表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/184

30話 依頼の休日

 朝一番、私は衛兵の詰所から呼び出しの命令を受けた。

 呼び出した理由は昨日のことらしい。面倒だけど行くしかないわね…。


 詰め所に向かうと奥に案内された。案内された部屋にはガタイの良い男性がいた。


「私はこの街の衛兵隊の隊長をしているルッスマだ。バズテル商会のキャラバン関係者や昨夜門番していた衛兵から話は聞いている。今回は見逃すが魔法で柵を乗り越える行為はやめろ」

「はい……」


 まぁアレに関してはやってることが普通に無法者のソレなので返す言葉もない。と言うか衛兵隊長御自ら対応するのはエライ、普通なら部下に投げておしまいの人が多いからね。

 しかし私にはこの件が本来の要件だとは思えなかった。何かある。

 そしてその予想は当たっていた。


「まぁお前が柵を飛び越えたことに関しての話は終わりだ」


 そしてこう続けた。


「本題に移ろう、お前はマウントゴブリンの群れの長を追撃して失敗したと聞いた。細部を教えてもらいたい。何、あの規模の群れが発生したということは相当な規模の拠点があるはずだ。最悪の場合、国レベルで対処する必要がある」


 なるほど、確かにその通りだ。それは私も懸念していた話だった。だから追跡をかけたのだ。

 まぁかなり早い段階で仲間割れを起こして再起不能になっていたが……。


「私もその可能性を考えていました。なので追跡をしました。結果はご存知の通り失敗です」


 そう前振りを置いて続けた。ルッスマは頷いている。それも予想通りとばかりに。


「群れの長と思われる個体を発見できたのは偶然です。その個体の指示が全体に広められている雰囲気を感じました。なので奴らが敗走しだしたところで私は追跡を開始して拠点を特定するつもりでいました」

「ほう、それは運が良かったな。続けろ」

「その長は自軍の精鋭を集めて脱出するつもりだったようです。そして長が逃げ出したことで群れの軍勢が完全に瓦解してしまい、ゴブリンたちは四方八方に散り散りに逃亡を始めました。と、ここまでは誰でも想定しうる話なのですが、あろうことか護衛が長を殺してしまいましてそのまま大規模な同士討ちに発展しました。なのでこれ以上の追跡は効果が期待できないと判断し、殲滅しました」


 あの同士討ちをしていた奴らの中に群れの本拠を知らない個体がいてもおかしくはなかった。どう見てもクーデターにしてはお粗末すぎる、アレは謂わば『傭兵』に近い存在の可能性もある。

 判断が難しい以上は殲滅して撤退は間違いとは言えないはず……彼はどう判断するだろうか?


「仲間割れをして自滅か……外部の個体か?」

「可能性は否定できません」

「分かった、国に報告は上げよう。情報提供には感謝する」


 その言葉とともに私は解放された。


 それにしても魔物が社会性を得て、勢力を拡大しているならその脅威度は計り知れない。

 早急に叩く必要があるので、多分大規模な掃討作戦が行われるだろう。そうなると緊急依頼が来るんだろうなぁ……。あぁ面倒くさい、あの手の緊急依頼好きじゃないんだよねぇ……。

 しかも今回は社会を維持できるほどの知性を持ってるので最早戦争と言うべきものになる可能性も否定はできない。しかもそういうパターンの場合は冒険者は正規軍の囮とか、割に合わないような使われ方することも多いため、生存率も低くなりやすいのよね……。


「はぁ……この先どうなっちゃうんだろう……」


 思わず溜息と独り言が出てしまった。

 余計な依頼は身の束縛を齎し、使命の為の行動に影響を及ぼしかねないし、何よりも自由が奪われる。冒険者の役目と言えばそれまでだけど、私はそれを認めたくない。王族の責務という名の枷によって自由が失われていたのが嫌だったし、それも出奔した理由の1つなのだから。


 商会のキャラバンが用意してくれた宿に戻ると今回の依頼を受けた冒険者たちが既に打ち上げを始めていた。まさかの朝から!?


「おー、帰ってきたか!さぁ飲むぞ!」

「嬢ちゃんを待ってたぜ!」

「宴だ!宴だ!ヒャッヒャッヒャッ!」


 歓迎してるのは分かるんだけど……既に酔っ払って壊れてる人もいるし大丈夫なのだろうか……なんかすごく不安になってきたぞ……。


「朝から宴ですか?」

「そうだ!昨日は飲めなかったからなぁ!」

「良いんだ、細けえことぁ良いんだよ!」


 あー、これは駄目なヤツだ……。絶対に碌な事にならないわね……。今すぐにでも逃げ出したくなってきたわ。

 と言うか、女性陣、ローラしかいない時点でヤバい、彼女はパーティーの繋がりだから仕方無かっただけなのかもしれないわね……。

 よし、逃げよう、全力で!


「あ、待て!嬢ちゃん!」

「ジャンヌちゃ〜ん」


 振り返ることなく私は逃げる。捕まったら酔っ払いの相手させられるから絶対に捕まるわけには行かない。

 取り敢えず他の女性陣と合流しておきたい、こういう時は仲間がいた方が安全だからね。


 酔っ払いを撒いて少し歩いたところで他の女性陣と合流できた。因みに酔っ払いを撒くのは楽だった。酔ってて思うように体が動かなかったらしい。


「あれ?ジャンヌちゃん?1人でどうしたの?」


 良かったぁ〜、ツインラインの2人と会えたのは大きいわ。


「酔っ払いから逃げてきたわ」

「あぁ……アレね……」

「逃げるのが正解よ」


 私と同じ事を考えていたらしい。


 そのまま3人で街をブラブラしたり温泉で体を癒したりして休日を過ごした。


 因みに男性陣はそのまま夜まで飲んていたらしい。アホなのかな?


 翌日男性陣からブーイングの嵐だったけどローラを除く女性陣総出で「酔っ払いの相手なんかしてられるか!」と叩きつけてやった。

 ローラはお酒が好きらしく混ざってたらしいけど、「朝から飲むんじゃなかった」と皆に言っていた。自業自得でしかないわそれ……

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。


連絡です。

来週から基本週3更新にします。


更新日:月、水、金


読みます企画抜きにしても仕事の都合で執筆時間が取りにくくなっており、今のペースを続けてるのは厳しいと言う判断になります。ご理解していただければ幸いです。


良ければブックマーク、評価、感想、レビュー等お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