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前のレミィの章をユーリア視点でお送りします。
章タイトルどおりのヤツです。
たぶん、転生なんだと思う。日本に暮らしていた記憶がある。おぼろげだけど。
はっきり「前世はOLです!」とか覚えているわけではない。けど、メディアの情報とか、ふとした日常の一コマとか、切り取った夢みたいに思い出すことが多かった。
ラノベとか大好物だった。異世界ものとか飽きるほど読んだ。いや、飽きませんでしたけど。
今生きているこの世界は剣と魔法の世界で、この国は封建制度だ。我が家は伯爵家で、貴族だけどまあまあ貧乏だ。なぜなら、領地が魔の森に接しているから。
魔の森なんて異世界だわ! とか、はしゃぐような素敵なモノではなかった。
魔の森は実りも多いんだけど、魔物も住んでいる。この魔物がやっかいでやっかいで!
森で会ったら必ず襲ってくる。普通の動物と見た目はあんまり変わらないけど、攻撃的で見つかると襲われる。やられる前に狩るしかない。
そして、一番厄介なのは、どういう周期か不明だけと、たまにすごく数を増やして辺りの街を襲う。前世風に言うとスタンピード。あるいは大海○。こうなると、魔物は生きているものなら何でも食べる。家畜でも、人でも。
領主は領民を守るために魔物を討伐するのが仕事。普通は、騎士団とか魔術師団とかがお抱えで、彼らは通常任務で魔物の狩りを行っている。
我が家の場合は、騎士もいるけど、領主も自ら領民と共に戦う。主に金銭的な理由から。いや、違った。貧乏を前面に出してはいけないと言われていたんだった。貴族の義務であることと、魔力が豊富な家系だから戦闘にも後方支援にも重宝されるからです。
あと、お父様もお祖父様も脳筋。先陣を切る、ってカッコイイらしいよ。
もちろん領主の娘であるわたしも討伐隊の一員だ。強く⋯⋯はないけど、魔法が使えるし、後方支援は何人いたって良い。
まあ、魔法と言っても、この国では派手な攻撃魔法なんてのを使える人はほとんどいなくて、何でも治せる便利な治癒魔法みたいなのもない。
生き物とか、大地とかを巡っている力を魔力と呼んでいて、コレを意図的に動かすのが魔法だ。普段の力を強く引き出したり、自分以外に受け渡したりする。例えば、集中力とか視力を底上げして命中を上げたり、素早さを上げたり。怪我人の治癒力を上げて傷の治りを早めたり。地味だ。
隣国には魔法使いと呼ばれる集団がいて、彼らはファンタジーっぽい魔法を使えるらしい。そっちに産まれたかったっ。
魔力は、魔道具を動かす原動力にもなる。こっちが実用的で一般的。この世界には電気がない。前世の電気が魔力みたいなものかなあ。魔力を使って、魔道具を動かす。冷蔵庫とか、洗濯機とか、調理用のコンロみたいなのとか、シャワーとか。生活のありとあらゆる必需品が魔道具だ。
実際、魔術師って魔道具を作る人か、特別な魔道具を動かす人のことを言うんだよね。もちろん、前世のイメージどおりの魔法みたいなのを研究していて、魔法陣を使っている人も魔術師って言われている。まあ、魔力を使ってなんやかんやしている人が魔術師。だから、魔術師っていう人は本当にたくさんいる。
うちの領の魔術師団は、武器の開発をメインに行っている。
あいつらが扱う魔道具は、銃とかランチャーみたいで、なんだか前世の知識があるんじゃないか、という武器を作ってくる。しかも、動かすのにものすごく魔力を使うので、持ってる魔力が小さい人には扱えない。必然的に、魔力が多い討伐隊メンバー、つまりわたしとか、が実験台になって使用している。領主の娘って、もっと姫のような扱いにされてもいいと思うんだ。うん、いや、自領のためです、頑張ります。
魔物の討伐に、日本人の記憶なんかほとんど役に立たなかった。魔物は分からないことだらけだ。
ちょっとでも効率よく撃退するために、いろんなことを試した。効果があったことも、失敗におわったこともある。
こういう情報って、もっとビックデータで評価しないといけないんじゃないかと思って、別の領地の討伐状況を調べてみた。様々な土地で様々なことが試されている。そういった情報を元に領地の討伐に活用したり、調査内容を広げたりした。
調べるうちに、そもそも魔物ってなんなんだ、と方向性が変わってきた。魔物を解剖したりもした。個体差が大きすぎてよくわかんなかった。
独自に調べることには限界を感じていた。領内にも優秀な人材はいるけど、世界的な視野があるわけではない。
前世ではいろんな企業とか大学とかで研究する人達が成果を出してたけど、あれって、施設とか人材とかが揃ってて、しかも皆で同じ方向を向いているから出来たことだって知ってる。しかも情報は世界規模。
ここじゃ出来ることは限られてるし、やっぱり系統立てて勉強することが必要だと感じて、王都の大学に入学を希望した。
前世ぶりに必死で勉強した。だって、うち裕福じゃないから、受験を許されたの一回だけだったんだよね。
必死にやった甲斐あって、合格をもぎ取った。わたし、やればできる子!
期待に胸を膨らませて入学した。魔法や魔物について基礎を一年学び、いよいよ研究職につながる二年目。やっと、スタートラインに立てた! と、思ったのに。
我が校と、隣国の魔法を主に研究している学園との交換留学の一人に決まってしまった。
え。ナニソレ理不尽。
本来わたしには関係ない話だったんだけど、留学に決まってた人が怪我したり、優秀な生徒が隣国の言葉を話せなかったり、政治がらみのなんやかんやがあったりで、急遽メンバーの一人になってしまった。
魔物研究の第一人者の研究室に入る予定だったのに! 横暴! 貧乏伯爵家だからって、言うなりになると思うな!
え? 資金は国が持ってくれるの? しかも魔物の研究をみっちり1年できる?
行きます行きます。しっかり勉強してきます。
そんな訳で、やってきました、魔法学園!
やばい、転生した貧乏伯爵令嬢が魔法学園に留学するなんて、ラノベか乙女ゲームじゃね!?
テンション上がるわー。
しかもこの国、うちより魔物の出現率が低い。何が違うんだろう?
人口とか産業とか、特に明らかに違いがあるものが思い当たらないんだよね。そこんとこも調査したいな。
話す言語は違うけど関係ないだろうし⋯⋯。魔法を使う人の数とかかなあ?
学園内に関して言えば、イケメンが多い。余裕があったら婿探しも視野に入れて要検討。
まあ、学費と経費は国が持ってくれるんだし、イケメンと学園生活楽しんでもいいよね!
説明回でした。
読了ありがとうございます。次回イケメン・ジェイヒライン先輩登場。