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1007  作者: くー。
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引っ張られる。

 『はろはろ〜?』

 「……………………」

 ピンク色の、ふわふわ風に揺れる柔らかい髪、見分けが付かないほどに似ている顔、くるりと丸い瞳。

 二人の少女がワタシを見ていた。

 ひらひらと目の前で手が振られる。

 しかし、ワタシは声を出すことが出来なかった。

 驚いたってこともあるのかもしれない、でも、ただ、単純に、

 「……ど……どい、て。手……」

 『うん?』

 ワタシを見ていた眼が少しだけ下にいく。

 ワタシは二人じゃないから分からないけれど、たぶんワタシの胸に置かれた自分たちの手が見えているはずだ。

 それが思い切り体重をかけられているのか、かなり重たい……!

 見事に肺が圧迫されてうまく息が出来ない。ちなみに背後は植木だ。痛い。

 ぱっとその手が離れた。

 「だあぁい!!」

 『うきゃあ!』

 それと同時に勢いよく起きあがる。

 今度は双子がころりと後ろに転がった。

 「ハァ……ハァ〜……」

 『いた〜い!』

 うぅ〜と双子はそろって顔をしかめていた。

 それが俗に言う「酸っぱいモノを食べたときの顔」なのが気になったけど。

 『痛いよ!』

 と思っていたら今度は非難がましくこっちを見てきた。

 「うるさいうるさい! こっちの方が痛くて死にそうだったわ!」

 『そんなことよりねぇねぇ何してたの? 何してたの?』

 「……………………」

 『ねぇねぇ! ねぇねぇ!』

 二人は声をそろえてワタシの周りをぴょこぴょこと跳ね回る。それがキレイに左右対称になっているのが癪に障った。

 場所を変えよう。

 ワタシは何も言わずに立ち上がり、買った物が入っている二つの紙袋を抱えて歩き出した。

 幸い食べ物はあるんだ。一晩安全に寝ることが出来る場所を探して、明日の朝、警察に行けば――。

 「……警察」

 その言葉に、ワタシは思わず立ち止まり眉をひそめた。

 『どうしたの〜?』

 「………………」

 いや、足音で何となく分かっていたけど。

 『どうしたの〜?』

 くるりと振り返って紙袋の一つをガサガサと漁った。そして、板を一枚取り出し、赤い包装紙と銀紙を取った。

 それを力任せに二つに割って、

 「そいっ!」

 『むきゅう!』

 出てきた茶色の板、もとい板チョコを二人の口に突っ込んだ。

 あぁ、食料が……。

 「いいか! ワタシはな、今命の危機に直面してるんだよ! お前らみたいなガキにかまってる暇は無いんだ! それやるからどっか行け!」

 『………………』

 半ば涙目になりながらまくし立てると、あまりの剣幕からか二人はチョコレートをくわえたまま固まる。

 通行人がちらちらとこちらを見ているが、無理矢理気にしないフリをして、踵を返し、その場を立ち去――ろうとした。

 『おいしーーーーー!!』

 「!?」

 思わず振り返ると、二人は一心不乱といった感じにチョコレートを頬張っていた。

 『おいしー!』

 「お、おう……」

 キラキラした目で見られて思わず後ずさる。

 『おいしかったからお礼するー!!』

 指は懇切丁寧に舐めて、でも口の周りはチョコだらけの二人はワタシの腕の中から紙袋を一つずつかっさらった。

 細いのに意外と力持ちだな。

 『こっちこっち〜!』

 「へ? うわぁ!」

 ぐいっと腕を引っ張られる。

 「ちょちょっ……まっ……」

 意外と足も速かった二人に付いて行こうと急いで足を回し、今一番言いたいことを言おうと口を開く。

――ストップ!

 「あんたたち名前は!?」

 違う! 間違えた!どうやらワタシの中には【一番言いたいこと】がいくつもあったようだ。矛盾してる。

 慌てて言い直そうとしたときには、答えが返ってきてしまった。

 『調音○★!』

 「はい!?」

 いつも通り二人とも同時に喋るのと走って声が揺れるせいで、最後何を言ったのか聞き取れなかった。

 「………………」

 どうしたものかと考える。

 「二人同時……二人同時……あっ。ねえ! こっちの名前は?」

 そう言って、ワタシは引っ張られている左腕を上げた。

 そっちは前髪が一房右に流れていた。

 『調音葉(ツズキオトハ)!』

 「じゃあこっちの名前は?」

 今度は右腕を引っ張ってる方。

 こっちは前髪が左に流れている。

 『調音夜(ツズキオトヤ)!』

 よし、成功。

 心の中でガッツポーズをする。と、

 『名前はー!?』

 「へ?」

 顔を上げると、双子がちらちらとこちらに期待の眼差しを向けていた。

 こ、これは、答えなきゃいけないパターンか。

 「か……」

 『か〜?』

 「か、川上郁斗(カワカミイクト)!!」

 『イクト〜!』

 ぴょこーんと二人がうれしそうに跳ねた。

 ワタシも、少しだけ跳んだ。

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