第一話「特攻作戦」
「起床!」
放送係が放送で叫ぶ。俺は思わず耳を塞ぎ、目を覚ました。この声は実質、死刑される人間への声にしては甲高いように思えた。
「まだ、寝てたいんだけど…。」
朝の支度を素早くこなし、食堂に集まる。朝ごはんだ。胃は少し重たいし、喉も乾燥している。
「おはようございます!ラヤ少尉!」
「あぁ、おはよう。ガビ上等兵。」
ガビとはとても好青年で愛嬌がある男だ。
「やめてくださいよ~。距離感じますね。」
「恋人や伴侶ではないでしょう?」
「確かに、男同士でイチャイチャは僕もごめんです。でも仲間じゃないですか。魔王を討つ仲間。あなたの隊に入れさせてもらえてから実績が積まれていてうれしいです。」
「なら、他にとやかく言うものではないよ。」
そう言って俺は席につく。ガビは俺の隣に座った。
「知っての通り、三日後のあの任務はほぼ特攻だ。それでも悔いはない?」
「ない、とは言えませんが戦って死ねるなら、最高の名誉じゃないですか!勇者様に近づけたことになりますから!」
「名誉…ね。」
スプーンを動かす手がやや遅くなる。みんなが言う名誉とやらに俺は賛成しかねる。生き抜いた者勝ちでしかないのではないか、という疑問を捨てられないからだ。
「てか、僕と他の兵士は皆、学院に行かないとなんですよね。三日間。」
「そうだね。」
「僕、魔法の適正、炎だったんすよ!少尉と同じと聞いて。」
「確かに俺は炎に適性があるね。今はこの刻印で雷の魔法も使えるけど。」
「僕も少尉みたいにって。でも、学院の座学が苦手で。」
「誠実の勇者みたいに、がいいでしょ?適正は全部だけど、よく使ってたのは炎だったって。」
「本当ですか?!」
「まぁ、では頑張ってきてね。」
俺は食べ終わり、食べているガビに手を振った。
「最後まで聞かせ…。学院に行くの嫌ですよ~。」
取り残されたガビは俺に助けを求めようとしていた。だが、俺には少尉としての立場がある。同情はしてやっても、庇うことはできかねる。
その後、軍居地からガビやほかの兵士たちを送り出し、俺は会議の席についた。
「ではお聞かせ願おうか?期待の新星―ラヤ・ボナパルト。」
「今回の特攻作戦の代替え…ですよね。」
将校のダンテさんに大尉や中尉と俺よりも上の階級の人たちしかいない会議。俺は汗を握り紙に書いてある作戦を発表した。
「~からして、補給隊を送り込んでもリスクは低いですし、退路だって確保できます。そのため兵士たちの生存率は上がり、魔王からの侵略を長期的に抑えることが可能になります。いかがでしょうか?」
周りはざわざわし始める。大きな声ではないのにとても騒がしく聞こえた。するとダンテさんが口にした。
「悪くはない。だが、抑えるだけだ。特攻以上の大きなダメージを入れられるわけではない。」
「それは速攻性しかなく…!」
「誠実の勇者はどうやって倒した?少数精鋭で突っ込んで魔族の首を掲げただろう。」
バンッ!
「……。失礼しました。」
俺は思わず机に拳を振り下ろしたが、否定の言葉を口にすることはできなかった。
―誠実の勇者は勇者だろうが、俺たちは勇者じゃない。
「~。これにて特攻作戦の議題は終了とする。」
装備などの打ち合わせだけして会議は終わってしまった。俺はその場を立ち去り、廊下で一人隅に寄る。
―特攻作戦…また、仲間を失うのか。




