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婚約したら前世を思い出しました。婚約者と留学生の距離が近いようですが、私って悪役令嬢かなにかでしょうか?  作者: 池田 華子
ユーリア・ハンナ・ファーングヴィストはヒロインなのか、それともただの当て馬か
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話が短めだったのでもいっちょ投下。(本日2話目の投稿です。)


ユーリア視点最終回



 先輩の情けない事情を知った翌週から、ズューデンフェルト侯爵領に調査の旅に出た。そして三週間で学園に帰って来ました。

 なんやかんやと濃い三週間だった⋯⋯。

 なんやかんやは割愛するけど、先輩は隠し事が無くなったからか、婚約者さんに男の事情を向けられない鬱憤を晴らしたいからか、私に婚約者さんのことを惚気てくるのでうっとうしかった。

 熊先生とも仲良くなったと思う。先生はすっごい早さでヒゲが濃くなる。やっぱり熊なんだと確信しました。

 地元の領のハンターさん達やら、随行してくれた軍人さん達やらとも仲良くなれた。わたし、軍を育てるのもやってみたいわ。そういや前世も戦国時代の野望的なゲームやら、ストラテジーな昔懐かしPCゲームやらやり込んだ覚えがあります。誰かそういうゲーム作ってくんないかなあ。

 あー、でも魔物と戦うんだから、ハンターでサバイバルなゲームになっちゃうのか?


 つらつらと、どうでもいい事を考えながら、学園での生活の一部である研究室に向っているところで声をかけられた。

「ちょっと。あなたがユーリアさん?」

「お話がありますの。ついてきていただける?」

 わあお。迫力美人が三人も。見たことあるわー。ノーディス先輩と同じ学年だかで、よく先輩に絡んでたよね。

 小説で見るようなお呼び出し。ノーディス先輩と旅行なんて生意気なのよ、とかかな? もう行ってきた後ですけどね?

 面倒だから行きたくないけど、こんな研究室前の廊下で騒いだらもっと面倒になるんだろうなあ。

「⋯⋯はい、先輩」

 しおらしい態度に見えるように、か細く返事して、先輩方の後をついていくことにした。


 連れて行かれたのは中庭だった。

 人の気配はないけど、こんな誰が見ているか分からないところでいじめちゃっても大丈夫?

 交換留学生にそんなことして、学園での評価とかに響かないのかなあ。私、別に黙って我慢するつもりないけど。


 きらびやかな先輩方は、とっても嫌そうな表情で口を開いた。嫌ならやんなきゃいいのに。

「ノーディス様の研究を、さも貴女が行っているように発表したそうね?」

「ノーディス様は学業だけでなく研究にも力を入れておられるのよ」

「それを、貴女の手柄のように発表するなど、間違っていると思わないの?」


 おや、ノーディス先輩モテモテですね。こんな風に、ひとりを大勢で囲んじゃうお嬢様方にモテても嫌でしょうが。

 まあ、研究はペルツ先生とノーディス先輩と、私の共同名義だから、別に奪ってはないのです。


「あまつさえ、轟雷将軍にもお手伝いいただくなど、恥知らずなのではなくて?」

「そうよ。ノーディス様だけでなく、かの轟雷将軍のお手を煩わせるなど、淑女の風上にもおけませんわね」

「研究にかこつけて何をなさっておいでなのかしら」

「轟雷将軍ですか⋯⋯?」

 やべえ笑える。調査班に厨二みたいなアダ名の将軍なんていたかな?

「ヴェステンサミット閣下のことですわ! ぬすっと猛々しい!」

「あっ、あのチャラい准将閣下か」

 わたしにお菓子を与えてくださったチャラいおっさん騎士は、偉い人らしいんだけど、調査地にふらっと現れて数日間作戦に参加して行かれた。准将閣下と呼ばれていたし、彼が居る間は随行の軍人さん達の雰囲気がピリッとしていたので、多分だけど、ずいぶん偉い人なんだと思う。

 でも、誰も私にはその偉さを解説してくれなかったし、当の閣下はすんごく馴れ馴れしく絡んできたから適当に相手してたけど、叱られなかったから、親戚のおっさんくらいの距離感でいた。


「なっ、チャラいですって!?」

「不敬よ!」

「誰にモノを言っているのか分かってらっしゃるの!?」


 あー、はいはい。もう面倒だわー。研究室に戻りたい。

 そういえば、話題のノーディス・イケメン・ムッツリ先輩も休憩に行ったんだよな。可愛い後輩が貴方のせいで絡まれているんだから、颯爽と現れて助けてくださいよー。

 どうやってやり込めてやろうか考えていたら、先輩の一人が手を祈るように組んで魔力を練っているのに気付いた。

 え?魔法? ここで魔法なんてまずいんじゃない?


「何をしているのですか!?」


 先輩達の後ろから、突然大きな声をかけられた。魔力を練っていた先輩もびっくりしてそちらを向いて、集中が切れたからか魔力は霧散した。とりあえず大惨事にならなくてすんだ。

「こんなところに皆さん集まってどうかなさったんですか?」

 少し声のトーンを落として、ゆっくり話しかけながら私と囲んでいた先輩達の間にさりげなく入ってきてくれた人は、ノーディス先輩ではなく、彼の婚約者さんだった。

 え。助けてくれるの。天使かな?


 いい男なら誰でも大好きそうな先輩達は、いじめが思ったほど上手く行かなかったことの腹いせか、いじめの首謀者が婚約者さんだったかのようにシフトチェンジしてきた。それはやっちゃダメないじめでしょ。

 婚約者さんはぐっと拳を握って去って行く先輩達を見ている。

 ああ、きれいな顔には表情がない。あんな奴らの言うことなんかほっとけばいいのに。


「ノーデンクルーセス様。⋯⋯あの、ありがとうございました」

 何か考えていたのか、はっと気付いたようにこちらを見た。そうして、浮かべた笑顔はぎこちない。

 噂が大好きで、人の揚げ足取ったり引きずり落とそうとするのはこの国の貴族も同じなのかも。私はあんな人達に何言われてもあんまりダメージないけど、侯爵家の継嗣を担うようなお嬢様には変な噂は死活問題なんだろうか。


「疲れましたね。少し、座りませんか?」

 彼女は本当に疲れたように笑って、すぐそばにあったベンチを示した。

 こんな美人が立っていられないほど打ちのめされているのに、なにやってんのよ、ノーディス・ヘタレ先輩!


 婚約者さんとベンチで話す。なんでこの人、こんなに余裕ないんだろう。きっと、先輩は自分の気持ちを伝えてない。婚約者だからっていい気になってるんじゃないか。まあ知ったこっちゃないけど。

 婚約者さん、ちょっと痩せたんじゃない? 美少女に憂いの色が乗って、色気を感じる。彼女となら、イイかもしんない。

 妖しい扉が開きそうになったけど、しっかり閉めて施錠した。なんかやらかしたら先輩が怖い。


 話すうち、彼女の憂いは、わたしとノーディス先輩の仲を誤解してることだと分かってしまった。

 先輩、あんたの気持ちはちっとも伝わってないよ!



ユーリアは特に難しいこと考えてませんでした。


次回からジェイヒライン・ノーディス先輩視点!

薄々察してらっしゃるかもしれませんが、かっこいいヒーローはどこにもいません。

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