第八話「魔王浸食―突入」
―目が、目が追い付かない。
俺は飛び込んだ先から魔物たちの背を足場に最速で核へ目指す。飛び込んでまで俺を喰い殺そうとする魔物や通り道にいるデカい魔物はとりあえず斬る。
―斬る、斬る、斬る!俺の前に来た奴、全部!
視界に入った瞬間、脳を介さず脊髄だけで俺の腕が動く。だが一切、止まらない足。やっと思いで一瞬、見上げるとそこには核がずっしり構えていた。
―遠くからも見えてたが…。核…。デカすぎだろ…。
そう思っているとユズキの言葉が甦る。ノイズもなく鮮明に覚えている。これが走馬灯ならとんだ仕事人だ。
「核の破壊は卵を下から支える一本の太い柱。それは人一人分の太さの棒が絡み合いながら支えています。そこに球体の輝いているものがあるのですが、それを破壊してください。」
「――――――――――。」
「そうですね、その武器で十分壊せるでしょう。ただ、その柱の中心まで入り込んでいくしかありません。」
「――――。」
「ご武運を。」
基地で話していたものだ。俺の言葉は覚えていない。ただ鮮明に焼き付くユズキの声。
「やるしかないな。」
核を近くで見ると分かる。卵は半透明で中には巨大な蛇がいた。そしてその卵を支える柱の棒が一本一本脈打っているのだ。
「気持ち悪いがな!」
トップスピードでその柱に飛び込もうした時だった。
ポチャ
俺の頭に生ぬるく、ベトベトした液体が落ちてきた。
―なんだ?
上に目をやると卵が―
「割れてる?!」
後ろに目をやると本隊からはとても離れている。逃げ場は大量の魔物しかいない。するとまたユズキの声が甦る。
「もし、卵が割れた場合―逃げてください。最大速度で。」
心配とかの類ではない。恐れに塗れた声だった。
―逃げてください?バカバカしい。ココまで来たんだ!
足を前に運ぶ―
「運べ……ない?」
体が言うことを聞かない。震えもせず固まってしまっている。俺は腕で精いっぱい足を叩くが、全くビクともしない。
―クソ!
俺は魔物を無視して脇にある森へ飛び込む。どれだけ噛みつかれても森へ向かい身を守った。忠誠の証が証明できなかったのに。
―どうせレヴィアに殺される。
すると天を穿つような地面を叩きつける轟音が鳴り、ひどく揺れた。来た方を見れば蛇がノロノロと地面を這いだしたのだ。
「全く気持ち悪いな。」
体を覆う魔王浸食の肉塊。魔物を押しつぶしながら進む。肉塊には魔物の血液で塗れた。
―コイツをどうしろってか。
だが、遠くで魔力を感じる。きっと本隊の奴らだ。他人がいると思ったせいか落ち着くことができた。
―倒すしかねぇのか…。
きっと今、輝くものを破壊しても意味がないのではないだろうか…。もしくは輝いていないのか。その蛇は自分の卵から遠ざかっていく。もし大事なものがあるなら守るはずだ。それがないのだから…。
―こんなに難しいのか。
足は動くようになったが、未だ震えは止まらない。
―これは武者震いだ。斬りたくて疼いている。
そう言い聞かせる―言い聞かせるしかなかった。ハルバードを両手で構え、ガントレットを調整する。そして森を出て戦地へ行った。
―やらなきゃ死ぬんだよ!
俺は蛇を後ろから奇襲した。何度も同じところを刺し、返り血で自分の顔が分からなくなるぐらいになるまでしがみつく。だが、当然痛みに反応して蛇の尾は大きく波打ち、地面に叩きつける。
―死なねぇ、お前を殺す!
今の衝動でハルバードを離し、どこかへ飛ばされた。でもそんなものは関係なかった。ガントレットで殴り続け、傷を広げようとしているのに、皮膚が硬すぎる。ハルバードで刺すのも三突きでやっと傷になったのだから。
―本当にコイツを殺せるのだろうか。




