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7話 友の子孫

 アリシアが図書院に良く来るようになったある日のこと。

 何時ものように資料を眺めてると…


「やあ!何をしてるんだい?」

「きゃっ!」


 突然声をかけられた。驚いて振り向いてみるとニコニコしてる初対面の同年代の貴族令息が立っていた。


「見ての通りよ、驚かさないでもらえるかしら?」

「あ、ごめん…。僕はグレン・フォン・ドリビアだ。屋敷に居ても仕方ないから父上について王宮に入ってここを使わしてもらってるんだ」

「アリシア・フォン・グレイシアよ。ドリビア子爵家ね…確か元々冒険者でグランリア大厄災で奮戦し生き残り叙爵された貴族だったわね」

「王女殿下だったのか!?」


 グレンは私が王女だと思わずどこかの貴族令嬢だと思っていたらしい。想定しておらず敬語も苦手で使っていなかったようで青ざめていた。彼はこの場で不敬罪に処されても文句も言えない。それもあってか、すぐに取り繕えないほど動揺してるわね。

 でも私は逆に文句を言われて名乗り返す度胸に感心を抱いていた。因みにドリビア家のことは知っている。何故なら初代ドリビア子爵であるフリードはかつての戦友でもあり信頼できる戦士だったからね。

 まさか戦友とその孫の性格が似てるなんて思わなかった。


「そうよ、まぁ地位には興味はないけど」

「すみません、動揺してしまいました。それにしても当家のような新しい小貴族のことをよくご存知でいただけるとは有難い限りです」

「取り繕わなくても良いわ。まぁ…ドリビア子爵家の資料は妙に印象に残ってたから覚えてただけよ」

「助かる、印象って…やっぱり大厄災とうちのじいちゃんの活躍かな?」

「ええ、そうよ。私もこの国の英雄である子爵には会えるなら会ってみたいわ」

「今の話、今度じいちゃんに話してみる」

「頼んだわ」


 気が合うことから二人で仲良く雑談をしていた。この雑談はグレンの父親のジャンが迎えに来たことで終わりを告げてしまった。


「おーい、グレン!そろそろ屋敷に帰るぞー!」

「お父さんに呼ばれてるみたいよ」

「だな、今日はありがとな!王女様」


 父親の元に向かうグレンに私は手を振り見送って勉強に戻ろうとした。だがすぐには戻れなかった。


 ジャンはその様子を見て顔を青くした。連れてきた使用人にグレンを預けると私の元に赴き頭を下げた。


「アリシア殿下、うちの息子が不躾な態度をとり申し訳ございませんでした」

「気にしてないわ、謝罪は不要よ」

「はっ!それでは失礼します」


 私は急に謝罪をしてきたジャンに呆れてた。私にとってグレンは将来の戦場でパートナーとしてやっていける友人になるかもしれない男の子である。貴重な人脈の類は確保しておきたい。しかしジャンは無駄に堅苦しいことで有名な文官だった。

 サラッとあしらった後、私は勉強に戻った。一方で王宮から出たグレンは父親に怒られていた。ここまで怒鳴り声が聞こえてくる。

 王女に対する態度が貴族としてあるまじきものであったけど許可はしていた。なので本来は問題は無いはず。でも許可があったところでジャンは理解しない様な堅物でしかない。

 本当に要らない男ね…。


ーーーーーーーーーーーーーーー


sideジャン


 その日、私は信じられないものを目にしてしまった。あれは最早ドリビア家の恥でしかない。


 仕事を終えた私は息子を回収しに行くべく王宮図書院に向かった。息子は貴族の女子とおしゃべりをしているようだった。おしゃべりを終わらせ連れ帰るために呼び出した。息子と共に振り向いた女子をよく見てみると…まさかのアリシア殿下ではないか!

