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49話 ワルカリア討伐戦-12-

 まず間違いなく先程の魔法の犯人はコイツ、何を考えてるのやら。


「お前がさっきの魔法の使い手だな?」

「あぁ、そうだが?」

「仲間を犬死させたのは何故だ?」

「犬死?ハハッ!あれは家畜だよ!ワルカリアが飼ってる家畜さ!人間じゃあない、どんだけ殺したって問題ないんだよ!」


 コイツ狂っている、凄まじい怒りの奔流が体を駆け巡るのが分かる。コイツは危険すぎる。私の本能が反応していた。


 第一、味方のことを家畜呼ばわりしている。恐らく支配領域の領民なんだろう。それを徴兵して部隊に組み込んでいると推測できる。

 だとしてもその命を軽視して良い理由にはならない。明らかに上に立つ者の行動ではない。


「それがワルカリアの教えか」

「あぁ、ブーアクルバ様の加護を受けたわけではない連中のことなぞ考慮するに値しない」


 怒りの衝動のままに私は奴に斬り掛かった。

 奴はそれを難なく防御結界で受け止めた。


「重たい剣だな。何故か思うように力は出せんがこの程度では俺は倒せん」


 私は結界を足場に飛び退いた。飛び退いたのを見た奴は油断していたのか防御結界を解除した。


 見逃すものか!

 組み上がっていた術式を展開する。ブレイジングアースランス、炎属性と土属性の2面性を持つ攻撃魔法だ。


 目に見えぬ速さで飛んでいく燃え上がる岩石の槍が奴に突き刺さった。

 小型の防御魔法すら間に合わなかったようだ。


「グッ……ぐああぁぁぁぁ!」


 奴は突き刺さった痛みと焼かれる苦痛で顔を歪めた。


 私も今の魔法は負荷が大きかった。

 ブレイジングアースランスはそもそも軽い負荷で発動できる魔法では無いし、そんなに速く飛ばせる魔法ではない。しかし、私は奴に確実に大打撃を与えるために凄まじい速度を出せるように改良したのだ。凄まじい魔力の消費と体への負荷と引き換えにして。


 反動で腕に痺れが残る。しかし歩みを止めるわけにはいかない。コイツだけは始末しなければならない。仮に魔法を構築できるだけの余力を失っていたとしても。


「総大将をやらせはしない……!」


 ワルカリアの正規メンバーたちが破れかぶれになって突撃してきた。


 私はそれを魔法で蹴散らした。コイツらに時間をかけるわけには行かない。

 とは言え、奴が総大将なのか。理解が追いつかないこんな危険人物が防衛部隊の総大将って幾ら狂った組織でも流石に終わりだろう。ありえないにも程がある、と言いたいけど事実として奴が総大将らしい……。


「ヒッ……ヒィィィィ!」

「そんなに怯えるくらいならすぐに楽にしてア・ゲ・ル♪」


 私は奴の首を斬り落として一度陣地へと戻った。

 このクズは今まで見てきたワルカリアのメンバーの中でもトップクラスの圧を感じたけど弱かった。まぁ戦闘経験が浅すぎたんでしょう。


 陣地に戻ってから気づいたけど総大将がやられたことで敵は混乱状態に陥ってる。

 当然それを見逃す軍人はいない。ほとんどの部隊が追撃やら残党狩りを始めた。恐らくそんなに時間掛けずとも制圧は可能なはず、私は後方支援に徹しよう。これ以上目立つのはできるだけ避けたいからね。


ーーーーーーーーーー


 会戦は味方有利に進んでいった。そして日没の頃には敵はほぼ壊滅状態となった。

 因みに私はほとんど傍観してるだけだったけど何とかなった。とは言え、どうにもならないのが出てきたせいで私も2回くらい戦わざるおえなかったけどね……。


 別働隊も戦果をあげていた。敵の別働隊を奇襲して回り、敵の目論見を阻止していた。こっちは一部の部隊が今も戦いが続いてるらしい。別働隊に入ってた『血盟の炎』の皆さんは大手柄をあげたらしく、ワルカリア討伐軍の総大将であるフリードから直接表彰されたらしい。Aランクパーティーらしい活躍だ。


 そして翌日、夜も明けきらない中、ワルカリアの本拠地の完全制圧を目指して再び進軍が再開した。目的は敵の祭壇の破壊、ワルカリア関係者の始末、地域住民の保護が目的だ。


 進軍は順調すぎるほどに順調だった。こちらの予想通りワルカリアは戦力の大半をぶつけてきたらしい。抵抗らしい抵抗はほぼゼロだった。


 しかし敵の祭壇の近くは流石に違った。結界が張られていた。そして警備の精鋭たちが所々にいるのが分かる。既に私たちは監視されていると見て良い。


「おいおい、これどうすんだ?」

「ワルカリアも死に物狂いだな」


 所々でざわついてる。やはり皆気がついてるわね。ここの危険さに……。

 しかし敵の動きや部隊の動きに気を配っていた為に一人の知り合いが近づいてることに気づくことが出来なかった。


「ここからは少数精鋭で征くべきだろうな」


 その声の主はフリードだった。

 総大将がホイホイ来て大丈夫なのか?


「確かに時間は掛けてられないわね。それよりも幹部たちはどうしたの?」

「何、お主の手柄にケチつける阿呆は居らんよ。話をしてくると言って場を離れただけだ」


 うん……本部の人たちに私の正体がバレてないことを祈ろう。そうするしかない……。


「それで、市民のフリして彷徨いてるワルカリアの精鋭たちはどうするの?」

「順次別働隊を動かして葬っておる。まぁ数が多すぎて手間取ってるようだがな……」


 なるほど、つまりこの軍勢は囮、囮に釘付けの奴らを別働隊で暗殺して回ってるわけね。


 つまり、結界の中でケリを付ける少数精鋭の突撃隊と敵を狩って回っている精鋭の別働隊、そして囮の討伐軍本隊に分かれるというわけね。配置的には私は突撃隊に回されそうな感じがする。まぁそうするしか無いかな。


「それと少しここを離れるぞ、お前の耳には入れておくべき話がある」


 他人に聞かせられないような話、細心の注意を払わないとね。


 私はフリードに連れられてこの場を離れ、防音結界を展開した。


 防音結界が張られ、周囲に人がいないことを確認したフリードは座して機密情報を語りだした。


「グレンから連絡があった。ワルカリアの一部が王国南東部を脱出して他国に逃げたらしい。組織の根を絶やさぬ為の策だろうな」

「面倒ね……連中は地下深くに潜ることになるから簡単には手出しができなくなるわね」

「そうだ、見つけることすら非常に困難になる。潜る以上奴らも動き辛くなるがな」


 王国政府としては難は去って良かった、と言ったところかしら?

 とは言え、問題の奴らが根を張り続けてるわけだから問題の先送りにしかなってないので監視や諜報活動は必須だけどね。


「続報はまだ来ておらん、何かあったらまた連絡する。それと予想はしていただろうがお主は結界の中に突入する精鋭の1人に選出されている。ここまで強いと流石に無視はできないそうだ」

「分かったわ。私が征くしか無いでしょうね。あの結界の中はどうなってても驚かないですし、求められるのはそんな環境でも動ける精鋭、選出されたのは致し方ないわ」

「そう言ってもらえると助かる、頼んだぞ」


 そう言ってフリードは立った。話は終わりと言うことだ。


 私はフリードに連れられて突入する10人の勇士たちと合流した。

 ここ以外のワルカリアは既に潜伏している。この戦争もようやく終りが見えてきた。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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