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第九話「魔王浸食―否定と肯定」

意識が保てなくなるまで殴り続ける。蛇はたまに地面を打ち付けたりとコバエを振り払うように俺を攻撃する。

―ああ、ヤベ。意識、トぶ。

そう思った頃にはもう遅く、白目剥いて振り下ろされていた。

気が付くと―グチャグチャ、ムシャムシャと声が聞こえてくる。俺の上に何か乗っているような重量感。

―キロランケか?それともユズキやクシロか…。

そう目を開くとそこには異様な光景が広がっていた。

「……魔物。魔物が俺を、俺を喰って…やがる!」

俺の声に反応してか魔物が差は慣れていく。俺は無理矢理にでも体を起こそうと腹に力を入れようとするが、到底無理だった。腕を動かして腹を触る。すると―

「腹が…腹が…無い?」

腹にあるはずの重みも全くない。腹以外はボロボロでも残っているらしかった。だが、それ以上に気になってしまうことがある。

―あれ、頭が透き通る。

なぜか嫌というほど冷静で分析している。生き延びるためには重要なことだ。俺は匍匐(ほふく)前進で進んでいく。

「キロランケやユズキ、他の奴らでも最悪、クシロでもいい。助けてもらわなきゃ―。」

その一心でひたすら腕を使う。腕だったボロボロで骨が見えている所だってある。それでも動くのであれば使わない手はない。そう前を進んでいると声が聞こえた。

「なんだ、その情けない痴態は。迷惑野郎。」

「…クシロ…か…。」

「今ここで殺してしまおうか。ここで処分すれば魔物の仕業にできるからな。」

「…は?」

「勘違いするな。俺たちはまだ仲間じゃない。監視役と囚人だ。いいか?お前は突然姉さんの命に背いてひとりでに飛び出す。その独りよがりでこれか?」

「独りよがり…。生きようとして何が悪いんだよ!」

「迷惑なんだよ。卵まで孵化させやがって、おまけにお前を探すための人員がどれだけ割かれたと思っている?ふざけるのも大概にしろ。」

クシロは俺に剣を向け、見下ろし剣を下ろす―。

「なにをしているのですか?クシロ。」

「この痴れ者に鉄槌を下すところで―。」

虚ろなぼんやりとした視界でも分かるクシロの目線。軽蔑の視線だ。だが、クシロの言葉を遮るようにユズキは否定した。

「やめなさい。」

「なぜすか、姉さん!」

「これを読めなかったのは私たち。レヴィア様も彼をここまで過酷な場所に送り込んだつもりはないでしょう。それにココまで満身創痍になるまで尽くしたのです。悪くはないと思いますが?」

「ですが…ですが!」

クシロは俺を庇おうとするユズキを否定しようと口を開ける。でもそこからはただ一言も声が出なかった。

「くどいです。彼を医療班へ持っていきます。一日あればなんとか持っていけるところまで―。」

そうユズキが言う。だが、俺はクシロを支持したい。そう思ってしまった。

―叱られた。

―ひどいことを言われた。

そんな子供のような言葉で片づけたくない。クシロは俺に反発精神を思い起こさせてくれた。軍時代を思い出す。上官への不満が感謝に変わるあの瞬間。

「…戦わせてくれ。どれだけ未完成でも明日…あの蛇を殺す。」

「ですが、それではレヴィア様に賜った任務が達成ならずに…。」

―結局はユズキも報酬の身かよ。

そう思わずにはいられなかったが、もう意識が不安定。この時点で俺にはほぼ何も聞こえず、ただ一言だけ聞こえた。

「こいつはやるぞ、ヤシャの二人。」

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