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俺の腕、売ります。  作者: ももクリさんねんかきハチネン
第一章 俺の腕、売ります。
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第6話「戦い明け暮れて」

 前評判オッズを裏切って


 デビュー戦を勝利で飾った大地。


 瑞穂へ凱旋し、


 騎士団の仲間?たちの手厚い歓迎を期待して


 降り立った彼を待っていたのは……



「遅い、さっさと行くぞ」


 どちらさん?


 気圧調整室、検疫ブースをようやく抜けた俺を、小太りで背の高い総髪の男が待っていた。


 いや、これだけでも属性山盛りのうえに、こいつ紺色の外套で全身を被ってやがる。

 悪目立ちとかで済むものじゃない。

 道行く通行人のことごとくがこいつをいない者として通り過ぎていくじゃないか。


「つまらんこと言ってないで早く乗れ、山猿」


 ああ、さっき勝っちゃった相手か。


 白石さんは、この黒崎をひよこリーグじゃ

 頭二つくらい抜けてるとか言ってたような。

 だまし討ちみたいなもんだったけど。


 その、山猿っていうの、まだ止めないの?

 いちおう、俺、元レアメタルハンターの親父がいるんだけど?

 俺は気にしてないけど、俺の住んでる貧乏長屋とかにも、

 何か理由をつけて押しかけられたら嫌だなあ。


 ……乗れって言った?


 あんなに煽った挙句に勝ちをさらった俺を相手にして、

 同乗していけとかずいぶん優しくない?

 気持ちは嬉しいけど、今から祝勝会なのよね。


「知っている。俺が推薦した寿司屋だ」


 ん?  ひょっとして、送ってくれる?

 いやいや、祝勝会についてくる気か、こいつ?


「誘ったのはお前だ」


 試合前と試合中の記憶を掘り返す。


 ――寿司だ。おい、早く寿司屋に行くぞ


 ――や・ま・ざ・るーっ


 ――あんたのお陰で食う寿司だ。


 ――匂いぐらいなら嗅がせてやるよ。


 ―― 一緒に来い


 ……言い訳できないほど、バッチリ誘ってるな。

 しかも煽りレベルで。

 でも、普通来ないよね?

 超下町の老人会でやってるような賭けごとじゃあるまいし、奢らないよ?


「心配するな。

 デビュー戦を勝っただけのお前にたかる気はない。

 奢るつもりもないがな」


 黒崎は俺の返事を聞かずに横に止めてあった車に乗り込んだ


「行く場所は大衆寿司の『岸えもん』。

 お前の財布でも安心で、しかもうまい」

 寿司と聞いて俺は慌ただしく助手席に飛び込んだ。





 なんでわざわざ隣に座るかね。


「空いていたボックス席の数で行くと

 2人はカウンターの必要があったのでな。

 俺にあっちの赤銅騎士団のメンツと膝を突き合せろと?」


 俺、今日の殊勲賞だよ?


「この『岸えもん』に来たら、この貝三昧を頼まないとな。

 4人前、と。

 山猿、お前も2人前ずつくらい食うだろ」


 人の話も聞かずに、勝手に俺の分まで注文するんじゃないよ。


「食わんのか?

 まあ、大好物だから4人前独り占めで一向に構わんが」


 誰がいらないって言ったよ。

 寿司屋なんかまず来れねえから、勝手がわかんねえ。


「山猿が。素直に教えてくれと言え。

 出汁巻きたまご。

 次はこいつがいい」


 何か順番でもあるの?


「ない。

 あるという輩もいるが、好きなものを好きな時に食う。

 それに勝る順番はない」


 それなら楽でいいや。


「今日は俺に合わせろ。事故は少ないはずだ」


 テレビからは各地の騎士戦の結果が流れてくる。

 ひよこリーグは欄外とかで、だから俺の勝利は映されない。

 俺が騎士戦のことをよく知らないと聞いて、黒崎健吾は驚いた風だった。

 だが、特に馬鹿にもせず、色々教えてくれた。

 存外、良いやつなのかしらん。





 星環騎士戦の戦い方は1対1を基本とする。

 これに勝つことで勝利ポイントを稼いでいく。


 対戦は基本的に騎士運により割り当てで、中途半端な総当たり。

 トップリーグでもなければ、まずリーグ全員と当たることはない。

 5年間という期間において、累積ポイントを競うものである。


 基本的に宇宙で戦うことと戦争の否定から始まっているので、

 遵守事項や禁止事項が多いほかに美学による縛りがある。


 禁止事項の例として、

 星環騎士から恒常的に分離することで威力を発揮する兵器(砲銃・ミサイル・爆弾等の遠距離禁止)での意図的な攻撃は即失格。

 レーザーやビーム等の原理上は人が反応できない速度の兵器は応用も禁止(結果、マイクロウェーブや中性子兵器の使用を禁じる)。

 戦場指定のエリア外への移動は2回目で失格となる。


 星環騎士戦のルールや美学、高機動戦が主であることから、星環騎士には槍使いか双剣が多い。


 星環騎士のチームは公設私設玉石混合、各星環群にチームがいくつかあることが通常である。


 星環群によって抱えるチームの質や数はまちまちである。



 大戦の苦い経験を踏まえて、

 すべての星環群の安寧のために連合政府たる大統領府が誕生した。

 しかし、強い権限を持つ大統領の選出が再び争いの種とならぬように、

 ここに明快な完全決着をもって、大統領を選ぶ方法が定められた。

 それまで、一部の者の遊戯として嗜まれていた宇宙船による決闘、

 これによる戦績を大統領選に替えるとしたものである。

 いわゆる星環騎士戦の始まりである。


 星環暦160年

 今からおよそ200年近く前の話である。


 星環騎士艇は、人型を模した宇宙戦艇である。


 戦争代理人であることを形であらわす意味もあるが、星環騎士艇及び星環騎士戦は、戦争の軍事技術に寄与してはならない。


 そのために、星環騎士は兵器としてはあってはならない人型を取らなければならなかった。

 今後技術が発展し、より優秀な星環騎士艇が開発されても、星環騎士艇による戦術が進歩しようとも、戦争を目的として特化していく兵器やその運用に寄与のしようがないからである。


 星環騎士戦には、すべての星環群が、大統領選出権、すなわち政治的支配権、経済的支配権を争うための戦争の代替イベントに参加する。

 大統領選出権の獲得については、一回きりの星環騎士戦ではなく、5年で区切られた期間において最も勝利ポイントの最も多い星環騎士が属する星環群が大統領を選出できる。

 基本的にその星環群のトップが就く――





 番組の終わりにいつものプロモではなく、新王者のものが流れ始めた。


 ああ、王者変わったんだっけ?


《よい子の皆さん、

 騎士の真似をして廃棄された星環へ行くのは絶対にやめてください。

 とても危険な場所です。

 僕との約束ですよ。

 画面の前で応援してくださいね……》


 読まされてる感ひでえな。

 前の炎城志朗でいいじゃん。


「炎城も最初はあんなもんだった」


 台本読んだこともねえくせに。


 取っ組み合いのけんかを始めた大地と黒崎は、

 赤銅騎士団の手によって、平和裏に店外に放り出された。





 黒崎「お前のせいで出禁だわ」

 大地「俺のセリフだよ。

    ……まだ大して食ってねえのに」

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