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四季神  作者: 里兎
1/2

まとまらない四季

こちらはゆるゆると載せさせて頂きます。

気持ちを楽にして楽しんでいただけると幸いです。

空高く雲の上。

そこには天上天下全てを統一する神がいた。

そしてその神の元に4人の未熟者達が呼び出される。


「―――ん。お前らを呼んだのは他でもない理由があっての事だ。」

白く長い髭に大きな杖。

豪華で細かな細工のされた椅子に座っていたのは天上大ノ神。

次の言葉を待つように4人は膝まづき大ノ神を見続ける。

「この度お前達の勉強と言うことで、地上に下ろすことが決まった。」

すると1人の未熟者が手を上げる。

「……御言葉ですがじじ様。私にはその必要性を感じらせません」

キリッと見上げたのは、眼鏡をかけ髪の毛が薄い栗色の短めで羽っ毛の男の子。

「……ナツ。これは決まった事なのだ」

大ノ神は息を1つ吐きながら首を振る。

「じじ様!そこは走れるの!?」

もう1人の未熟者が目を輝かせながら身を乗り出す。

それは、肌が陶器の様に白く、黒く長い美しい髪の女の子。

「……フユ。少し落ち着くのだぞ?」

疲れたようになだめようとすると

「じじ様ーオレ足痛いー崩しちゃだめ?」

そして、口を挟む未熟者がもう1人。

そこにいたのは前髪が少し長いのに後ろが短い濃い灰色の髪をした男の子。

「………アキ。我慢しなさい。こういう場では礼儀を重んじるのだ」

少し何かを諦めたように注意をすると

「じじ様ー!鼻水出てきたー」

そこには、好き勝手に話し始める最後の未熟者。

目がぱっちりとして、肩ぐらいで天然パーマのせいか、ふわふわした明るい麦色の髪の毛の女の子。

「………ハル。自分で拭きなさい……。」

自分のイラつきを抑えるように大ノ神は震える声で言うと

「そうです。ハル。今は大事な話しの途中。関係無い話しは後にして下さい。」

「ナツの言う通りよ?運動出来る所があるかないかは大事なんだから!」

「えー?フユだけじゃないのー?オレは運動苦手だから別にそれはいいや」

「アキ見て見て!じじ様寒くて震えてるよ!なんか持って来た方が良いのかな?」

「ハル!だからあれは寒くて震えてる訳じゃなくて怒って………えっ?怒って?」

ナツは自分の言葉に気付き恐る恐る大ノ神の方に顔を向けた。


「静まれぃ!!!」


今にも雷が落ちてきそうな勢いでピシャリと大声を出したのは、血管がブチキレそうな怒りを露にしている大ノ神。

「だからお前達はまだまだ未熟者なのだ!いいか?お前達はこれから四季神となる身。なのにお前達は四季の事を何もわかっとらん!」

おずおずと神の怒りに4人は反省するようにその場に膝まづき直す。

「先代の四季神達が消滅し、わしはお前達を創造して手塩にかけて育てて来たつもりだ。」

「えっ?先代の四季神がいないなら今は誰が季節を治めているの?」

小さく話しているようで、普通の声の大きさの言葉にナツは呆れ、ため息をついた。

「………ハル…いいですか?先代が消滅し私達がいない間は他の神が季節を治めているのです。一番初めに雨水様に教えて貰った事ですよ?」

「えっ?そもそも神って消えるの?」

アキが横入りをするようにナツに質問した。

「……アキあなたもですか?四季神は特別らしいですよ。地上の環境の変化で季節感も変化し四季神自体も交代する仕組みだとか。………というか2人共ちゃんと授業受けてましたか?」

ギラリと眼鏡を光らせてナツは2人を問い詰めた。

「で?じじ様。話しの続きは?」

ユキは3人に構わず神に問いかける。

「……わしの育て方が甘かったのか。。お前達は去ることながら季節感というものを全然分かっておらん。」

神は少し曇った表情のまま深いため息を付いた。


「夏という季節は暑く元気で熱血的なイメージ…だかナツ。お前は冷静沈着で隙がなく何事にも冷めきっておる」

「………はぁ…まぁ」


「冬という季節は儚く落ち着い気のある頭脳的なイメージ…だかフユ。お前は熱血的に運動を得意として何事にも一直線でおる」

「………そうかな?」


「秋という季節は寡黙でしっかりとした目線で分別をつける技能的なイメージ…だかアキ。お前は何をやっても失敗続き。陽気で笑顔の絶えない子…」

「じじ様はよく見てくれてんだな!」


「最後に春。人を温める懐の深い寛容的なイメージ…だかハル。お前は抜け過ぎて自分の事を満足にできぬし何よりも負けず嫌い……」

「じじ様ー私も誉めてよー」


大ノ神は又、大きく息を吐いてから4人を見直し1つ大きな咳払いをした。

「お前達にも分かって欲しいのだよ。本当の四季というものを。お前達の考え、性格で地上の四季は左右される。だから地上に行って四季を勉強しに行ってもらうというわけだ。言っておくがこれはもう決まった事。お前達の意見を聞く気は無い。よって変更は無しだ。」

大ノ神の厳しい目に4人は顔を見合わせて

「………絶対命令と言うことならば」

「まぁ私は体を動かせればいいや」

「りょうかーい!」

「じじ様に良いとこ見せるもんね!」

と賑やかに答えた。

「……お前達の地上で使う設定は白雲に渡しておく。後で必ず見るんだぞ?特にハルとアキ!分かっておるな?」

「はーーい!」

疑心暗鬼な3つの顔を他所に2人はにこにこと手を上げて返事をした。



―――――4人が出ていった広間は静かになる。

大ノ神は先程の4人の様子を思い出し思わずため息を漏らした。

そこにコツコツと1つ神の後ろから足音が鳴り響く。

「大ノ神様。お疲れ様でございます。」

そこには青く長い髪を結い上げたつり目の青年がニッコリと口元を上げていた。

「………あぁ雨水か。事は円滑にとはいかないが進み始めた。」

雨水はヒラリと大ノ神に御辞儀をするような仕草をみせた。

「左様のようで。親が子を離す瞬間と言うのでしょうか。とても面白く拝見させて頂きました。」

その言葉にため息は続く。

「お前も相変わらず。……だが先代の四季神の事は上手く伝えておる。」

「有り難き御言葉。……この雨水。彼らが道を踏み外さない様に心より願ってます故。その事をゆめゆめお忘れなきように。」

ニッコリとそれだけ告げると雨水はまた1つ神に御辞儀をし、くるりと背中を向け、靴を鳴らしながら広間を後にした。

「忘れてくれるな……か…」

杖を掴む筋の入ったしわしわの手に無意識に力が入る。

腰を掛けていた豪華な椅子からゆっくりと立ち上がる。

そして大ノ神も広間を後にしたのだった。

大きな扉が閉まる音。

響く誰もいない広間。

それはまるで大ノ神の心を反映しているようだった。



最後迄読んでくれてありがとうございました。

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