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魔王を倒したらただの人?今日から勇者は食べるために働きます。  作者: ころまる


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3/11

魔王を倒したらただの人?今日から勇者は食べるために働きます。2

次の日、俺は朝から肉体労働に汗を流していた。


勇者という肩書きとは無縁の世界だが、こうして働くのも案外悪くない。汗をかくたび、少しずつ今の現実に馴染んでいくような気がしていた。




休憩時間、同じ現場の男が声をかけてきた。


「兄ちゃん、すげぇ力だな。あんな重いもん、ひょいひょい運ぶなんて」


「力には自信があるんで」


そう答えると、男は感心したように笑った。




「それだけ力があるなら、ギルドの仕事とか、もっと割のいい仕事あるんじゃねぇの?」


「……ギルド?でも、ギルドはなくなったって」




そう、俺の知っているギルドは、便利な複合施設「デパート」に取って代わられていた。


だが、男は首を振る。


「ああ、移動したんだよ。規模はだいぶ縮小したけど、ちゃんと残ってる」




驚いた。完全に消えたものだと思っていたが、まだ希望はあった。


「ありがとう。明日、行ってみるよ」



翌日、男に聞いた場所に足を運んでみると、確かにそこにはギルドがあった。


……ただし、かつてのギルドとはまるで違った。




建物はオンボロで、手書きの看板が風に揺れて今にも落ちそうだった。


立派な装飾も冒険者で溢れかえっていたあの頃の面影はない。


けれど、その文字は確かにこう書いてあった。




「ギルド」



ギルドは生きていたのだ。


その事実だけで、胸の奥が熱くなった。




俺は扉を開けて中へと足を踏み入れた。


ギルドの扉を開けると、中には若い女性が受付に一人座っていた。


どこか素朴な雰囲気の彼女に声をかける。




「何か仕事はありますか?」


「そうですね」


彼女は分厚い台帳を手に取り、ページをめくる。




「あぁ、今なら森での素材採取の護衛の仕事があります。モンスターはだいぶ減りましたが、森の方はまだ注意が必要でして。一日で2万バリーです」




──2万バリー。


昨日の肉体労働の報酬が8,000バリーだったことを考えると破格だ。


さすがは戦闘職の報酬である。




「分かった。それを受ける」


「かしこまりました。ギルドカードはお持ちですか?」




俺は古びたギルドカードを差し出した。


「最近じゃ見ないタイプのギルドカードですね。少々お待ちください」


そう言って受付の女性は台帳をめくって照合する。




有効期限など無かったはずだ──と思っていたが、内心少し不安だった。


しかし数分後、彼女は微笑んで言った。


「問題ありません。依頼者にはこちらから連絡を入れておきますので、明日の朝にまたお越しください」


「了解だ」




ギルドを後にして、俺は考える。


──そういえば、武器がない。




エクスカリバーは王に献上して以来、まともな装備は何もなかった。


このままでは護衛どころか自衛すらおぼつかない。


俺は武器屋へと向かった。




店内には様々な武器が並んでいた。


どれも既視感のある品々だが、今の自分にはどれも新鮮に映る。




「この鋼のロングソードをくれ」


店主にそう伝えると、手馴れた動きで会計が進む。


──ロングソード。間合いもあり、扱いやすい万能型。


小回りの効くショートソードも候補だったが、今の俺には一撃の重さが重要だ。


鋼製であれば耐久も十分だろう。




こうして、俺は新たな剣を手に入れた。


エクスカリバーには遠く及ばないが──今の俺には、これで十分だ。




宿屋に戻り、明日の依頼に備えて早めに床に就く。




新たな冒険の始まりに、胸が少しだけ高鳴っていた。





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