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1007  作者: くー。
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家族、とは。

 ひとしきり泣いたワタシたちは、その後警察官に連れられ警察署に行った。

 さすがにワタシたちもヘトヘトだったので、何時間か寝かせて貰い、色々話を聞かれることになったのは、その日のお昼を過ぎた頃だった。

 けれど、「自力であれこれ調べて海底都市まで行き、子供たちを助けてきた」なんて言ったって、信じて貰えないのは明白だった。

 海底都市への道は塞がってしまったし、彼も、もう居ない。

 だから、「気が付いたら四人揃って知らない場所にいた。そこにいた子供たちを連れて、隙を見て脱出したらあそこに着いた」。

 ワタシたちのあの冒険は、そう言うことで落ち着いた。

 ひとまず、と言うことでワタシたちが帰ること許されたのは、もう日が暮れてしまった頃。

 警察署の正面玄関を出たワタシは、そこにいた人を見て、目を見開いた。

 なんだかこの数時間で、色んな人に会って、その度に驚いている気がするが、それでもワタシは、驚くことしか出来なかった。

 「父さん……母さん……」

 「え!?」

 『え!?』

 隣にいたナオと双子も驚いて、ワタシと同じ方向を見た。

 そこには、走ってきたのかぜえぜえ肩で息をする男女。

 黒縁めがねの女性も、背広姿の男性も、ワタシは、良く知っていた。

 「郁斗!」

 「イク!」

 二人が、こちらに走ってくる。

 気が付いたらワタシも走り出していて、二人の胸に飛び込んだ。


 二人の所にも知らないアドレスからメールが来ていた。

 ここ数日、ワタシと連絡が取れなくなっていた事もあって、飛んで帰ってきたらしい。

 本当はもっと早く帰りたかったけれど、向こうで悪天候が続き、帰って来れなかったと言う二人の話を、ワタシはうんうん頷きながら聞いた。

 

 ナオと双子を両親に紹介して、両親をナオと双子に紹介して、ワタシたちは商店街へと向かった。

 両親には、信じて貰えようと貰えなかろうと本当のことを話すべきだと思ったし、それに、警察署に行く前に、終わったら一度商店街に寄れ、と、リョーサンとねねさんにキツく言われていたのだ。

 商店街の入り口に着くと、そこにねねさんが立っていた。

 「ねねさん!」

 声をかけると、ねねさんははっと顔を上げて、ワタシたちに走り寄ってきた。

 その顔が、やけに青白かった。

 『ねね、さん?』

 「……ユエさんが……ユエさんが……!」

 どこかうわ言のように、ワタシたちの腕を掴んでそれだけ繰り返すねねさんに、ワタシたちは思わず駆け出していた。


 

 ユエさんのお店の周りには、たくさんの人が集まっていて、大半の人は泣いていた。

 ワタシたちは並んで、仏間に敷かれた布団の前で正座をする。

 双子はもうぽろぽろ泣いていた。

 「お礼くらい言いたかったよな……」

 「だな……。あのお菓子で、ワタシたちは助かった訳だし」

 「老衰、か……」

 つい昨日まであんなに元気だったのに……。

 そんな思いばかりが頭を占める。

 ふと、俯いた顔を上げた時、正面にある仏壇が目に入った。

 その仏壇の前には男の人が写った写真と、

 「……本?」

 文庫本だ。二冊の文庫本が置かれていた。

 何となくそれが気になって、仏壇に近付く。

 「あれ? これ……」

 「……? 【ソーニャの海】じゃねえか」

 何だかずいぶん前のことのように思えるが、つい最近、図書館で借りたものと同じ本だ。

 一冊が結構分厚くて、上下巻の。

 作者は、

 「あっ!」

 「わっ!」

 突然、ナオが隣で声を上げた。泣いていた双子も驚いたのかこちらを見る。

 しかし、ナオはそんなことお構い無しで、自分の髪の毛をぐしゃぐしゃと掻きむしっていた。

 「あああああ! そうだ……そうだよ忘れてた!」

 「な、何を?」

 ワタシが訪ねると、ナオは文庫本を手に取った。

 「K・G……。ケイジって、あいつの、アイの新しい父親の名前だ!」

 「え!?」

 『ええ!?』

 「じゃあ、この人がケイジ、さん? で、彼の父親?」

 双子もぱたぱたとこちらにやって来て、にっと歯を見せて笑う男の人の写真を見る。

 「ってことはつまり……」

 『なんと……』

 ワタシたちは振り返って、布団に横たわり、うっすらと笑みを浮かべる一人の女性を見た。

 「ユエさんが、彼の母親……?」

 「ユエ……ユエ……」

 『U・A?』

 双子がそう言った瞬間、ワタシたちはピシッと固まった。

 父親がK・G、母親がU・A、それで、息子が……。

 『I』

 声を揃えて言ってから、ワタシたちは、

 「……ぷっ」

 『ふふふっ』

 「……くくっ。はははっ!」

 揃って笑い出した。

 「なるほど! これはいいなあ!」

 「家族だ。確かに家族だ!」

 『すごいすごーい!』

 ワタシたちは、ぽろぽろ涙を流しながら笑い続けた。

 今までのことを、ずーっと思い出す。

 楽しいこともあった、辛いこともあった、出会いもあって、別れもあって。

 それでも、どれもこれもがキラキラしていて。

 心がぽかぽかしてくる。

 それはきっと、双子も、ナオも、同じだと思う。


 そんなぽかぽかに身を任せて、ワタシたちが寝落ちした所で、一夏の大事件であり大冒険は、幕を閉じたんだ。

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