EP3 御存知? 悪役令嬢は案外モテますのよ
______ここで少しだけ、この世界の秘密を。
わたくしは、子供を授からなかった超富豪の両親の養女ですの。
<その記憶に私は驚いたよ。それに元の世界の隊員の多くが、そのまま存在していたなんて、やはり平行世界はあった!>
産まれて間も無いわたくしは、今の伯爵家の門に捨てられていたのですが、籠の横には扇と銀のティアラが添えられていたそうですわ。
扇とティアラは、わたくしの一番大切なもの。今でも決して手放す事はありません。
<小悪魔悪役令嬢の必須アイテムだもんな>
そして今でも二つのアイテムは、わたくしのトレードマークとなっていて、分屯地でも特別に所持を許容されているのです。ちなみにティアラは、制帽に着用しておりますのよ。
<マーガレットが伯爵令嬢だと知っているからで、そこは上の計らいなんだがな>
更に更にわたくしは、腰まで流れる金色の髪にイヤリング、隊服は紺のブレザー、掟破りの短めのタイトスカートにヒールと、特別扱いになったのは、やはり暗号解読の功績が大きかったのですわ。
<ま、それは認めよう>
『宮古島分屯地が、わたくしの言いなりには......なってませんけど』
そんなわたくしが、扇をそっと口に当てて、何気なく流し目をすると、大抵の隊員は蕩けてしまいますのよ。スライムみたいにトローッと。
まぁ、島津鬼班長だけは別ですけど。
<あいつは硬派、小悪魔のおまえなんぞに騙されるものか>
「おい、マーガレット、隊員達に色目を使うな! 士気に関わっわっているだろうが!」
<そらみろ>
『うわ、階級なしで、この伯爵令嬢のわたくしを呼び捨てぇ?』
でも?
『わたくし、そんなつもりありませんのに。なにをカリカリしているのかしら? わたくしをお嫌いなら、本店那覇基地に送ればよろしいのに』
______これが今のわたくし。
わたくしの功績は表には出ませんけど、広報誌や旅行雑誌の表紙を飾ると、たちまちアイドル扱いとなり、ドジョウが出て来てさあ大変。
<どういう例えだ馬鹿>
「ふふ、平民を装っていても、溢れる気品だけは隠せませんわ」
<そこは、本物の令嬢なんだから仕方ないか>
それと空自の新人美人女性自衛官が、何故宮古島分屯地の最前線にと、ネットでも、わたくしの話題は尽きませんの。
宮古島分屯地には、連日観光客やミリタリーマニアが訪れるようになって、わたくし、本業より分屯地の案内役になる事が多くて、遂に基地内外への外出禁止となってしまいました。
「もちろん、それをゴリ押ししたのは、あの鬼島津です!」
<妥当な判断だと思うぞ、島津good job>
「そ、そんなの不可抗力ですわ! 市長と観光協会にも大変喜んで頂きましたのに......あっ、ミス宮古島さん達には、白い目で見られていましたけど」
<上から目線で、フランソワのようなメイドと同じ扱いではな>
「貴族と平民の違いが出ただけですわ」
◇中国王朝軍の焦り◇
______「日本王国自衛隊は何を隠している? 放った諜報員は何をしていた! 陳、答えよ」
「いえ、突然な事で、情報部も把握しておりません」
「挑発行為を繰り返しても、遺憾砲ばかりで今迄は何も出来なかった日本王国が、先手を取るようになった。これは何かある!調べよ」
陳がどうした物かと思案し、退出しようとした時だ。
「待て、最新イージス艦<天洋>と原潜<深龍>を向かわせて、自衛隊がどう出るか、ハッキングしながら試してみろ。我が新鋭艦が出れば、何か尻尾を掴めるかもしれん」
はっ直ちに。
◇本店那覇基地◇
「宮本一等空尉、ここのところ中国王朝軍の領空領海侵犯が多いな」
「はっ、宮古島周辺が特に多くなっていますが、やはり原因は、やはり<シークレット・ウエポン>にあるかと」
うむ。
「マーガレット三等空嬢、位をわざわざ三等空嬢に落としてあの才能、もっと役立てたいものだ。宮古島分屯地には勿体ないと思わんか?」
「同感です指令。それにしても魔訶不思議な女性かと」
◇通信電子小隊◇
わたくしは、許可を頂いた扇を頬に当てながら、任務を遂行しておりました。
<おいマーガレット、ファイアー・ウォールが機能していないぞ。サーバーを緊急切断、直ちにシーカーを起動するんだ>
「いちいち煩いわね tatuzoわ」
「おい、マーガレット、何が起きた?tatuzoって誰だ?」
「ハッキングを感知、ブロックの為にサーバーを切断して、<シーカー>を起動しましたの。これは役にtatuzoですわ」
<苦しい言い訳だ>
「<シーカー>は、tatuzoと暗号解読が得意なわたくしが組んだ、ハッキング対象を逆探知するプログラムですの」
「シーカーだと? それで、何か特定は出来たか?」
「はい、洋上と海中からの特殊なハッキングかと。本店那覇基地もハッキングを受けていると推測しますわ」
わ?