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人気者の幼馴染は私を離してくれない〜なんでわたし以外を見るの? わたしのものなのに〜  作者: ねねねねこ


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6/10

第6話 私だって自分でできるもん。たぶん。

放課後の教室。

みんながわいわい話しながら帰っていく中、私は机の上にノートを広げた。


――今日は、ひなたに頼らずにやってみよう。


昨日の夜、ひなたに甘えてばかりの自分を思い出して、ダメだなって思ったの。さっきもひなたにやってもらってばっかだったし。だから今日は、一人で頑張ってみたかったの。


「ゆき、帰ろ」

教室の後ろから、ひなたの声。けど、だめ。


「ごめん、今日はちょっと残って勉強するね」

「え、ゆきが? 珍しい」

「ひどいなぁ」

「だって本当のことだもん」

ひなたは笑って、私の机の前に立つ。ちょっと心配そうな顔してるし。そんなに珍しいかな?


「わかった。じゃあ、帰りは気をつけてね。本当にね」

「うん、ありがと」


そのまま、ひなたは教室を出ていった――やっぱり、少し寂しいな〜。でも、今日は頑張るの。ひとりで。


♢♢♢


カリカリ、とシャーペンの音が響く。だけど、途中で止まる。……あれ? わかんない。ここって、どうやるんだっけ。


はぁ〜あ。ひなたなら「ここはね、こうやるんだよ?」ってすぐ教えてくれるのに。いや、ダメダメ。今日はひなたには頼らずに一人でやるって決めたんだから!


……でもやっぱ、わかんないな〜。


教科書を見ても、頭に入ってこない。ふと、机の上のスマホに目がいった。


「やっぱりひなたに聞いちゃおうかな……」そう思った瞬間――


ガラッ。


「ゆき」

ひなたがドアの向こうに立ってた。え、なんでいるの? さっき「じゃあね」って言って帰ってなかったっけ?


「ひ、ひなた!? どうしているの?!」

「ゆきが心配で、ね」

「え? 私のために?」

「うん。ゆきは、ひとりだと頑張りすぎちゃうからね」

そう言って、ひなたは手に持った袋を机の上に置いた。

「ほら、クッキー持ってきてあげたよ。糖分補給」

「……わざわざ持ってきてくれたの?」

「もちろん。だって、ゆきが頑張るときは、そばにいたいもん」


ひなたは当たり前みたいに隣に座って、ノートを覗き込む。

「ここね、計算の途中式が抜けてるの。ほら、こうやって――」

すらすらと、ひなたの手が動く。

文字が整って並ぶたび、私のページがひなたの字で埋まっていく。


「うん。えらいえらい。もう、頑張ったじゃん。終わろうよぉ〜」

「大丈夫。もう少しやってみるもん」

でも、やっぱり間違う。

「惜しいね、こう。こうすれば一発」

ひなたが笑って、私の手の上に自分の手を重ねる。

「こうやって、書くの」

「……うん」

ひなた、すごい。私ができないところをするするといてくよ……。


「ゆき、がんばっててえらいね」

「ほとんど、ひなたがやっちゃったもん……」

「そんなことないよ。ゆき、めちゃくちゃ頑張ってた。もう、やんなくっていいくらいだよ〜」

その声が、あたたかくて、でもどこか怖い。


気づけば、半分以上の問題をひなたが解いていた。

「やっぱ、私、何にもできてないじゃん」

「いいの。私がいるでしょ」

ひなたは微笑んで、私の髪を軽く撫でる。その仕草が、優しいのに息が詰まりそう。


「ゆきは、一人で頑張らなくていいの。私がいるんだから」

「でも、少しくらいは、自分でできるようにならないといけないもん」

「ダメ。私の存在意義がなくなっちゃうじゃん」

ひなたは冗談っぽく言った。

「そんなことないよ。ひなたに頼ってばっかだもん」

「もっと頼っていいんだよ? 私が隣にいれば、それでいいの」

ひなたの声が柔らかくて、逃げ場がない。


♢♢♢


気づけば、空はすっかり夜。

教室の明かりの下で、私のノートはほとんどひなたの字で埋まっていた。

「ねえ、ひなた。これ、私の勉強っていうより……」

「二人の勉強でしょ?」

「……うん」

「ね、ゆき。ずっとこうやって一緒にいようね」

「でも、私もちゃんと一人で――」

「ゆきは、私がいないと何にもできないんでしょ?」

「……」

「だから、ずっと一緒にいようね?」


ひなたの笑顔がふんわり近づいて、私の肩に軽く頭を寄せる。

「ゆきは、私の一番大切な人なんだから」


胸の奥がじんわりあたたかくなる。それなのに、少しだけ冷たい感覚が背中を這う。


“ひなたがいないと、私は何にもできない”


そんな言葉が、静かに心に刻まれていった。


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