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四季神  作者: 里兎
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分厚くなった資料

「いいかい?これが大ノ神様に頼まれた資料だよ?」

ふわふわの白い髪が揺れている。

教室の様な部屋。

机が4つ。

そこに4人が集められた。

「白雲様ー厚いー。ムリー。」

アキが片手で資料の1ページを不満げに捲った。

「くも様!アキと違ってハルは覚えられるよ!」

「アキ!ムリとか言わないんです!ハル!白雲様を略さないんです!」

2人にナツが鋭い目を向ける。

「………良いんだよ。ナツ。ありがとうね……フユ?何してるの?」

「?何って覚えているんです。」

分厚い資料を机の上に置きそれを枕代わりにしているその姿はどう見えても、覚えているようには見えなかった。

「…………えっ…でも君寝て…えっ?」

戸惑うことしか出来ない白雲とは、反対に真剣にフユはその顔を覗き込みながら。

「最近では睡眠勉強方というのが私の主流なんです!」


バコン!


すると突然。

後ろから丸まった資料がフユの頭に直撃し。

「~~~~~~~つぅぅーー!」

クリーンヒットしたのかそのまま机の上にうずくまりその犯人のナツをキツく睨み

「フユもいい加減にしてください!貴女は昨日夜遅く迄走っていたから眠いのでしょう!?」

「だからって普通女の子の頭そのぶっ厚いやつで殴る!?」

正に一触即発の雰囲気で2人は睨み合い

「あーほら?2人供落ち着いて――」

その場をなだめようにもそんな白雲を無視するように大きな声での言い合いが始まる。

やれやれと小さく息を吐いた瞬間扉が開いた。


ガチャ!


「あーうるさいね?この部屋は。」

その声に反応しその声の主の方向に目線を移すと、ニッコリと笑っている筈なのに笑っていない雨水がそこに立っていた。

ぞくり。

4人は背中が冷えたようなそんな感じかする。

「4人供。席に着いて貰って良いかな?」

「――でも雨水様!ナツが……!」

フユがそれに気にくわなかったのか反抗しようとすると

「………聞こえなかった?私は座れって言ったんだけど。」

蛇に睨まれた蛙とはこの事だろう。

それに対して何も言い返すことが出来ず、渋々といった風に席に座った。

「で?白雲は何処まで説明したの?」

名前を呼ばれた白雲は我に返ったのか慌てた様子で

「あ!全部だよ!だからもう大丈夫!悪かったね雨水」

と言い直ぐに4人の前の位置へと戻った。

「そ。兎に角。それを覚えずに地上に行ったら君達には直々に私がお仕置きしてあげるからね?」

ニンマリと笑ったその表情が3人供怖く写ったのか下を向く。

だけど1人そう思わなかったのかそのまま質問をした。

「うー様?お仕置きって何するの?」


『ばか!ハル!』


3人は小声で懸命にハルを静止した。

「……さぁ?どうしようかなぁ?……それよりハル?私の事は雨水様と呼びなさい?」


はぁいと笑って答えるハルは理解出来たのか分からず雨水はそのまま話しを切り替えた。

「………まぁいいや。白雲。ちょっと話しがあるから良いかな?」

「?あぁいいよ。丁度雨水が言いたいこと全て言ってくれたしね」

そう言って2人が部屋を後にしようとすると、雨水が何か思い出したように4人に振り返った。

「そうそう。覚える迄は、此処に鍵を掛けるからゆっくりとその資料読んでね?」


「「「「………えっ?」」」」


4人の声が揃う。

そして又ニンマリと笑いその言葉を残して部屋を後にした。


ガチャリ。


鍵の掛けた音がいやに大きく部屋中に響いた気がした。

ナツが諦めた様に息をつく。

「………はぁー。とにかく覚えるしか無いみたいですね」

「こんなことなら、昨日遅く迄走らなければ良かったー」

むぅっと口を尖らせながらユキはパラパラと資料を捲り始めた。

「どうやったらこんなに厚い資料が出来るんだよーオレ覚えられる気がしない……」

「ハルは覚えられるよ!」

ハルが興奮したように頬を朱色に染めてニッコリと笑うと、それを見た3人は疲れたように大きくため息をついたのだった。



「………それで?雨水どうしたの?」

天界の筈なのにその部屋は少し薄暗く。オレンジ色の光の石が綺麗に発光していた。

雨水の部屋。

几帳面なのか、部屋はゴミ1つ無い程に整理整頓がされている。

振り向かないまま。

白雲に問いかける。


「……遂に大神様が動かれたこの状況……白雲はどう思う?」


少しの間。

そして考えが纏まったのか口を開いた。

「……僕はこれで良いと思うよ?雨水は違うのかい?」

ゆらゆらと長く青い髪が揺れる。

彼は振り向かない。

「………勿論。私もこれで良いと思っている。過去は繰り返されるべきではないからね?」

それが雨水の本心なのか否かは表情の見えない白雲には分からなかった。

「…そう…だよね。」

拭いきれない不安から目をそらす様にしてオレンジ色の淡い光を見つめたのだった。



――地上での設定。

4人は幼なじみ。

バラバラだったのがそれぞれの親の都合上皆で一軒家に同居生活。

以上。

「……いや…なんというかざっくりとしすぎてない?」

アキが呆れた風に資料を見ていた。

「……これだけの設定でよくこんな分厚い資料が出来ましたね。」

「……後は地上での注意事項だけみたい。これならハルでも覚えられるわね?」

優しくフユがハルの頭を撫でました。

「ねっねっ!?皆の地上で使う名前何だった?私は桜井 春子だったよ!」

ハルの言葉に3人は各々の手元の資料を捲った。

「えっと紅葉 秋吉…かな?」

「葵 夏也ですね」

「あーっとあった!北國 冬美ね」

四人はそれらの名前を聞いて顔を見合わせるとフッと一斉に吹き出した。

「大神様らしいって言うかですね」

「あかば、あおい、きたぐに…皆かわいい名字だね!」

「名前の呼び方もそのままで良いみたいだしね」

「なんか名前とかちょっと違和感だけど、こういうのもありなのかもな」


そしてそれから、4人は楽しく話しつつも、一応注意次項に目を通しその日は遅く迄過ごしたのだった。


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