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第二話 『随』

久しぶりにかっきゃした。読んでぃみてぃ。

「君の演奏を聞かせて!」

 涼しい風が吹いた。熱い夏に花が咲いた。夕日が彼女を照らした。頭だけが熱くなり、胸が跳ねる。

 あの日の記憶の一片のかけらを見つけた。

 彼女のその言葉は、聞いたはずが無いのに、何故か懐かしく感じる。優しく元気な声だ。

 僕は言われるがまま、ピアノに手を置いた。そして演奏した。

 この人の前で演奏した気がする曲をひいた。

 そして演奏が終了した。

「上手だね。まぁ、私ほどでは無いだろうけどね!」

 そういって、何故か僕の手の上に被せる様に手を置いた。

「弾いてるとき、手の形変になってるよ。弾くときは優しく丸く、卵を包む様にしないと」

 やっと、僕は緊張によってミスをした事に気づいた。絶対にしないはずの基礎的なミス。

 彼女は、またねと言って音楽室から出て行こうとした。

 だけど僕は、それは駄目だと思った。僕は、僕から出る筈のない様な声でその人に言った。

「僕の名前はツバキ!あなたはどんな名前ですか!」

 彼女は少し驚いた後言った。

「私はアサって呼んで!アサガオのアサだよ!」

 そう言って彼女は去っていった。

 

 家に帰り、食事を摂り、お風呂に入り、眠りについた。今日はどんな夢を見るのか、想像しながら。

『おやすみなさい』

__________________________________________


「っは、此処は何処だ。いや、学校なのか。」

 隣にはアサさんが座っている。美しい雰囲気をそこら周辺に醸し出し続けている。また僕は見惚れている。その瞳に吸い込まれかの様に。

 今は、音楽の授業でありピアノの演奏を聴くというものであった。僕がただ、望んでいたもの。

 アサさんと会うのは今日が「2回目」か。今が終わってもまた会えるだろか。

「ピアノ凄いね。私もこんな風になりたいな。」

「う、うん」

 何気無い言葉。

 それ言葉が僕の心を刺した。

 

 僕も昔は、叩けば鳴る、離せば鳴り止む。その単純な運動だけで、人生や命、森、海、池、文化など、ほぼ全てを表現できる音楽、その中でも特に『ピアノ』に心惹かれた。その結果僕はピアノを始めた。

 ピアノは幼児の時から始めた。レッスン初日には、プロの講師の演奏を聞いた。溺れる程の感情に体を侵され、呑み込まれて行った。

 異常な自分に違和感を感じながらも自己の本能に従い鍵盤に触れた。

 音が鳴った。

 直後、僕は生涯に渡り触れてはいけないと思っていた『なにか』の感情の沼へはまった。その日からはもう食事も忘れ、勉強も忘れ、それまでの趣味等にも手を出さず鍵盤を触り続けた。一本、二本、三本、そして四本、五本、六本、七本、八本、九本、十本と着実に上達を続けた。

 

 中学生にもなると、部のコンクールでピアノを頼まれた。僕は、まだこれ以上高鳴りを感じたことはない。結局、そのコンクールでは自分の中学校が優勝した。部の人など色々な方面から「ピアノが凄かった」と何度も言われた。喜んだ。存分に喜び尽くした。

 でも、そんな時もすぐに終わった。

 ある種の嫉妬心によるもの。僕は、その部の他のピアニスト達にいじめを受けた。だけど、いつもその人達は楽しそうな顔では無く、苦しそうな顔をしてた。

「本当に苦しいのはこっちなのに何故お前らが苦しそうにしてやがる」

 そう何度も心で叫んだ。

 何故これ程の仕打ちを受けても尚、ピアノが僕を惹きつけるか理解したことは無い。

 

 そして中学二年生の時の事だが・・・

 何故か思い出せない。忘れる筈がないものを。

 どうしてだ

「大丈夫?さっきからちょっと様子変だよ」

 アサ。

「え、ごめん。ちょっと変だったかな」

「いやいや、ごめんは必要ないよ。ツバキが大丈夫なら良いの。とりあえず大丈夫そうだね。よかった」

 地味な男の僕にも心配してくれるこの人は凄いな。

 なんせ僕は学校の裏サイトにも載るほどの地味男だ。本当にこの人は優しい。

「ごめん、ちょっと伝えたい事がある」

 神妙な表情で少し緊張しながらそう言った。

「いいよ。何の話?」

 何故、僕は今軽々しく了承したのだ?

 どうしてかは知らないが、また離れ離れになってしまいそうな恐怖も感じる。

 だが、僕は返事をしてしまった。

 直感的であり、確実性が無いはずなのにだ。

「私、明日から君の高校に通える事になったよ!」

「どういうこと?今居るのがその高校なのに」

「ごめんごめん、分かりにくい事言って。とりあえずね、明日を楽しみにして笑顔でね!」

 そう伝えられた瞬間目が眩んだ。

 視界がウネウネとして、凄く気持ち悪い。

 よかった、アサは大丈夫そうだから。あれ、なんでアサは笑って・・・

 バタン。


「フフフッ」

__________________________________________

 

 夏の熱い無数の光が開けた目を焼き付ける。

 蝉の鳴き声が聞こえる。それはそれは五月蝿く。そして心地よい。

 雑音の筈だった蝉の鳴き声も今は一つのメロディーの様に感じる。


 昨日の残りのカレーを食べて火傷して、学校へと向かった。

 僕は追っている、あの人を。

 絶対に追いついてみせるさ。

 優しくて奏でる旋律で人を眠らすような。

 アサへ。

 強く僕をリズムとメロディーで起こす。

 朝を。

 

 


 

 

 

 

 



読んでくれてぃありがとぅ。

来月だします!

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