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臆病な恋の結末  作者: みなみ ゆうき


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第33話 秘密の発覚(1)

 俺が失恋したはずの相手と、俺のことを好きな振りをしているだけだと思っていた相手から、本気の告白をされるという、青天の霹靂ともいえる出来事から二週間が経った。


 あらためて話をして、二人の気持ちが本気だということはわかったけれど、俺自身、このことについてどうしたらいいのかわからないまま時間だけが過ぎている。

 答えを出さなきゃ、ちゃんと自分の正直な気持ちを伝えなきゃ、と思ってはいるものの、いざそのことを考えようとすると、自分の中にある曖昧な気持ちをどう言葉にしたらいいのかわからなくなり、結局自分の中で結論を出すことを先延ばしにしてしまっていた。


 そんな俺の状況を察してくれたのか、ありがたいことに二人とも、俺に対して答えを急かすような真似はしないし、まるでそんなことなどなかったかのように接してくれている。


 海里は今まで以上に俺に対して気を遣っているのか、以前のように『好き』という言葉を軽々しく口にすることはなくなった。

 一方煌斗のほうも、ここのところ毎日連絡がくるようになったものの、急激に関係を深めようとする素振りはなく、それどころか告白やキスしてきたことなんてなかったかように、疎遠になる前みたいな感じで接してきている。


 俺は二人が何も言わないことにほっとしながらも、ふとした瞬間に、それを心地よく感じてる場合じゃないと、後ろめたい気持ちになっていた。



 ◇



「ねぇねぇ、凛音ってさ、香川くんと仲良いんだよね?」


 いつもどおり、俺の席で海里と他愛もない話をしていると。

 普段あまり話したことのないクラスメイトの女子から突然そんなことを聞かれ、俺は一瞬何を言われているのか理解できずに、思わず彼女の顔をまじまじと見てしまった。


「えっと……、香川って、もしかして煌斗のこと?」

「そうそう」


 なんでここで煌斗の名前が出てくるのか不思議に思いながら確認すると、彼女の表情が一気に嬉しそうなものに変わった。

 それだけで、彼女が煌斗に好意を持っているらしいことがばっちり伝わってくる。


 こういうの、中学の時に散々経験したから大体察しがつくけど、まさか学校が離れてからも煌斗のことを聞かれることがあるなんて、思ってもみなかった。


(でも中学の時ならともかく、今煌斗のことを聞かれても、話せることなんてないんだよな……)


 内心、静かに困っていると、なぜか俺よりも先に、海里が口を開いた。


「なんで香川のこと知ってんの?」

「え、もしかして海里も香川くんと面識あるの!?」

「うん、あるよ」


 軽い調子で答えている海里に、俺は苦笑いするしかない。

 確かに海里は煌斗と会ったことがあるから、嘘は言ってない。実際は、知り合いとも言えないような関係だけど。

 しかも、あの時のことだけでいえば、決して良好な関係とは言い難いい気がする。


(海里はきっと、俺が答えにくいと思ったから、自分が率先して会話に参加してくれたんだろうけど)


 俺は海里に視線を向けると、大丈夫だからという意味で、軽く頷いた。


「煌斗と知り合いなの?」

「塾が一緒で、ちょっと前くらいから話すようになったんだ。SNSのIDも交換してるから、たまにDMくれたりするよ」


 煌斗がSNSをやってることも知らなかったし、そういった手段で自分から誰かに連絡する煌斗が想像できない。しかも他校の女子相手に。


 なんて返したらいいのか困っていると、煌斗のことで俺に話したいことがあるらしい彼女が一方的に喋りだした。


「制服で凛音と同じ高校だってわかったみたいで、凛音のこと知ってるかって聞かれたのがきっかけで話すようになったんだ。それ以来、香川くんとは凛音の話をよくするようになってさ」


 この口ぶりから、どうやら彼女は煌斗と話す口実として、俺のことを話題にしているようだとわかる。

 正直、俺の知らないところで俺の話をしてるって聞くのはあんまり良い気はしないけど、煌斗は不用意に何かを喋るタイプじゃないし、この彼女にしても、俺に関して知ってることなんて、所詮表面上のことだけだろうから、会話の内容を気にする必要はない。


 ──問題は彼女が俺に何を言いたいのか、ということだ。


「香川くんと凛音って親友なんだよね?」

「……うん、まあ、そうかな」


 曖昧な返事になるのは、今の俺たちの関係がどういうものなのか、自分でもよくわかってないからだ。


「じゃあさ、香川くんて彼女いるの? 彼女いなかったら、好きな人がいるかどうか教えてほしいんだけど」


『わからない』と言ってしまえばいいだけだと思うのに、言葉が出てこない。

 答えに窮していると、そんな俺を見かねたらしい海里が、俺の代わりに答えてくれた。


「彼女はいないんじゃないかな。好きな人はいるっぽいけど」

「彼女いないんだ……。でも好きな人がいるなら、その人と付き合う可能性もあるってことだよね」

「……それは俺の口からはなんとも」


 言葉を濁しつつも、俺のほうに寄越した視線が、ほんの少し不安そうに揺れている。

 当事者である俺は、タイムリー過ぎる話題に複雑な気持ちになりつつも、ただ黙って成り行きを見守っていた。


「好きな人ってやっぱり同じ高校の子?」

「さあね」

「なにそれ、そこまで言っといて教えてくれないとか、意地悪じゃない?」

「本人が言わないのに、勝手に喋るわけにはいかないでしょ」

「それもそうだけど……」


 きっぱりと言い切った海里に、さっきまで煌斗の情報を聞き出そうと意気込んでいた彼女がばつが悪そうに口ごもる。

 そして何かを考え込むような素振りを見せた後、上体を屈め内緒話をするかのように、俺に顔を近付けた。


「凛音たちと同じ中学の子から聞いたんだけど、香川くんって告白されても全部断ってたんでしょ? 凛音はその理由、知ってる?」


 好きな人としか付き合わない。本人はそれが告白を断る理由だと言っていたけど。


「……まあ、一応」

「あ、やっぱり知ってるんだ。みんな凛音は知らないんじゃないかって言ってたけど」


 みんなが知ってるってことは、煌斗は告白を受けた際に、その言葉を伝えていた可能性がある。


(だとしたら、やっぱり付き合うことになった彼女は、煌斗にとって特別だったってことだよな)


 そんなことを考えていると。


「香川くん、大変だったみたいだよね。変な女に付きまとわれて」

「……?」


 俺が知ってることと違う上に、初耳なことを聞かされ、俺の頭の中にハテナマークがいくつも浮かぶ。


「ひどい話だよねー。脅迫まがいなことして無理矢理彼女になろうとするなんて。香川くんは、その女が逆恨みして何するかわかんないから、他の子からの告白は全部断ってたって話だし」


 ──『彼女ができたんだ』


(じゃあ、あの言葉は……?)


 突然の、それも想像すらしていなかった話が衝撃過ぎて、思考がうまく働かない。


「その女、結局自分の思い通りにならなかった上に、香川くんに嫌われてたのがショックで、遠くに引っ越したんでしょ?」


 聞かれても、俺に答えられることは何もない。


(それが本当だったら、煌斗は……)


 黙り込む俺を見て、海里が心配そうな視線を向けてくる。


 俺は回らない頭で必死に今の話を反芻しながら、好奇心を隠そうともしていない彼女に対し、返事の代わりに曖昧な笑みを浮かべておいた。





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