁ、知り合いにウィルドーズ国王いるしな。ん? いや、イベルからすれば義理の祖父になるのか?


 まじか。あいつあの年でもう孫出来てんぞ。


「………!」

「どうした?」

「学費、なにこれ」

「そりゃあ貴族が行くところだからな。金もかかるし面倒なのは当然だろうさ」


 それと、人間以外に排他的な学校は除外済みだ。


 イベルは人間じゃないだろうし、もし人間だとしても異常すぎる。色々と。


「一年で3ウルク……四年で12ウルク……そこからの一年は5ウルク……」

「おい、気にすんなよ学費なんて。これでも金はない訳じゃないからな」


 それに、


「最悪なくても龍でも狩ってくれば釣りが来る」


 折角それなりに戦える体なんだから少しぐらい金儲けに使ってもいいだろう。


 イベルの目が金額から離れないけど大丈夫か?


「お金がない人って読み書きとかどうしてるの」

「? ああ、教会とかで簡単な読み書きを教わるんだ。そうやって信者増やすもんだし」

 

 教えてる方もあまり読み書きしっかりしていない事も多いけど。


「ねぇ、魔法って学ぶならどこがいい?」

「んー、そうだなぁ……理論を学びたいならここか、それともこっちか」

「ブランは?」

「俺は秘密。だけど学校ではないぞ」


 正確に言えば独学だ。裏技とかも大量に使ってるから人に教えたくない。それで事故られたら嫌だし。


 だから俺が教えるのは体捌きと簡単な誰にでも扱える初級の魔法くらいだ。


 専門的なものは専門のところで学んだ方がいいだろう。


「それと、もうひとつ。お前、自分の種族知りたいか?」

「うん」


 即答ですか。まぁ、確かに成長速度が人間離れしすぎてるしな。


「ちゃんと調べていないからなんとも言えないが、多分魔族の少数民族『バートン』の血が混じってるんだろうな」

「ばーとん?」

「ああ。少し好戦的な戦闘民族で魔力量に応じて成長が早まったり寿命が延びたりする種族だ」


 その原因は未だに謎だが魔力を自身の栄養にして生きているからだという説が有力だ。


 どの種族でも魔力を切らしたら死ぬけどバートン族はそれがかなり顕著なんだって。


【確か森に住む種族よね?】


 ああ。他種族や多民族とはほぼ接触しないから判らないことだらけの民族だけど。


「まぁでも血自体は結構薄いから人間だって名乗っても問題はないだろうさ」


 多分ここまで急成長するのは今だけだろう。そのうち止まって普通に寿命を迎えるだろう。


 それもあわせて伝えるとイベルもホッとしたようだ。なんだかんだ言って自分の正体は気になっていたらしい。そらそうだわな。


「学校って全寮制が殆どなんだね」

「家から通える距離にある人が少ないからな。それだけじゃなくて毎日馬車で移動ってのも大変だろうし」


 パンフレットをパラパラと捲りながらイベルとどこがいいか相談する。


「イベルは魔法が学びたいのか?」

「うん」

「そうか。じゃあ将来なりたいものとかあるのか?」

「冒険者」


 冒険者か。イベルのことだからその危険度や厳しさもわかってそう言っているんだろう。


「ブランって冒険者になろうとは思わなかったの?」

「うっ………いや、なったことはないわけではないんだが」


 話さなきゃいけない雰囲気ですね、わかります。


「なって数日で戦争への徴兵命令が出て……戦争はしたくないと意地はって拒否して永久権利剥奪になったんだよ……」


 うわぁ、みたいな顔でこっちを見るな。


「え。でも僕を拾ったときって」

「そう。結局戦争参加してるんだよね俺……」

「………」


 情報提供した手前ビビって逃げるとか出来ないだろうが。


「イベル。ここなんてどうだ?」

「サウスイーグル魔導学園?」

「俺の知り合いが経営してるところでな。傭兵や冒険者、騎士の育成学校で魔導って名前はついてはいるけど剣の戦闘訓練なんかもある『実力主義』の学校だ。実力さえあれば飛び級だったりも出来るし実践で使える魔法は勿論夜営なんかの訓練もするんだ」


 知りあい、というよりお得意様が経営してるところなんだけどな。


「ここにする」

「えっ、早くないか」

「ううん。ここでいい」

「でも、お前もちゃんと考えて決めた方が」

「ここでいい」

「ああ、そう……」


 なんでここまでぐいぐい来るのだろうか。


 後で気付いたことなのだが学費が他よりも比較的に安い上に奨学金や学費免除の特待制度なんかもあった。


 あいつ気を使いすぎだろう。

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