EP7 真実は小説のように奇なり
______わたくしと島津鬼班長は、予定時間の09-00時になると、本店那覇基地から迎えに来た大型輸送ヘリCH-47チヌークに乗り込もうとタラップを上る。チラリと振り返ると、分屯地の皆さんが白装束だったのにはびっくりですわ。
「あれは夏作業服だ。まだ早いのにな」
へ?
「これは何のマネですの?」
「宮古島分屯地が、今生の別れだと覚悟しているんだ。それくらい察しろ」
<やはりアホだった>
は?
「マーガレット、お前は本当に......」
それ以上、続く島津の言葉はなかった。
ほ?
「島津班長は、何をおっしゃりたかったのですの?」
<神か小悪魔なのか、それともどこかの貴族令嬢なのか。そんなお前は、皆に愛されていた。島津はそう言いたかったのだろうよ>
うっ
<小悪魔悪役令嬢の目にも涙か? 似合わん>
「ほっといてよ」
バラララ
______お経のような読経が響く中、チヌークは飛び立ちました。
「マーガレット、行ってしまったなぁ」
「貴族令嬢みたいな子だった。寂しくなっちまう」
電子小隊の傷心は、想像以上だ。
「なぁ柳田、長村、来栖、俺はマーガレットが淹れた、親指突っ込みコーヒーがスゲー好きだった。もう飲めんのか。勿論、来栖が淹れたのも旨かったぞ」
「無理やりどーも。私の分も淹れてくれたの。やっぱり親指を突っ込んでたけど」
「あの笑顔、あの雑に淹れても旨かったコーヒー、<ですわ><ですの>って話す変な子だった」
「本当に雑だったもんねぇ~」
「「マーガレットォォ」」
「マーガちゃんん~」
まるで特攻機を見送る兵士を彷彿させていた。
それぞれの想いは、わたくしにはもう届きません。
見送るその中には、用賀指令の姿もあった。
「君は本当にどうして呼ばれたのか。分かっているのは極秘命令だったと言う事のみ。後は島津が掴んだ情報を待つだけだ」
やがてチヌークが米粒になって、視界から消えそうになっても、誰も動こうとはしなかった。
「おい、いつまで突っ立っている! 持ち場に戻れ!」
そう言う指令も、最後まで動けなかったのだ。
______やがて本店那覇基地に待機していたF-15は、いつでも飛び立てる状況にあった。
余程急いでいるのか、基地指令とわたくし、島津班長との挨拶もそこそこでしたのよ。
「浅倉三等空嬢、今回は余程の案件だろう。心して向かってくれ。島津班長、<シークレット・ウェポン>を頼む」
「分かりましたわ」
「バカ、了解しましただ!」
<ぷ、また怒られてやんの>
その場を逃げるように、島津班長はわたくしの手を引っ張って、後方ナビ席に押し込みました。
「乱暴なんだから!わたくし本当は......」
<おっと、その先は言うなよマーガレット>
◇久々のF-15◇
「自分で乗れましたわ!」
「多少、揺れるかもしれんが俺を信じろ」
<島津は訊いてなかった>
「わたくしだって、F-4のライセンスを持っていますの。F-15なんて楽勝ですのよ」
「馬鹿を言うな」
『tatuzou はF-15EXのエースらしい。もちろん、わたくしは操縦出来ません』
<丸投げじゃねえか>
「マーガレット、練習機と戦闘機の違いが分からんのなら、道中、嫌と言うほど教えてやるまでだ。どこぞのバカな令嬢もどき様は、まだ戦闘機の厳しさを知らんようだ」
ムカァ
『わたくし、邸宅にはF-15のシュミレーターがありますのよ』
「班長、なんなら、わたくしが代わって差し上げましょうか? わたくし、売られた喧嘩は買うタイプですの」
「その言葉、後悔するぞ」
「あら、わたくしが後悔するとでも?」