35話 血盟の炎
迷宮に潜って2時間足らずで6階層に到達した。1階層から5階層までは極めて早く突破できた。流石は高ランクパーティー『血盟の炎』だと感心させられた。無論私も余裕でついていけた。
「早くも6階層か。これまでで最速だな。ジャンヌ殿の実力、私の見立てでは最低でもAランクに匹敵するな、いやSランクと言われても納得できる。素の力もそうだが技術面も隙がない、強すぎる……」
実際に一緒に戦ったことでローラがドン引きしていた。他のメンバーも同調している。
確かに私は強い、でもブランクがあるし体もしっかり出来上がってるわけではない。なので彼等が思ってる程では無いとは思う。まぁ魔法を使うようになったことで攻撃力は凄まじいことになってるけどね……。
その私から見ても彼等は非常に強い。
前世を含めても彼等程の実力のあるパーティーは非常に少ない。彼等の戦術は今の私からしても学ぶことは少なくない。半分無理矢理だったところはあるけれどそれでも一緒に迷宮に潜るのは正解だった。
驚くべきは彼等は物理的な武器しか持たず、魔法的リソースはほぼゼロなのにこの迷宮を苦にしていないことだ。そうなるとゴースト属性はどうしてるのか?と言う疑問は必然的に湧き上がる。
どんなカラクリかと思ったら魔剣や護符を使っていたらしい。魔剣は魔力をマトモに使えないと生命力を吸われるので使用し続けるのは辛いはずなんだけどね。実は生命力は少しでも持ってかれるとかなりキツい、それでも動けるのだから大したものだと感心させられた。
そう言えば街では護符の類が安く売られてたっけ?確かにこのダンジョンと付き合うなら確かに必須ね。これは多分だけど量産効果で安くなったんだわ。
「新しい剣の使い勝手はどうだ?」
ガルドンから武器に関して質問が来た。彼は私が今日迷宮に来た理由を知っているから当然といえば当然だった。
「軽く使ってみた感じは悪くはないわ。これなら実戦でも問題なさそうね。次、魔物の群が出てきたら単騎で行っても良い?」
「おいおい、単騎かよ。流石に危なくないか?」
「いや、そろそろ慣らしておきたいのよ。基本ソロだから深い階層でも生き残るには単騎で敵を蹴散らす術がいるのよ。魔法を使えばすぐだけど魔法ばかりに頼るわけにも行かないわ」
4人とも私の考えに溜息をついていた。解せぬわね……。
「単騎での突撃訓練をしたいのであれば何故今まで教えてくれなかったのだ?」
4人の中で最も無口な男、ロデウスが質問をしてきた。彼は基本無口だけど、その理由は無駄話が嫌いだからというものだった。なので臨時で入った私とは最低限のやり取りしかしないので、どうしても疎遠になってしまう。
因みに彼の質問は間違っていない、普通はソロでの戦い方を研究する場合、魔物の弱い1〜3階層でまず粗を探すべきだとされている。
私のやろうとしてることは正直に言えば異端、いや無謀と言って良い程の行いなのだ。
でも私には前世から積み上げてきた圧倒的経験値があるから他の人よりは深いところでもやれる。故に武器の試しの為に5階層まで潜るつもりでいたのだから。しかも今回は『血盟の炎』と共に潜っている、なので多少の無茶は問題はないと判断してたから予定より少し深いところでソロでの戦闘を試すことにしたのだ。
「元々は5階層でやるつもりだったんです。でもこの状況なら多少の無茶は許容できる、そう判断したので6階層で試すことにしたのです」
「成程、俺達は万が一の保険になることで借りを返せと、面白いことを考える」
どうやらリーダーのガルドンは理解してくれたようだ。これならすぐに話は纏まりそうね。この理解の早さも彼がAランクたる所以なんじゃないかしら?
「理解が早くて助かるわ」
「冗談だと思ったら本気だった……」
「ヤッタノ、お前は間抜けか……」
ヤッタノは本当にダメダメね……。今度はローラに怒られてるし……。
でも許可は貰えたわね。これで思う存分この剣を慣らすことができる。
ーーーーーーーーーー
結局6階層は事実上私一人の力で抜けた。
流石にそこまで剣を使い続ければ新しい剣でもすぐに慣れることができる。お試しはもうおしまいで大丈夫そうね。
「お?満足そうな顔してるじゃないか!良い感じか?」
「おかげさまで!」
「そりゃあ良かった!」
ガルドンも胸を撫で下ろしてる感じだった。私が言うのもアレだけど、まぁ肝は冷やしたでしょうね……。女の子が単独でドンドン魔物を蹴散らして進んでいくのだから……。
6階層まで来るとアンドット系の魔物は割合的には大きく減り、逆に獣系の魔物が非常に増えてきた。これは剣のお試しをする環境としては戦いやすくて非常に良い環境だった。群れを何度か撃破してきたことで対集団戦も問題なくやれるようになった。
非常に有意義な訓練をさせてもらえたことを感謝しないといけないわね。
この後は7階層以後は足並みを揃えて15階層まで潜った。パーティーの今日の目的地が15階層であり、この先は先日の疲れが残ってるので今回は断念していた。
因みに『血盟の炎』は最高28階層まで潜ったことがあるらしい。28階層の敵の強さを見て攻略はそこで断念したらしい。私がいればそこまで余裕でいけそうと言う意見もあったが、今回はリーダーのガルドンがストップをかけてくれた。
ーーーーーーーーーー
攻略を終え引き返し、ギルドの迷宮支部で戦利品を売り捌いて、お金を分配しこの日は解散となった。私にとっても彼らにとっても過去最高のとんでもない収益になった。
何しろ私だけじゃなくてパーティーでも複数のマジックバッグを持っているし、手当たり次第に戦って戦利品を集めてマジックバッグバック一杯にしたのも大きいわね。
でも結局浅い階層の戦利品は途中で捨ててこれなので、やはり深い階層の素材は高く売れるのでお金は貯まりやすいわね。
言うまでもないけど、私は最後の最後まで臨時じゃなくて普通に加入しないかと誘われ続けた。
まぁ実力者を仲間にしておきたいのは彼らも同じだからね。
いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。
良ければブックマーク、評価、感想、レビュー等お願いします。




