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人気者の幼馴染は私を離してくれない〜なんでわたし以外を見るの? わたしのものなのに〜  作者: ねねねねこ


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7/10

第7話 幼馴染とお泊まり会。

「白石さん、緒方さん。まだ残っていたんですか? もう、こんな時間ですよ。帰りなさい」

「ごめんなさい。先生。今、帰ります!」

「ええ。早くしないと閉めるからね」

「はい」


え、もう6時なんだ。時間経つの早いな〜


「ゆき。もう帰ろ。一緒に」

「うん」


夕方の電車。

がたん、ごとん。揺れるたびに、座席の端で肩が触れる。車内は静かで、駅に着くたびにだんだん乗客が減っていく。いつの間にか、私とひなた、二人だけになってた。私たちの駅、終点だしね。


「ねえ、ゆき」

「ん?」

「明日、ゆきの家行ってもいい?」

「ごめん。明日はお母さんがいるから」

「……そっか」

ひなたの声が、少し沈んだ。

「じゃあ、明日はゆきに会えないんだ。……ちょっと寂しいな」


私が笑って「1日だけじゃん」と言っても、ひなたは膝の上で手をぎゅっと握っていた。寂しそう。


電車が私たちの最寄り駅に着いても、ひなたは少しの間、動かなかった。


♢♢♢


改札を抜けると、ひなたが小さく言った。

「ね、ちょっと寄ってかない?」

「え、どこに?」

「私の家。お茶でも飲んでいこう?」

「でも、もう6時すぎてるんだよ? くらいよ」

「すぐ帰すから。……ほんの少しだけでいいから」


切なそうに、悲しそうにひなたが言うから、断れなかった。


ひなたの家の玄関をくぐると、廊下から漂うほのかな甘い香り――たぶん、クッキーの匂い。


「ちょっと座ってて。今、紅茶いれるから」

「う、うん」


カップを手渡されると、ひなたがじぃっと私のほうを見てきて言った。


「ねえ、ゆき」

「なに?」

「明日、会えないの、やっぱり寂しい」

「……そんなに?」

「だって、今日だって本当は帰したくないもん」


笑ってるのに、ひなたの目が少し潤んでいる。その顔を見ると、胸がきゅってなる。いつもは頼れる感じなのに、今はなんか、ひなたが小さくなったみたい。


「わかった。じゃあ、今日はもう少し一緒にいよう」

「本当に?」

「うん。でも、少しだけだよ?」

「……ううん、今日は泊まっていきなよ」

「えっ!?」

「ゆきの歯ブラシも新しいの買ってあるし、パジャマもあるし」

「なんでそんなの……」

「だって、いつか泊まってくれると思ってたから」


その言葉に、何も言えなくなった。

準備が最初から整ってたことに、少しだけざわつく。


でも、ひなたの嬉しそうな笑顔を見ると、断りたいっていう気持ちもいつの間にかなくなっていた。


♢♢♢


ひなたの部屋。

「お風呂、順番どうする?」

「ゆき先に入ってきなよ。それとも、一緒に入る? 大歓迎だけど」

「え、一人でいいよ」

「そんなこと言わないで」


結局二人で入ることになった。二人でチャポチャポ。めちゃくちゃ久しぶりだな〜。ひなたの家に来るのも久しぶりだし、一緒にお風呂に入るのだって、泊まるのだって。


「気持ちぃ〜」


そう私が笑うと、ひなたも笑った。



「ドライヤー、私がかけてあげる」

「え、いいよ、自分で」

「いいの。……こうしてる時間が好きだから」


髪を乾かされながら、ひなたの指先がときどき首筋に触れて、くすぐったくて、落ち着かなかったけど、嫌じゃなかった。


「ねえ、ゆき」

「なに?」

「明日、私のこと忘れないでね?」

「え?」

「ゆきがお母さんと過ごしてるときも、少しでいいから私のこと思い出して」

「もちろんだよ。そんなの、忘れるわけないじゃん」

「……よかった」


ひなたの声が少し震えていた。そのまま、布団を並べて横になる。すると、ひなたの呼吸がすぐ隣で聞こえた。だんだんと気配が近くなってきて、


「ゆき」

「ん?」

「今日は、ずっと、こうしてたい」

そう言ってひなたに抱きしめられた。

「……うん。いいよ」

「ありがと。ゆき」


そっと伸びた指が、私の手を探し当てる。指先が触れ、絡まる。そのぬくもりが、まるで離れることを拒むみたいに強くなっていく。


ひなたの囁きが、耳元で聞こえた。


「ゆきは、私の一番大切な人なんだから。私にずっと頼って生きて。私を必要として」


切なくってとても悲しそうに震えた声で。


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