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吟遊詩人だけど情報屋始めました  作者: 龍木 光
異世界探索記録 三冊目
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百日目 一ヶ月ぶりの

 レイジュの背を撫でながら、ふと考えた。


 俺って死んだら、どうなるんだろうか。


 死後の世界とか昔の人はいろいろ考えて悪人は地獄に、善人は天国に行けるってものもあれば、何もないと言う人もいる。


 俺からすればこの世界が死後の世界みたいなもんだけど。


 結局死んだら帰ってこれないんだから誰も確かめようがない。それでも皆想像力を膨らませてそんな世界があると広く知れ渡っているのか。


 皆、救われたいんだ。俺はそう思う。


 自分は善人だから天国に行けるんだって、そう思いたいんだ。


 でも善人と悪人の違いってなんだろう。悪いことの範囲というのが俺にはよくわからない。


 人は生きているだけで罪を重ねている。ただこうして歩くだけで足元の虫は死ぬし、食べ物を摂取しなければ生きられないのに食べるときには罪のない自分ではない別の生き物を殺さなければならない。


 世界はとても合理的で、かなり残酷だ。


 俺の一番の疑問は、どうして生命というものが存在するのか。


 悪戯にただ増えて減ってを繰り返すだけが俺たちの存在意義なのだろうか。それとも、なにか別の意味があるのだろうか。


【また難しいこと考えて】


 ……暇な時間が出来るとなんか考え事したくなるんだよ。


 最近“死”ってものをかなり近くに感じるからさ。それを恐いと思えない時点で俺も大分変わったのかと思うけど……


 まぁ、二年以上もこんなところに居れば考え方も変わるか。


【そうかもね。でも私からしてみればそこまで変わってないと思うわよ?】


 まじすか。


「ブラン? 大丈夫か?」

「え? 何が?」


 突然話しかけられて後ろに目をやるとエルヴィンが小窓からこっちに顔を見せていた。


「目の焦点が微妙にあっていなかったからな。交代するか?」

「いや、大丈夫。ちょっと考え事してただけだし」


 空は群青色に染まり始め、白い光を放つ星々がちらほらと姿を見せていた。


 そろそろ野宿の準備でもするか。


 この辺りでいい感じに開けた場所は……あ、地図後ろのメイド馬車のなかに置いてきちゃった。


 でももう少し進んだところに確かこの前野宿した場所があったから、あそこにしようかな。


 カチャカチャとベルトの調整をしながら道を思い出す。


 森羅万象ゴーグルに光点が映った。色は、中立の黄色。こちらにはまだ気づいていないみたいだけど遠すぎてなんの動物なのかはわからないな。


 一応合図はしておこう。


 御者台の上に立って『索敵範囲内、動物あり、中立、念のため警戒』の手信号を真後ろのメイドに伝えると、そのまた後ろのメイドに手信号が伝わっていく。


 だが……少し気になるな、この光点。


 やけに動きが少ない。倒れてるんじゃないか? って思うくらいに。まぁでも死にかけてるわけではなさそうだし様子見だな。


 下手に刺激しない方がいいからこのまま一旦放っておこう。


 で、野宿場所についたが。


「まだ動かないな……疲れてて体力を回復してるのか、それともあんな森のなかでぐーすか寝られるほど神経が図太いのか……」

『ブランじゃない』

「俺そこまで図太くはないぞ」


 流石に魔物の闊歩する森のなかで寝られないな。せめてなにかしら対策はする。


 だが、対策してる感じもなかったし、やっぱり動物なのかな?


 警戒しつつ次の日。


「一歩も動いてないな」


 ゴーグルが壊れてるってことはないよね流石に。気にはなるけど不気味だし放置でいいかな……








 ガラガラと鳴る馬車の車輪、代わり映えしない景色。そりゃ飽きますわな。


「暇だ……飽きた……」

『文句言わないでよ、あんたここのトップでしょ』

【上がだらけていたら下も腐るわよ?】

「わかってるけどさ……」


 中々に心に刺さる口撃を受けながら適当にポイントショップを開く。ゴーレムの整備とかは揺れる馬車の中ではあんまりやりたくないし。


「ぉっ、なんか面白そうなものがある」


 ポイントショップに新商品が入荷していた。なんか他の機能の大半は死んでるのにこれはガンガン更新されていくんだよな……


 銃が何種類かとそのマガジン、それとポイントくじが更新されていた。


 ポイントくじは一回10000ポイントで引けるくじで最下位の10等がマガジンや弓などの消耗品、一等は超高性能の武器やアクセサリー等が当たる。その更に上に特賞もあるけどこれは人生で一回当たったら運がいいくらいのものだ。


 森羅万象ゴーグルもこれの特賞で当たった。


 ちなみに10000ポイントだと正規でものを買うならテントやコンロが買える。


 一番安い矢とかはものにもよるけど100ポイントで買えるものも多いから最下位ばっかり当ててたら本当に無駄遣いにしかならない。


 当たりはデカイが、それ以外のものはしょっぱいんだよこのくじ。


 今回の一等は敏捷と攻撃にプラスの補正がつくアクセサリーか。うーん、微妙。


 いや、欲しい人は喉から手が出るくらい欲しいんだろうけど俺元々壁役(タンク)だったから未だにその考えに近いんだよな。


 敏捷よりも防御が上がる品の方が気になる。


 だから割りと知られていないが俺は防御の数値が飛び抜けて高い。アタッカーだと見られてはいるけど。


 だから大抵俺へのダメージの通らなさに初めて戦うやつは驚くんだけどな。


「んー、念のために飛び道具は補充しておくかな……」


 ポイントも結構あるし、たまには練習しないとな。


 弓はこの前つくったから矢と、それから弾も用意しておこう。


 そんな感じで適当に時間を潰していると、外からノックされた。


「もう見えてまいりましたよ」

「お、ありがとう」


 窓の外に顔を出してみると高い壁が聳え立っているのが見えた。


「一ヶ月ぶりだなぁ……」


 まぁ、長居をするつもりはないけどな。


「ここから先はどうする?」

「物資補給で二日泊まってから魔導都市の方に行こうかなって思ってる。そこから先またいくつか経由して魔族の大陸の方に入るよ。あ、けど最初は俺だけな。まだ拠点も見つけてないし下手に彷徨けば誤解されかねないし」


 メイド軍団も目立つし、俺の連れも皆顔がいいから兎に角人の目が集まるんだよなぁ……


 ぞろぞろと入っていって反逆者だとか言われたら最悪だし。


「なに?」

「俺だって色々考えてこうすることにしたの。あっちは希少種にさえも排他的なんだから、人数多いと目立ちすぎるし」


 エルヴィンはまだなにか言いたそうにしていたけど、俺が口を閉じたからかその先は口を開かなかった。

 ストックが無くなったのでゆったり更新になります。

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