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新渡戸市の中心は、健太のアパートがある北区とは違い、様々な娯楽施設があった。
健太達は最初にハンバーガーを食べ、ボウリング場で遊び、カラオケをした。
それが全て中心街で遊ぶことが出来た。
中心街はその他にも、デパートや高層ビルが建ち、四車道の道路には車の渋滞が作られていた。
この中心街は、新渡戸市の経済の象徴のようだった。
「いやー、よく遊んだな」
「始めて同士だからどうかなって思ったけど、案外楽しくなるんだね」
そんな事を話しながら、健太たちは中心街を歩いていた。
初めは内気になっていた健太だったが、時間が経つに連れ、素で楽しむことが出来た。
はしゃぎながら中心街を歩いていた時、一人の女子が道で子猫が横たわっているのを見つけた。
「衰弱しているみたいだね」
「可哀想・・・」
子猫は明らかに痩せ細り、ピクリとも動かない。
皆、食べ物買いに行こうとか、病院に連れて行こうとか、様々な意見が飛び交っていたが、健太だけはこの状況に何も言わないでいた。
正確には言えなかった。
何故なら、子猫は絶対に助からないと確信していた。
この世界のモノには寿命がある。
人間や猫といった生物は勿論、椅子、机、大きなビル、この世に存在するあらゆるモノは、例外なくいずれは消滅する。
健太はそう言ったモノ、いわゆる寿命を司る《糸》を視ることができた。
その《糸》が視える様になったのは、あの『儀式事件』の後からだった。
(ゴメンな・・・。俺には助ける事はできないんだ・・・。だから今、楽にしてやるからな)
そう、心の中で子猫に語り出すと、相談している輪の中に入らず、健太は子猫の前に座り出す。
そして子猫の淡く、白く、うっすらと輝くその《糸》を改めて確認すると、とても細く、短かった。
「よくがんばったな・・・」
健太はボソリと子猫に語り出すと、《糸》が伸びる胸に手を当てた。
すると、その手が子猫の中に入り込む。
健太は子猫の中に根付く《糸》を掴むと、その《糸》を断った。
「とりあえず、病院に連れ・・・」
「もう遅いよ」
その提案を健太は言葉で遮った後、言いづらい言葉を発する。
「もう、死んでるよ・・・」
小さな命は、大きなビル群が映える都会の場所で息を引き取った。