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え。ブックマークしてくれてる人がいるんですけど!? ポイントまで!?

ありがとうございますありがとうございます。

調子に乗って投稿しちゃいますね!




 昨夜はネガティブな考えにとらわれてしまって、あまり眠れなかった。

 いつものようにレベッカとメグと三人で昼食。今日は、カフェテリアに来ていた。

「レミィ、お化粧でも隠れてませんわよ」

「え?」

「目の下。クマが住んでるぞ。あと、背中にどんよりとした雲も連れているように見える」

「あー⋯⋯、ごめん。昨日あまり眠れなくて。心配してくれてありがとう」

「いや、アレが気になるんだろうが⋯⋯」


 チラリとレベッカが視線をやった先には、ジェイ様とユーリアさんが二人で昼食を摂っている。少し奥まっている席で、あちらは私たちに気付いていない様子だ。

 ジェイ様とユーリアさんの関係に、もやっとしたものを感じているこんな気持ちの時に限って、二人を見つけてしまう。

 ⋯⋯彼の隣は、私のものだと思っていたのに。

 二人は少しでも時間が惜しいという様子で、真剣な表情で話しながら、メモをとったりしている。きっと、今進めている研究について議論しているんだろう。

 彼女は彼が運んできた食事を食べている。なんて親密な様子なんだろう。

「⋯⋯一生懸命で、お似合いのカップルみたいね」

「レミィがそんな風に言うなんてな」

 突き放したような声になってしまった。レベッカがあきれた表情で私を見る。


「確かに彼女、応援したくなりますわね。言葉の壁も、文化の壁もあるでしょうに」

 メグも褒めている。本当に、私もそう思う。だから嫉妬してしまうのだけど。

「ユーリアさんて明るくて、一生懸命で、外見もかわいらしい。親切にしてあげたくなるのは当然じゃない?」

 私だってそう思うくらいだもの。だから、もう二人は恋に落ちているのかもしれない。

 ⋯⋯そして、あんな良い子のヒロインに、醜い嫉妬が抑えられない私はやっぱり、悪役令嬢だ。


「確かに、そうなんだが⋯⋯」

 ふたりが気の毒そうに見る視線にいたたまれなくなってしまう。

「あー、ごめん。先に戻るわね」

「レミィ⋯⋯」





 午後の講義は全く頭に入ってこなかった。

 放課後。クラスメイト達はいつものように楽しそうに話しながら、クラスを出て行く。

 なんとなく、帰る気にならなかった。どこにも自分の居場所がないような気がして、逃げるように、裏庭から続くベンチにきた。


 ひとりで泣こうと思ったのかもしれない。小さな花が咲く花壇に癒されたかったのかもしれない。

 とぼとぼとうつむいて歩いて、辿りついたそこには、婚約前のお昼休みにいつもそうしていたように、ジェイ様がベンチに横になって休んでいた。

 ああ、彼だ。

 その景色は私が望んでいたもので、あの、キスしたときみたいに、心を通わせていたと思えるジェイ様に会えたと思った。


 ジェイ様はこちらにに気付くと、ゆっくりと起き上がって、私を見て微笑んだ。嬉しくて、心臓がドキドキとうるさい。

「ジェイさま⋯⋯」

 思わず、笑顔がこぼれた。


「レミィ、なんだか久しぶりですね」


 その言葉に、上向いた気持ちは、また沈んでいってしまった。彼が敬語を使ったことで、彼はあの頃の彼ではないと、確認してしまったから。

 ここでなら、婚約前と同じにしてもらえると期待したのに。

 なんとか表情を取り繕って、沈んだ気持ちを外に出さないように笑顔で彼の隣に座る。

「ほんと、お久しぶりです。ジェイ様はお忙しいから」

 言ってから、しまったと思う。彼を咎めるような言い方になってしまった。

「そうですね、レミィと会えなくて俺も寂しい」

「ふふ。相変わらずお上手ですね」

「本心ですよ」



 なら、キスしてほしい。



 自然とそんな風に思った。けれど、ジェイ様の気持ちが分からなくて、自分からそんな願いを申し出ることはできなかった。

 好きで婚約したわけではないなら、こんなこと言う婚約者なんて嫌になってしまうだろう。

 まさに悪役令嬢まっしぐらだ。


「今日のお昼は、ユーリアさんと研究棟のカフェテラスにいらっしゃいましたね」

「えっ、レミィも昼食はあそこに? 声かけてくれたらよかったのに」

「なんだか真剣に議論していらしたから、邪魔になってはいけないと思ったの」

「本当に時間がなくて。やることが多すぎなんですよ。やっと少しできた時間でここにこれました」

「まあ。食事の時間も使わないといけないくらいなの⋯⋯。ずっと、一日研究なんて大変ですね」

 ああ、また。なんて嫌な言い方してしまうんだろう⋯⋯。

 私って、こんなに嫉妬深い女だったかしら。

 自己嫌悪に陥りそうだったけど、ジェイ様は気付かない様子で話を続けてくれた。


「ユーリアが今まで隣国でまとめてた研究の成果が認められてるんです。ペルツ先生があちこちの有力者にかけあって開いた説明会で、自分でスポンサーまでつかまえてきたんですよ」

「⋯⋯本当に、彼女すごいのね」

「ええ」

 そう頷いたジェイ様は自分が褒められているように、嬉しそうに笑った。

 ジェイ様の中で、彼女の存在が大きくて、とても距離が近いんだと言われた気がした。名前だって呼び捨てているし。

 私の気持ちなんて知らずに、彼は続ける。


「それで、実際に魔物を狩ることになって、ズューデンフェルト侯爵領の渓谷に行くことになりました」

「ええ? それは、危険なのでは?」

 ズューデンフェルト侯爵領内には深く広い渓谷があり、そこには多くの魔物が生息している。渓谷のすぐそばに幾つか対魔物の砦が築かれていて、専門の部隊が常駐していたはずだ。

「俺とペルツ先生は後方担当で、砦から動きません。下手に騎士に混ざっても足を引っ張ってしまいますから。ただ、ユーリアは、実働部隊に参加する予定です」

 えっ、女の子だけ討伐隊に参加?

 それってヒロインの立場としていいものなの? チートなの?

「ユーリアさん、大丈夫なの?」

「彼女は自領で討伐隊に参加していて、現場でのデータをとっていたんです。今回の調査も、是非討伐の前線を調査したいと主張してました」

「でも、危険がないわけではないわ。ジェイ様が守ってあげられるの⋯⋯?」

 危険の中で絆とか愛が深まったりするパターン?

「ズューデンフェルト侯爵領の軍が守りますから、心配いらないと思います。ペルツ先生もいますしね」

「そうかもしれないけど⋯⋯。誰も怪我せず帰ってきてくださいね」

「はは、大丈夫ですよ。ペルツ先生はいつものフィールドワークだって言ってました。それで⋯⋯」


 不自然に途切れた言葉に、彼を見ると、少し照れたように上目づかいでこちらをのぞき込んだ。その顔に、どきっとする。

「少しの間会えなくなる前に、デートに行きませんか? 最近忙しかったから、レミィが不足している」


 もちろん、笑顔で了解した。




短めですみません。次回はデートするのでやや長め。

もちろん一波乱有りマス。

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