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人気者の幼馴染は私を離してくれない〜なんでわたし以外を見るの? わたしのものなのに〜  作者: ねねねねこ


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4/10

第4話 幼馴染は二人きりの時は私にすごく甘い。

「ただいま」

「今日もゆきのお母さん、遅くなるの?」

「うん」

「じゃあ、遅くまでいていいね」


ひなたが言うと、なんだか当たり前みたいに聞こえる。お母さんの帰りが遅い日は、自然とひなたが一緒にいてくれる。まあ、お母さんがいる日も結構いる気がするけど、やっぱりひなたがいると安心する。最初のうちは「いいのかな」って思ってたけど、もう慣れちゃった。


玄関に並んで靴を脱いでると、ひなたがふわっと笑う。


「ゆきの家の匂い、落ち着く〜」

「めっちゃリラックスしてるね〜」

「だって、ほとんど私の家みたいなもんでしょ?」

「えぇ、私の家なのに〜」


口ではそう言ってるけど、ちょっと嬉しい。私の家の匂いを落ち着くって言ってくれるの、なんか照れるな。


「ひなた。何飲みたい?」

「大丈夫だよ。私がやるから、ゆきは座ってて」

「え、でもここ、私の家だし」

「だーめ。ゆきは今日も学校頑張ったんだから、休憩してて」

「えぇ〜」


ひなたは、そう言って当然のようにキッチンへ向かう。なんだか、この家にひなたがいるのが普通みたいな気がしてきた。


「はい、紅茶できたよ。ミルクも砂糖も入れといた」

「ありがと」

「ゆき、今日疲れてるでしょ。顔に書いてあるもん」

「そんなに?」

「うん。……ほら、目の下、ちょっと赤い」


そう言って、ひなたがそっと指先で私の頬をなぞった。

くすぐったくて、でも妙に落ち着く。


「だ、だいじょうぶだよ」

「まったく。ゆきってば、すぐ無理するんだから」

「だって、いろいろあるもん」

「いろいろって、宿題とか?」

「……うん、そんな感じ」

「じゃあ、今は忘れよ。はい、リラックリラックス!」


ひなたが、テレビのリモコンを取ってニュースを消す。

代わりに流れるのは、ふんわりしたBGMだけ。


「ほら、こういう時間、大事でしょ?」

「ひなたって、すっごくやさしいね」

「ゆきだけだよ」

「そんなことないよ。すっごく優しい」

「そんなことないから」


笑い合うと、いつもの空気に戻る。でもその“いつもの空気”って、全部ひなたが作ってくれてる気がする。私はただ座ってるだけ。お茶も、お菓子も、ひなたが用意してくれる。


「ゆき、これ食べる?」

「え、なにそれ」

「クッキー。昨日焼いたの」

「ひなた、いつの間にそんなの作ってるの!?」

「ゆきのために、決まってるじゃん」

「……え」嬉しい。


「だって、ゆき、最近甘いの控えてるって言ってたでしょ? でも我慢しすぎると逆にストレスになるから、甘さ控えめにしたの」

「すご〜」

「食べてみて」

「うん……おいしい!」

「でしょ? よかった〜。失敗してたらどうしようかと思った」


ひなたの笑顔が、ちょっとだけ照れてて可愛い。でも、私のために焼いたって言葉が、胸の中で何度も響く。嬉しい。甘えてばっかりだな〜


「ひなたって、ほんと優しいよね」

「そうかな?」

「うん。なんでもしてくれるし」

「してあげたいんだもん」

「でも、ひなたに頼ってばっかりで、ダメだなって思うの」

「そんなこと思わなくていいよ」

「でも……」

「いいの。私、ゆきに頼られてるの嬉しいんだもん」


その言い方が、あまりにもまっすぐで、少しだけ息が詰まった。頼られるのが嬉しい――それは、優しすぎて、だめ。


「ねえ、ひなた。学校でもこんな感じだよね?」

「え? どんな?」

「みんなにも、こうやって優しいの」

「んー……どうだろ。たぶん違う」

「違う?」

「他の子には、ちゃんとしてって言うだけかな」

「そっか」

「でも、ゆきには言わないでしょ?」

「うん、言われたことない」

「ゆきのこと、怒れないもん」

「なんで?」

「だって、ゆきは頑張ってるもん」


ひなたは少しだけ身を乗り出して、

私の髪に手を伸ばして、軽く整えるように触れた。


「ね、ゆき。ちゃんと食べて、ちゃんと寝てる?」

「う、うん。たぶん」

「たぶんじゃだめだよ」

「ひなたぁ〜」

「も〜、ゆきってばほんと可愛い」


そう言いながら、ひなたが笑う。優しいのに、どこかで“甘すぎる”と思ってしまうのは、私だけなのかな。


「ひなたってさ、将来絶対いいお嫁さんになるよ」

「え〜、じゃあ、ゆきがもらってくれる?」

「なっ……!?」

「冗談だよ〜」

「もう!」

「でも、ほんとに。ゆきのお世話してると、幸せなんだ」

「それは……ありがたいけど、私、どんどんダメになっていく気がする」

「いいじゃん、ダメなままで。私がなんとかするから」

「そんな無茶な」

「無茶じゃないよ。ゆきが笑ってくれたら、それでいいもん」


ひなたの言葉は、まるで毛布みたいにあたたかい。優しさが身体の奥まで染みていく。けど、心のどこかで、少しだけ怖くなる――ひなたって、本気でそう思ってるんだ。


「ねえ、ひなた」

「ん?」

「私、ほんとにこれでいいのかな」

「なにが?」

「なんでもひなたにやってもらってるし……」

「いいの。ゆきは《《私のゆき》》なんだから」


一瞬、息が止まった。でも、ひなたはすぐにいつもの笑顔で続ける。

「って言っても、幼馴染の意味でね!」

「も〜、びっくりするじゃん」

「ゆきのびっくりした顔、可愛い」


軽く笑いながら、ひなたが私の頬をつつく。その指先が優しくて、少し冷たくて、触れられるたびに、なんか安心してしまう。


「ひなたって、ほんとに……」

「なに?」

「ずるい」

「え?」

「こんなに優しくされたら、もう一人で何もできなくなるじゃん」

「それでいいよ」

「だめだよ〜」

「じゃあ、できるようになるまで、私が隣にいればいい」


私、ほんとにひなたに甘えてばっかり。でも、ひなたが笑ってるなら、それでいい気もする。

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