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第三話「選択」

重たい瞼をゆっくり上げる。思考はできず何も考えられない。ただ、とても熟睡できたような気がした。視界の先には知らない天井。

「起きたか、少年。調子は?」

俺はその声を聴いた途端、条件反射のように飛び起きる。するとそこにはキロランケが擬態した状態で傍に立っていた。

「どうなってる?俺はお前に殺されたのではなかったのか?」

俺がそう尋ねるとキロランケは少し笑う。それは嘲笑の類ではなかったように思える。

「あぁ、少年。君は半分殺された。他は…。」

「俺は半殺しで他は皆殺しか?」

「…あ、君の後ろにいた男は逃したよ。あの調子じゃ私が殺さなくとも帰路で死ぬのではないかと思ってね。」

「…そうか…。」

俺は少し自分が安堵したことに驚いた。ガビ生きている可能性を信じられるからだろうか。

キロランケは俺の寝ていたベッドに腰を下ろし、足を組んでこう言った。

「君はあの男と同じような魂だな。燃え盛っている。冷たい炎が。」

「父か?」

「いや、もっと前だ。お前は会ったことないだろうな。」

「そうか。」

会ったのことないのだから祖父でもないのだろう。祖父以上前の血縁者のことはよく知らない。ただ恵まれていたことしか。俺は恵みを知らないのに。そう思っているとキロランケは俺を見て俯く。

「君には少し同情してしまうところがあってな。少し前、君の目の前で君の父親を殺したことだ。あれを―」

「謝る必要はない。お前は魔族側の正義を貫いただけなのだから。…だから俺を救ったのか?」

「違うな。残念ながら。しかも私たちは君自身よりも君の可能性や利用できるところを見ているからな。」

「冷たいな。今の感じでは温情があるように思えたが…。」

「0ではないが、君にあるわけではない。」

「敵だしな。」

「……。」

そう言って俺はベッドに腰を下ろし、部屋を見渡す。魔族の部屋がどんなものなのかを調べるためにも。すると黙っていたキロランケが口を開いた。

「目が覚めた君には魔王に謁見してもらう。それまでここに居ろ。」

そう告げてキロランケは部屋の外へ出て行った。俺はその場で仰向けに両手を広げて寝転ぶ。大の字で。

―これで俺の部下は763人死んだことになるな。

もう涙は出ない。ただ現実を受け入れる。淡々と。

そして迎える魔王への謁見式。

メイドのような装いの魔族が俺の部屋にノックする。そのメイドは頭にウサギの耳が生えていた。

「ラヤ=ボナパルト様。謁見の準備がございますので。」

俺はそのメイドについていく。別室で身だしなみを整えて着替えるだけの簡単な作業だった。見たことのない服装だが、受け入れられない変な服ではなく安心した。そしてとうとう魔王への謁見が始まるらしい。

「大広間へと案内します。魔王様へのご無礼は赦されないため、肝に銘じておいてください。」

「…分かった。」

大広間へたどり着くと大きく重厚感のある扉がずっしりと構えていた。そしてゆっくりと音を立てながら扉が開いた。中に充満していた魔力を体全身で浴び、吐き気が止まない。緊張でなのか魔力に酔うのか、そんなことも考えられない。

扉からは一直線に玉座までカーペットが敷かれており、道ができていた。その道に沿って高貴な魔族が集まっていた。そこの中にはキロランケやそれと同等の魔族もいるのだろう。

俺はゆっくり歩く。メイドは入り口で頭を下げているだけ。

―ここからは自分で行けってか。

そして人間の王にするようにしゃがみ、頭を下げた。少尉になる昇級式にも国王に授与されるためその時に身につけた作法を思い出しながら一挙手一投足に気を張る。

「静まれ!只今から謁見式を始める!」

玉座のすぐ傍にいた男魔族が声を出す。執事のような恰好だ。

「進行は宰相兼執事のグノクスが担当させていただきます。それでは魔王代理である真の吸血鬼―レヴィア様にご登場していただきます。」

その男魔族がそう言うと照明が消え、膨大な魔力の岩山が迫ってくるかのような感覚だ。

―この魔族が魔王〝代理〟?

キロランケとは別格に思えてしまう。やがて照明が着くが、身動きが取れず呼吸を忘れそうになる。

―呼吸はしていいんだよな。

自問自答を繰り返しているとレヴィアの口が開く。

「面を上げよ。」

「はっ。」

上官に対する返事をして顔を上げる。もう支配されているようで気に喰わないが、命を投げ捨てたくはない。

レヴィアの姿は十二歳ぐらいの女で八重歯が口から出ている。白い肌に銀髪、紅蓮の眼光。

「すまぬな、皆驚かせてしまった。」

そう言うと魔力を抑え始めキロランケ並みになった。

―キロランケも本当は…。

そう勝手に頭を悩ましていると玉座から立ち上がり俺の元へ来る。

「これは魔王様への謁見でもあるからのう。其方に魔王様のお姿を見せよう。」

するとレヴィアの額から俺の額に魔力の一本の糸のようなもので繋がる。それを認識した瞬間、視界が切り替わったように思える。

そこには医術の授業で見た心臓にとても似ていた。形は真球のような形だが、肉塊や血管のような管が渦巻いてくっついている。

―思った以上にグロいな。

脈を打つたびにろっ骨を折られるような衝撃が走った。

「今見たのが魔王様じゃ。急で悪いが、其方に問う。其方はこちら側陣営に就き、魔王様に尽くすか、この場で捕らえられ、魔王様の復活の供物になるか。どちらを選ぶ?」

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