EP11 王女プリンセス・ソレイユ
______ フランス王国王女プリンセス
彼女はなんと新造フランス王国原子力空母<ローズ・アンドゥトワ> に乗り込んで、我が宮古島分屯地にやって来た。
フランスのル・アーヴル港を30日前に出航し、各都市の港に寄ってゆっくり観光をしながらの御来日だったようだ。
<令嬢とは優雅な身分な事だ>
「あら、軍をアッシーにするなんて、王族にあるまじき行為ですわ」
<お前も、F-15で市ヶ谷へ行ったんだが>
「はて、そうでしたか?」
<このボケ令嬢が>
空母で来日した理由は、搭乗機ラファール と予備機、点検整備要員に補修パーツ、プレハブ式でも豪華な王女様宿舎。それに組み立て式格納庫まで持参して来たからだ。
どうやら超我儘でも、パイロットの腕は確かなのかもしれない。
<まるで嫁入り道具持参だな。 これは相当我儘な女だぞ、マーガレット>
「わたくしに喧嘩を売りに来たのです。相手にとって不足はありませんわ。それにラファールなんて、それこそイカの姿焼きではありませんこと?」
マーガレットの横には、島津がピッタリと寄り添うように立っていた。
「ふっ、相手に不足なしとはマーガレット、お前は漢だな!俺は見直したぞ。それにラファールをイカの姿焼きとは、皮肉とパンチが効いている。それならF-15は何だ?」
「一番槍ですわ」
「なるほど!F-15は最前線の槍だからな」
妙に感心されてしまった。
<島津、惚れてしまったんだな......私は実に残念だよ>
「なにが残念ですの?」
<お前には関係ない>
んまぁ
「あぁ、お前は女だから、それが残念と言ったのか。俺はそのままでいいと思うがな」
______宮古島分屯地に異様な緊張が走る。
ある隊員は尿意を感じ、またある隊員は、間近で見る新造巨大原子力空母に圧倒されていた。
「海洋王国日本こそ、原子力空母が必要だが」
島津も原子力空母<ローズ・アンドゥトワ>を、羨望の眼差しで眺めていた。
タン
タン
タン
タグボートに曳航されたフランス王国原子力空母<ローズ・アンドゥトワ>が、静かに岸壁に横付けされる。
「音楽隊、歓迎の演奏を開始せよ 1.2.3」
ブンチャ ズンチャ
パパァ~
用賀指令の命で、自慢の音楽隊が演奏を開始する。
曲目は<セーラム・ムーン>
これもプリンセス・ソレイユの御指名曲だと言うのだ。
やがてタラップが降ろされると、いよいよ真打の登場となった。
しゃなり
しゃなり
「おぉ、さすがベルサイユ」
お付きの軍人が先導して、プリンセス・ソレイユの手をひこうとしたが、それを手にした鉄扇で叩いた。
バシィ
「この無礼者!」
周りが静まり返った。
「相当なじゃじゃ馬だぞ、これは」
<同感だ島津。私には悪い未来しか見えない>
そのじゃじゃ馬は、鉄扇を片手に誰の手も借りずにタラップを降りようとした時。
ゴビュゥ~
海から吹く突風と、長い豪華なドレスの裾をヒールで踏んだのか、ぐらりと前に倒れそうになった。
あぁん
ダダっ
そこに疾風のように男が現れて、プリンセス・ソレイユをお姫様抱っこで受け止めたのである。
「あいつ鉄扇が飛ぶぞ」
沈黙の空気が重かった。誰もが次の場面を想像出来たからだ。
「このまま、下まで運んで下さいます? サムライ・ソルジャー」
「Oui mademoiselle プリンセス・ソレイユ」
「あら、フランス語がお上手な事」
Merci beaucoup
「あの男、本店那覇基地の宮本一尉! プリンセス・ソレイユの世話を丸投げされ、貧乏くじを引き当てた俺の親友だ」
<ほう、不運な男だと同情するぞ>
その後、盛大な歓迎式典が行われ、用賀指令と宮本がエスコートをしていた。
「ところで用賀指令、わたくしに謁見に現れない女がいるようですが.....教育がなってませんこと?」
謁見しない女______
「あら、わたくしを御指名のようですわね。相手がフランス王国の王女であろうと、このわたくしが頭を下げる事はありませんの。それは即ち、わたくしが戦う前に負けを認めた事になりますのよ」
売られた喧嘩とは言え、歓待をする側としてはとても拙い。
指令はどうこの場を切り抜けるか、それで頭が沸騰していた。
「マーガレット三等空嬢は、現在不在ですので、また後日ご尊顔を拝す事でしょう」
「仕方ないわね、サムライ・ソルジャー」
nfu♡
これはマーガレットに惚れている宮本一尉の機転だった。
『よく言った。一尉』
用賀指令がほっと胸をなでおろしているのが、遠目にも分かった。