第二話「決行」
二日後の夜―警鐘が鳴る。
周りは大騒ぎで兵士が走り回る。軍事演習通りの行動を心がけようと。だが、俺には察しがついた。
―作戦の前倒し…か。
人間かはたまた魔族か。誰かが事を急かしているように思えた。魔族の襲撃なら迎え撃つまでだが、きっとそれはない。だって―。
「魔族は見えないじゃないか。」
俺は最も高い中心の櫓から見渡していた。そのおかげで作戦の前倒しに気づけた。
「ガビは学院にいるはずだ。大丈夫。俺の隊員はみんな学院にいるはず。ここには俺一人。」
蹲り自分に言い聞かせるように唱えた。そして支度し、急いで出撃方向―東の門のところまで走った。すると、そこには見慣れた隊列を組んでいる者たちがいた。
「あっ!ラヤ少尉じゃないですか!」
―なんでいるんだ?ここに!
「お前らには……生存確率―推定8%の任務を遂行してもらう…。……。着いて来い!」
顔を上げ、隊員たちを引き連れていく。馬に乗り、基地の壁が段々遠くなっていくのがすぐに分かった。それだけ死期が早まる。
「少尉、今回の掃討で誰が一番強いですか?」
ガビが後ろから聞いてくる。
「公爵魔族だ。ケルベロスのキロランケ。手強い女だよ。」
「こ、こ、公爵?!侯爵とか伯爵でも将校出てきたりするじゃないですか!」
―公爵魔族。
魔族にも貴族の階級がある。それはあまりにも人間に似ており上の階級であればあるほど強いとされている。
「あぁ、そうだな。あいつは女に擬態する。油断すれば擬態を解いて喰われるぞ。」
「『あぁ、そうだな。』って!なんでですか?」
「……。」
「なんでだんまりなんですか…?」
「そう、だから、これは…特攻なんだ……。いいか!よく聞け!」
俺は後ろについてきている隊員たちにも聞こえるほど大きな声を出した。そして俺の嫌いな言葉を言い放つ。隊員たちを鼓舞させるために。
「俺たちは今から公爵魔族も含め、大勢の魔族を掃討する!アヤツらは人の言葉を発する動物だ。負ける訳にはいかん!誠実の勇者の名のもとに、特攻だ!」
そう叫んだ時にはもう〝女〟が見えていた。女の周りにが少し揺らいで見える…。だが、隊員は皆、雄たけびを上げて女を無視し、奥へと突っ込んでいく。
―気づいていないのか?!こいつ、人間の魔力量ではないだろ!
「お前ら!戻れ!」
「久しぶりじゃないか。以前は少年だったのに…。時の流れは早いな。」
―クソ。
この瞬間、叫んでいた隊員たちの声が聞こえなくなった。
「やっぱそうだよな…。ケルベロスのキロランケ。」
その女―キロランケの後ろにはついさっき通った隊員の死体が山になっていた。キロランケの姿は女ではなく三つの頭を持つ犬魔族―ケルベロスになっていた。
「…え?…あ…。……。」
キロランケの擬態に気づいていたガビは後ろで声を発せられていなかった。隊員の死体に意識が取られ現実を受け入れられていない。
「行くぞ、ガビ。突撃だ。」
「……少尉、他の隊員は?…え?」
「行くぞ、ガビ!」
「他の奴ら……は?」
「行くぞ!」
俺は馬を走らせ、魔法を纏わせた剣で斬る―はずだったのに…。
―ガビ、ごめんな、一人にさせてしまう。俺と似た境遇になってしまうな…。
俺の意識はもうなかった。




