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3話 ボルバリ山脈(中)

「どんなけ焼いたらこうなるのかしら?」


 目の前には呆れた光景が広がっていた。

 それこそ前世の最後を思い出すような光景であり、思わず目を背けたくなる。その魔物の総数は数え切れず、最低でも30種を超える多様性を醸し出している。


 これはハッキリ言って厄災だね……。

 この惨劇を作ってしまったこの人、捕まれば普通に公開処刑ものだよ。

 自覚がないところが本当に困るわ。


「ビン10本分あったはずだ。全部処理する前に襲われちまったからまだ残ってるはずだ」


 考えが甘い。

 多分その程度なら魔物は気づく


「これは確実に魔物に荒らされてるわ。匂いを吸っただけよりやばい状態になってるわよ」


 どうであれ何とかするしかない。じゃないと山越え終わる前に私も襲われるだろうしね。


「じゃあ、始めますか。殲滅戦を……」


 こんなけ密集してたらアレが効くわね。雷系の広範囲殲滅魔法である『破却の雷』はこういう場面のために存在してると言っても過言ではない。


 私は身を隠しつつ魔法を構築した。流石に興奮状態の魔物の軍団には襲われたくはない。既に小規模なスタンピード発生と言ってもいい状態なのだから。そして今なら薬品の匂いに釣られているので多少近くても見つからなければ大丈夫なのだ。


 魔法の準備ができた段階で私は身を隠すのをやめて挑発するように簡単な光魔法を発動させた。

 私の読み通り魔物の大群が私の方に向かってくる。私に向かって間隔を詰めて一目散に寄ってくる。最高のタイミングで敵を蹴散らすべくしっかり引き付けた。


 時は今!


 凄まじい出力の電撃が迸り、魔物の軍勢を駆け抜け、魔物の軍勢を焦げた肉塊の集まりに変えていった。


「何なんだ!今の魔法は……!」

「まだ残ってるわ、さっさと片付けるわよ!」


 今の一撃で7割は倒せた、それでもまだ敵の数は少なくない。

 無事な魔物たちが死ぬまでは至らず麻痺して動けない魔物たちや魔物の死体でできた平原ならぬ肉原を必死に進んでくるのが見えた。


 敵の残存勢力の動きは鈍くなっている。でも敢えてまだ仕掛けない。敵がこの肉原を越えようとしてるのを焼き払うという効率の良い策を実行するからだ。

 ここで死体ごと焼いてしまえば処理にも困らない。素材を売れないのはマイナスだけど、どの道私には売却処理してる暇は無いので気にすることはない。ま、隣にいる犯人の彼からしたら勿体ないの一言だろうけど気にはしない。


「うん、十分引き付けれたわね。さぁ、これで終いよ!」


 大規模な拡散型の炎魔法を発動した。

 凄まじい勢いで広がる炎は死体も死体を乗り越えて進む敵も纏めて焼いていく、視界に映る景色が火の海に変わっていく、炎の激流が全てを焼き流していく、その光景は圧巻の一言ね。


「あぁ……全てが焼けていく……俺の荷物が……素材の山が……」


 荷物には同情の余地があるけど……素材の山を言うか?お前さんわ!?ほぼ私が倒した魔物の素材だぞ!

 ぐちゃぐちゃにして魔物にやられた様に見せておけば良かったわ。


 この阿鼻叫喚の惨劇に既に何人かが周辺に寄ってきてる。ここで殺るわけにはいかなくなってしまった。


「アンタねぇ、自分で何しでかしたか分かってるの?」

「勿体なくねぇのかよ!ほとんどはお前の手柄なのは分かってる。売ればどれだけになるか。金の勘定もできねぇのか!」

「あいにく財布の中身には困ってないの、私は急ぎ旅の途中だからあの山を丁寧に処理してる時間はないのよ。でも何とかしなければ余計な魔物を誘き寄せることになるわ。だったら焼き払って処理した方が早いわ」

「おいおい、痴話喧嘩か?」

「痴話喧嘩では無いわ」


 近くにいた人が気がついて寄ってきたわね。

 説明して終わりにしましょう。


「そもそも興奮状態の魔物の群れを見つけて襲われてたのがコイツだっただけよ。どうやらこの災害の原因はコイツにあったみたいだし」

「災害の原因?」

「腐ったポーションを雑に焼却処分してたらしいのよ。その上にこの魔物の処理が面倒で丸焼きにしたら勿体ないとか言い出したわ。救いようがないでしょ」

「それは確かに救いようが無いな。怒られて当然だ。俺たちはスタンピードの偵察の依頼を受けてここに来ている。そのバカは俺たちが連行しておこう」

「頼むわ」


 どうやらこの魔物が集まっていた件、既に冒険者ギルドに持ち込まれていたらしい。仕事が減って助かった。

 連行される予定の彼はギャーギャー喚いていたけど誰も気にはしなかった。

 話はまだ終わらない、地元の冒険者には尋ねなければならないことがある。


「この地域の冒険者の教育ってどうなってるの?講習会とか無いってコイツが言ってたんだけど」

「うん?そんなことはないぞ、開催されてるぜ。いや、待て、コイツは……」

「な、何なんだよ……」

「講習サボりめ!遂に問題起こしやがったな!」

「ん?講習サボり?」

「あぁ、コイツは講習会は来ないわ、先輩やギルド職員の言う事聞かないわで問題になってた冒険者なんだよ。これを期にコイツはライセンス剥奪されて逮捕されるだろうな」


 どうやら元から問題のある冒険者でこの地域では有名だったらしく、今回の一件で逮捕に至るそうだ。まぁ私からしたらどうでも良いけど……。


「で、残ってる魔物はどうする?」

「軽く蹴散らして終わりってところかな」

「ワッハッハ!この惨劇を作り出したお前さんならすぐだろうな!」


 うん、瞬殺だと思う。



 喋りながら火の手が収まるのを待ってる間に何度か魔物の襲撃は何度かあった。それでも火の手が収まる頃には襲撃はもうなかった。


 襲撃がなければ私がここにいる意味はない。後片付けを頼むと私は西に向かって道なき道を登っていった。

 そしてその山の頂上にはとんでもない存在がいた。この山脈がダンジョンと言われる所以をそこで知った。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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