EP2 マーガレットVS中国王朝軍 <宮古島分屯基地のシークレット・ウエポン>
麗華2025年春
______わたくしの希望通り、配属は空自宮古島分屯基地に決まりましたけれど、配属を決定するまで大変もめたと訊きました。
空自希望なのはいいとして、優秀で容姿端麗なわたくしの争奪戦があったとか。
<何が優秀だ、この馬鹿令嬢! それは私のお陰だろ。それをカンニングと言うんだぞ>
「それもわたくしの実力ですわ」
さて、自衛隊の広報モデルとして使いたいのも理由だそうですの。
海自も陸自も頑張りました。でもわたくしが宮古島分屯基地志望なのだからと、それが決定打となりましたが、その後も争いがあって、特に本店那覇基地からの強いラブ・コールがありましたのよ。
「マーガレット君、君の配属希望先に戦闘機はない。それでもいいのか?」
「はい。その通りですわ」
「今まで学んで来た事が、そこでは生かせないと思うが......まぁ、宮古島分屯基地は屈強で超優秀な隊員が揃っている。厳しい基地だが、それはどこの基地でも同じだ。役に立つ事を証明して欲しい」
はっ!
『こんな言い方、わたくし、とても辛いんですの』
<在学中は、私と交代して来ただろうが>
「夢クラブのDVDとは、大違いですわ」
◇王立宮古島分屯基地◇
______2025年春。遂にわたくしが着任する日が来ました。
着任する時は、大型輸送ヘリで。広いCH-47チヌークの中は、わたくしひとりだけになりました。
バラバラとヘリのローターが、砂塵を巻き上げています。
わたくしが流れる長い髪を、手櫛でかき分けてタラップを降りますと、そこにドスの効いた声が響きました。
「「「おおぉ!!!」」」
『べっぴんといいたいのですね。ええ、わかりますわ』
<ふん、悔しいが見掛けだけはな>
着任するわたくしを、総出で迎えてくれたのですが、ニヤケてないで警戒は厳としないといけません。後ろでシーサーのような男が睨んでいます。
わたくしをズイと迎えてくれたのは、鬼と訊いている島津班長でした。
<おぉ、島津か、こっちの世界にも居たのか>
階級が隊長(指令)の下で、大変えらい人です。
「本日付けで着任しました、浅倉マーガレット三等空嬢です」
『防院卒で三等? こいつ、いわく付き物件か』
本当は、<わたくしが伯爵家浅倉マーガレットですのよ>って言いたい所をぐっと我慢しました。
当の島津班長は、わたくしを上から下まで、舐めるように見つめて来ますの。
<隊服に乱れはない筈>
まず外見で、わたくしにダメ出しをしようとしたようです。
「問題はなさそうだ。よし、これから二等空佐 用賀指令に会ってもらう。ついて来い」
<!用賀指令とは久しぶりだ>
はっ。
『ひぃ~怖そうな顔。見ていらっしゃい、このわたくしが宮古島とあなたを変えてやるわよ!』
コン
コン
「指令、新任を連れてまいりました」
よし、入れ。
指令室に入ると、威厳のある男が飛び込んで来ました。
「私が用賀だ、歓迎する。階級は二等空佐だ」
<私は、上官に会えて嬉しいぞ>
「早速だが浅倉三等空嬢、配属は通信電子小隊だ」
今なんて?
「女なので、てっきり基地業務隊かと思っていましたわ」
わ??
「貴官は中国語に秀でていると訊いている。ならば語学力を十分に生かせるだろう?」
拝命します。
tatuzoの計画を実現する為には、第一歩が通信電子小隊はありがたかったのです。
『防院を卒業して三等空嬢とは、上は何を考えているんだか。それとも浅倉が申し出た? こいつ何者なんだ?』
島津は、渋い顔をして首を捻っていた。
◇悪役令嬢作戦開始◇
______わたくしの任務
中国王朝軍無線の内容を分析する事。
戦闘機と哨戒機、中国王朝版イージス、空母、潜水艦の無線を傍受し、暗号化された通信の解析。
『暗号解析など得意中の得意。即戦力になってみせますわよ』
<嘘つけ!>
ところが遊び人マーガレットは、暗号解読などゲーム感覚で楽しめる能力を持っていた。
<妙なスキル持ちだったのか>
______早速、中国王朝軍無線を傍受。
内容は領空を侵犯して、那覇からのスクランブル時間を、何度も計測することにある。
「加藤小隊長、中国王朝軍ステルス戦闘機「殲20」2機による、日本王国領空侵犯命令が出ましたわ。本店那覇基地に至急報告をされるのがよろしいかと」
「着任早々、大手柄だぞ」
<マーガレット、令嬢言葉が出てる出てる>
即、殲20が発進する前に、連絡を受けたF-15SE 2機が領空で待機した。
=タリホー! 情報通り殲20 2機を確認。おいでなすった=
=F-15レーダーには、反応しませんでしたね=
=確かに殲20の新型ステルスは厄介だな=
=しかし殲20、我々に気付いて反転していきます=
=F-15SEでは分が悪かったぞ=
=早急に第五世代機が欲しいものです=
=F-35か。宮古島分屯基地の誰かさんに感謝だ=
=RTB=
=RTB 了解=
「クシュン」
<馬鹿が風邪か>
最初は偶然かと思われたが、これが何度も重なれば、日本王国側に最新の探知システムが導入されたと思うだろう。
ステルスが自慢の戦闘機なのに、更にステルスを看破するシステムがあると推測したのだ。
<宮古島分屯基地のシークレット・ウエポン>
俄然、わたくしの存在は注目を集めましたわ。中国王朝側には、わたくしの仕業だとは分かりませんし。
それで、わたくしは<宮古島分屯基地のシークレット・ウエポン>と呼ばれるようになりましたの。
「でも、まだほんの小手調べ。美人悪役令嬢の本領はこれからですわ。ふふ」
<おい、私を忘れるな小悪魔バカ>
「あらあらtatuzo、まだいましたの?」
などと思っていたら、本店那覇基地が騒がしい事に。
なんでもわたくしを、那覇基地の所属にしろと言って来ましたの。
ガァ~ン
<那覇指令なら言い出しそうだ>
早くも転属かと、わたくし心配しましたけれど、なんとあの島津班長が激怒しましたのよ。
「うーん、わたくしには分かりませんわ。宮古島駐屯地の全隊員700人も同様で、今はわたくしの事で、喧嘩は止めてほしいものです。お陰でこの件は、保留となりましたの。はぁ~、美人って罪なこと」
<バカだけどな!>
そんなこんなで、わたくしの宮古島分屯基地改造計画は、予定どおり進める事が出来ますわ。
「企みは次回へと......回せればいいのですけど、tatuzoがやいのやいのと煩くて、毎日痩せる想いですの」
<ふんマーガレット、お前太っただろ。体重計に片足で乗ってもな、なんにも変わらないんだよ! この馬鹿令嬢が>
キィィ!
「令嬢に太ったは禁句ですのよ!」
<人の倍も食ってるからだろうが>
「tatuzoの分も食べてるからよ!」
<言い訳するな、このバカ!>