魔王を倒したらただの人?今日から勇者は食べるために働きます。4
マリーは夢中で素材を採集していた。
その間に数回、モンスターが出現したが、いずれも脅威と呼べるほどのものではなかった。
俺の剣の出番も少なく、警戒しながらも比較的穏やかな時間が流れていく。
気がつけば、太陽は真上に来ていた。
「そろそろ、昼にするか?」
俺がそう提案すると、マリーは手を止めて腰に手を当てた。
「もうそんな時間ですね。休憩しましょう」
中腰での作業が続いたせいか、マリーは腰をトントンと叩いている。見た目よりずっと大変な作業のようだ。
彼女はカバンから敷物を取り出して草地に広げた。
「どうぞ」
「あぁ、すまない」
俺も朝に買っておいたサンドウィッチを取り出し、かぶりつく。
「薬屋って儲かるのか?」
食べながらふと気になって尋ねてみる。
「んー、そうですね。物によりますね」
マリーは考え込みながら言葉を選ぶ。
「薬草はそのまま擦り潰して傷に塗るだけでも治りが早くなります。でも、煮詰めてポーションにするともっと効果が上がるんです」
「でも薬草なんて街でも売ってるだろ?」
「はい。ただ……街で薬草を買って、それでポーションを作ったら、赤字になっちゃうんですよね」
「なるほど、原価の問題か。なら、冒険者が素材を集めて自分で作ったら儲かるんじゃないか?」
「そう思われがちなんですけど、ポーションを作るのって実はすごく技術が要るんです。習得するには何年もかかりますし、戦いには役に立たないから、パーティに薬師を入れるのはリスクが大きいんです」
「なるほどな……それに、人数が増えれば報酬も分け合わなきゃいけないしな」
「そうなんです。だから薬師は自分で素材を採って、自分で作って、自分で売る。地道な仕事なんですよ」
マリーはそう言って、にこりと笑った。
彼女の笑顔には、誇りと覚悟がにじんでいた。
昼食をとったあと、ふたりは採集作業を再開した。
その後はモンスターに出くわすこともなく、穏やかに時間が過ぎていく。まるで散歩のようだ。
少し物足りない気もした。素材を採っている間、俺はほとんど見張っているだけで暇だった。
「さて、そろそろ帰るか」
そう言ったその瞬間、ひゅん、と何かが飛んできた。マリーは気づいていない。
俺は即座に剣を抜き、反射的にそれを弾いた。
ギィン――甲高い音とともに、それは地面に落ちた。
「え、角ウサギ……?」
飛んできたのは、角ウサギだった。
俺の一撃でその角は折れている。
ウサギはしばらくこちらを睨んだが、敵わないと悟ったのか、そのまま跳ねて森の奥へと姿を消した。
マリーは落ちた角を拾い上げて目を輝かせた。
「これ……!角ウサギの角ですよ!」
「そうか?」
「はい!これは高級ポーション、ハイポーションの原料になるんです。とても貴重で、高値で取引されるんですよ!」
「知らなかったな……」
思わぬところで、いい稼ぎになったようだ。
モンスターの襲撃も結果的には収穫の一部になった。




