プルトドラゴン
1
2026年世界中の首都を虎型アンドロイド、
豚型アンドロイドの大群が急襲、制圧した。
この2者は重複しなかった。
虎は北米、南米、オーストラリア、アフリカを、
豚はユーラシア大陸全域。ヨーロッパから東アジアまで占領。
サイボーグと化したロシアのプートンが豚ロイドを、
同じく電子頭脳と機械の体に変わった、アメリカのトランプが、
虎ロイドを指揮していた。
ロシアはプートン帝国、アメリカはトランプ皇国と改名、
プートン帝王、トランプ皇帝と名乗った。
2国は相互不可侵条約を結んだ。
それ以外の国の存在は認めない。
世界中で反乱、大粛清が始まった。
2国は敵対者に対して、容赦なく核ミサイルを撃ち、全滅させた。
2
アンドロイドを作ったのは傭兵会社フォレストガードの
メッカーマン博士。機密が漏れるのを恐れた2者は暗殺を実行。
しかし特別性能のガードチームで返り討ちにして逃亡。
メッカーマン博士は反乱軍に加わった。
博士
「冥王星に巨大な宇宙生物が確認されている。
あやつを巻き込もう」「どうやって?」
「宇宙船で冥王星まで行って爆弾をぶつけて逃げる。
地球まで誘導する」「無茶苦茶だ」
それでも実行された。中国の宇宙船「新世界号」で出発。
プートン宇宙軍、トランプ宇宙艦隊が追跡、遠慮なく核ミサイルを撃ってくる。
やがて冥王星へ。
追跡チームも超巨大生物に気づく。核ミサイル攻撃!
バババーン!幾つもの閃光。
「ん~」怪物がこちらを見る。
シュッ!爪のついた手が宇宙空間をすばやく撫でる。
一瞬でバラバラの破片に変えられる宇宙軍。あっさり全滅!
「怪物よ、地球は現在、悪魔の独裁者に支配されてる!
助けてくれないか!」隊長が叫ぶ。宇宙船の中から。
「ん~」眠たそうな目で宇宙船を見る怪物。
そして短い足を動かして宇宙空間を泳ぐ。地球方向へ。
「伝わったのか?」「奇跡、いや、ご都合主義?」
「怪物と呼ぶのはどうもな、彼の名前を付けよう」
「ネス湖にいるならネッシー、冥王星だからメッシー」
「いや、食事って意味は変だ」
「ではプルート星だから・・・」
「ストップ!それは英語だと言ってはいけない言葉になる!」
「ああ、そうだな、じゃあどうする?」
「プルトニウム爆弾を直撃されても平気なプルート星の生き物だから、
プルトザウルスでどうかな?」
「恐竜でブロントザウルスと言うのがいるから・・・」
「我々の常識が通じない生き物だからドラゴンを付けて、
プルトドラゴンでは?」
「いいね、ではプルトドラゴンで」
3
地球上空。
トランプ皇国、プートン帝国のあらゆる兵器が
プルトドラゴンを攻撃するが効果が認められない。
地上に着陸。
攻撃してくる兵器を踏み潰し、圧倒的に破壊していく。
巨大ロボット怪獣軍が出動したが、
超巨大プルトドラゴンの尻尾のひと振りでバラバラに。
際限のない攻撃に怒ったか、プルトは体をブルブルっと震わせ、
パーッと光を発する。
地球上のすべての電子機器が火を噴いて破壊された。
電磁波攻撃をしたらしい。
電子頭脳のプートン、トランプ、彼らの親衛隊幹部たちも
破壊されて倒れ、スクラップに変わった。
歓呼する民衆たち。
プルトドラゴンは攻撃者がいなくなると浮上、地球の外へ。
中国の宇宙船の隊長
「敵をやっつけてくれて去っていく。まるで正義の味方だ。
メッシーというのは冗談だったが。彼はメシア、救世主といえるかも」
プルトは太陽方向に向かって進む。
隊長「彼はどこに行くんでしょう?博士?」
博士「うーむ。どうも火蜥蜴っぽい。太陽を食う気では?」
隊長「なんですって?ではやはり人類の敵!
地獄の魔王という意味のプルート?」
「とにかく追跡を。我々が太陽に近づける限りだが」
4
太陽に近づくプルト。そのまま突入。
太陽フレアの表面を泳ぐ。
隊長「エネルギー補給でしょうか?」
博士
「いや、体が光って太陽の表面にパルスが広がっていく。
太陽を活性化させているように見える。
太陽エネルギーが急速に強くなっていく!緊急退避!」
そしてプルトは太陽を出て再び外周方向へ。
冥王星に到着。地表に降りる。
宇宙船も地球で補給して追跡。
隊長
「観測班からの報告です。
我々の太陽系はアルデバラン太陽系に近づきつつあるそうです」
隊員「太陽系に近づく?どういう事でしょう?
地球は太陽の周りを1年間かけて一周してるんですよね?」
隊長
「そうだ。そして太陽系も、銀河の中心を軸に、2億年かけて一周している。
これはなかなか気づきにくい動きだが」
博士「すると別の太陽系に近づいていることが
プルトの動きと関係あるとすると・・・もしかして仲間を呼ぶ気では?」
隊員「あんな怪物が大勢やってきたら太陽系は
怪獣ランドにされてしまいますよ、何とか阻止しましょう!」
隊長「どうやって?」
「「「・・・・」」」
そして別太陽系が最接近する日がやってきた。
宇宙船は冥王星付近で観察。
プルトドラゴンは接近した別太陽系に、顔らしき表面を向けた。
この時、地球人類全員の脳に強力なテレパシーが届いた。
「マッチ1本火事の元~火の用心~」
カン、カン、と拍子木の音。