 我が息子があろうことか第2王女殿下にならず者の態度をとっている。これは赦されることではない。目を離してる間にこの様な失態を晒すとは思わなかった。

 すぐにでも対処する必要があると判断した私は即座に殿下に頭を下げた。返答は「謝罪は不要」とのことだった。


 これはもう父上に対処してもらうしかない。

 ただ息子は事の重大さを理解していなかった。


「お前は一体何のつもりだ?」

「え?」

「あれが王女殿下に対する態度か?」

「それは素で良いって言われたし…」

「そういう問題ではない、あのお前の態度は不敬罪に問われても仕方ないものだぞ。いいか、我々はあくまで王家の臣下だ。勘違いするな!」

「はい…」

「父上に相談せねばな…このままではドリビアの恥になる」


 私は息子には国に仕える文官になってもらうつもりだ。貴族として家を盛り立てるには上級貴族と繋がりを得ることが大切であり、上級貴族は文官に多い。

 だがグレン本人は父上の影響で文官ではなく騎士か冒険者になりたいらしい。剣術等も父上から習っているが私は常に反対していた。文官になる以上、武に関する技術や知識は必要はないからだ。


 私は帰るなり使用人に対してグレンを部屋に戻らせるように指示し、すぐに当主である父上の下に向かった。今回の件を報告し、グレンに武術などという遊びよりも法学や礼儀作法と言った貴族に求められる能力をつけさせるべく釘を刺すためである。


「父上、只今王宮より戻りました」

「ほう、ジャンが改まってくるとは珍しいのぉ。何かあったんかね?」

「はい、グレンがアリシア殿下に不躾な態度をとってました。このままでは当家に影響がでかねません」

「影響か…誰かが見てたのか?」

「周りに人の気配はありませんでした。しかしアリシア殿下が動かれれば確実に取潰しに遭うでしょう。早急に対策をする必要があります」

「ふむ、後でグレンからも話を聞くとしよう。アリシア殿下の様子が分からぬことには動きようもない」

「何を言ってるのですか!直ぐにでも父上が陛下に弁明すべきでしょう!今ならまだ間に合います。

それと今回のような件を起こさないためにもグレンには剣術なんかより礼儀作法や法律等の貴族としての教育をするべきです!」

「早とちりが過ぎる!一度グレンより事情を尋ねる、それが先だ。クラーク、グレンを呼んでこい」

「畏まりました、旦那様」

「ジャン、いいか、時として情報の質は命に直結する。故に如何なる情報も出来る限りの精査が必要なのだ。命に関わると言われても武の道に進まなんだお主には実感は湧かんかもしれぬがな。いや、精度の低い情報を基に動けば貴族家として不利になると言えばお前でもわかるだろう。今回は特に精査が必要だ。精査してから儂から陛下に直接話を持っていけば良い」

「今回の件は精査するまでも無いでしょう!」

「愚か者が!一歩誤れば大惨事だからこそ精査せねばならぬのだ、精査せぬはただの博打、そんなことも分からぬか!お前も一度下がれ、ここからはワシが仕切る」

「しかし…」

「黙れ!当主としての命令だ」

「うっ…」


 父上は何故分からない、逸早く動かねば危ういと言うのに…。

 私は絶望しつつ父上の部屋を出た


「はぁ…このままジャンに当主の地位を渡して大丈夫だろうか…」


 父上の呟きが扉越しに聞こえてきた。もう父上は耄碌している。もう家を任せられないのかもしれない。如何に早く隠居させるかを私は考えていた。

 視点固定を主とする改稿を実施しました。

 また誤字等あれば連絡お願いします。


 良ければブックマーク、評価、感想、レビュー等お願いします。

 これからも理を越える剣姫を宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
Xから読みに来ましたーʕ•ᴥ•ʔ 設定深いっすね〜!!参考になります! 今後も読んでいきまーす!
[良い点] 快活そうなグレンは好印象ですね。 アンもといアリシアと良い友達になって欲しいです♪
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