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人気者の幼馴染は私を離してくれない〜なんでわたし以外を見るの? わたしのものなのに〜  作者: ねねねねこ


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3/10

第3話 幼馴染と一緒に帰る帰り道。ただし、幼馴染って言うことは内緒。 

放課後のチャイムが鳴って、教室のざわめきが一気に明るくなる。


「ゆき、帰ろ!」


教室のドアのところで、ひなたが手を振っていた。相変わらず、目を引く笑顔。クラスのあちこちから


「ひなた〜バイバイ!」

「またねー!」


なんて声が飛んでくる。


「うん、わかった。今準備するね〜」


私は教科書をしまいながら、ミサトちゃんに声をかけた。


「ミサトちゃん、帰ろっか」

「うん! あ、白石さんたちも一緒でしょ?」

「うん、そうそう。5人でね〜」


ひなたと、ひなたの友達の2人。それに、私とミサトちゃん。一緒に帰る時のメンバーが揃うと、みんなで歩き出す。


改札を抜けて、電車に乗り込む。放課後の車内は制服の子たちでいっぱい。私たちは2、3に分かれて座った。


「ねえねえ、次の文化祭、クラスでカフェやるんだって!」

「え〜、本当? それ絶対楽しいじゃん!」

「ひなたちゃん、絶対接客似合う〜!」

「わかる〜! エプロン似合いそう!」


「ちょ、ちょっと〜、そんなにハードル上げないでよ〜!」


ひなたは照れたように笑いながら、頬に手を当てた。それを見て、また笑いが広がる。彼女が中心にいると、世界が明るくなる。本当に、太陽みたいな人だ。


私はその隣で、ミサトちゃんと小声で話していた。


「ね、ゆきちゃん、白石さんってほんとすごいね!」

「うん……まあ、そうかも」

「成績いいし、可愛いし、性格もいいし。羨ましいな〜。あんな幼馴染ほしい!」


――え?


心臓が跳ねた。なんで、知ってるの? いや、たぶん、ただの言葉のあや。深呼吸して笑って返す。


「そ、そうだね。ほんと、すごいよね」


「そうそう! あのさー、ひなたちゃんってさ、告白とかされたことあるの?」

「えぇ〜!? いきなり何それ〜」

「絶対あるでしょ〜、だって人気だもん!」

「ううん、ないない。そんなの……」


ひなたはちょっと私の方を見ながら首を振った。


「えー、嘘だ〜」

「絶対モテるって!」

「……もう、そんなこと、ないよ」


冗談めかして言いながらも、ひなたの声は少しだけ低かった。


車内は笑い声で満たされていたけれど、ちょっと心が苦しくなってきた。


♢♢♢


次の駅で、ひなたの友達が降りた。


「じゃあね〜! また明日〜!」

「バイバイ!」


そのあと、ミサトちゃんも立ち上がる。


「私もここで降りる〜。ゆきちゃん、また明日ね!」

「うん、またね」


ドアが閉まる。電車がゆっくり動き出す。すると、ひなたが隣にやってきて、さっきまでミサトちゃんがいた席に当然のように座った。


「……ねえ、ゆき」


ひなたが、少し低い声で言った。


「ん?」

「今日も楽しそうだったね。ミサトちゃん、だっけ?」

「うん。楽しかったよ」

「そっか。よかったね」


ひなたがこちらを見た。その瞳が、どこか子供みたいに真っ直ぐで、少し怖い。


「でも、なんか、寂しかったんだ」

「ご、ごめん。そんなつもりじゃ……」

「ううん。ゆきが悪いんじゃないの。私が、わがままなの」


ひなたは笑った。でも、その笑顔はさっきまでの“ひなた”の笑顔じゃなかった。どこか、ひびが入ったガラスみたいに危うい。


「ねえ、ゆき」

「な、なに?」

「今日さ、ミサトちゃんとすごく楽しそうに話してたよね」

「え、うん……普通に、テストの話とか」

「そっか。普通、ね」


ひなたの指が、私のスカートの裾をつまんで、そっと引いた。

距離が少しだけ近づく。


「でもね、私、見てたんだよ。ゆきが誰と笑ってるのか」

「……え?」

「教室でも、電車でも。ずっと見てた」


その声が、少しだけ震えていた。


「え」

「怖い? ……ごめん。でも、ゆきが誰を見てるのか、気になるの。だって、幼馴染だし。大切だから」


ひなたはそう言って、私の手を取った。指先が冷たくて、細い。握られた瞬間、心臓が跳ねた。


「ねえ、ゆき。もしさ、私が誰かと話してたら……嫉妬してくれる?」


「そ、そんなこと……」

「してくれないの?」


ひなたの声が、かすかに甘えていた。

その目は、何かを確かめるように私を見つめている。


「……わかんないよ」

「そっか。私はね、しちゃうの。ゆきが誰かと仲良くしてるだけで」


電車がカーブを曲がる。揺れに合わせて、彼女の肩が私の肩に触れた。離そうとしても、ひなたは手を離さなかった。


「大丈夫。ゆきは、ちゃんと私が見てるから」


「ひなた……」

「だからね、もう少し、私のことも見てて」


微笑んでそう言ったひなたの顔は、あまりにも綺麗で――でも、その笑顔に、私は息を詰めた。


まるで、笑顔の鎖みたいに。優しくて、温かいのに、動けなくなる。


その日、私は初めて気づいた。――ひなたの“優しさ”は、少しだけ、重い。


♢♢♢


次の駅のアナウンスが流れる。

ひなたが、私の手を離した。

「……じゃ、そろそろ降りよっか」

「う、うん」


外の風が冷たいのか、ひなたの頬は少し赤い。

でも、その笑顔は、やっぱり完璧だった。


「今日も家、行ってもいーい?」

「うん……」


断る選択肢なんて、最初からなかった。


ひなたは微笑む。

「えへへ、約束ね」


その笑顔が、ずっと私の心に絡みついて……。

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