12話 救護
「おい!大丈夫か!」
さっきの決闘で心身共に疲労してしまい、ぐったりしてた私を一人の冒険者が発見した。
大丈夫と言えば大丈夫だけど、正直大丈夫じゃないよね…。
「こ、これは…?君がやったのか?」
「うん、何とかワルカリアのこの街の根拠地は潰したよ。この有様だけど…」
「幼いのに凄いな…。お前が首を斬り落としたそこの男はフディーサランとか言ってな。この街のワルカリアの長だったやつだ。手のつけようのないほどの実力者で有名だったんだ。ワルカリアの駆逐を妨げてきた最大要因が倒れた、つまりこの街は君のおかげでワルカリアの悪行から解放されたってことさ」
「まぁ成行で決闘したんだけどね…」
「おい!ダベン!そこで何喋って……っておい!そこの嬢ちゃんどうしたんだ?」
どうやら彼はダベンと言うらしい。彼の知り合いが来たみたいだった。
「この娘がこの街のワルカリアの長をやってくれたんだよ!力尽きてこの様だって本人言ってるけどな」
「何?こんな子供が……。いや、その嬢ちゃんは何処かで見覚えが……思い出した!あのギルドでワルカリアの3人組を斬り伏せたジャンヌとか言う名前の子供の冒険者だ!確かCランクだったな。どう考えてもアレを倒した時点でCランクの領域に収まってないけどな!ガッハッハ!」
「アンタ誰?」
「おう!俺は『パステルの獣』というパーティーのリーダーやってるBランクのグラットだ!宜しくな、ちっこい英雄ちゃん!」
「その呼び方やめてくれませんか?」
「ガッハッハ!分かった分かった!」
この人…真昼間から酔っ払ってる…?悪い人では無さそうだけど…パーティーリーダーがこんなので良いのかな?
「スマンな…ジャンヌとか言ったか…親分…こんな時間に早くも酒飲んでんだよ…。まぁ騒ぎを聞き付けてパーティーで状況を確認しに来たんだけどな。一応親分も切替えれてたから、ここに来るまでは一応マトモだったんだぜ…」
「つまり緊張の紐が何故か解けてしまったと言いたいのね…」
「そうだな」
本当に大丈夫なのかしら?
昼から酔っ払ってるって…。
って、今の私が言っては駄目ね…。
戦闘不能なのだから…。
「取り敢えずギルドまで運んでやる。こんなところで寝っ転がってたら体に悪いぞ」
「頼めるかしら?」
「あぁ、問題はねぇよ。あのクソ野郎をぶっ飛ばしてくれたんだからな!」
ありがたい申出だった。ありがたく受けよう。
そして何処からか持ってきた担架に私が乗せられたその時、もう一人の声が聞こえた。
「おーい!親分!見たことない形状の剣が落ちてたんだけど、これなんですか?」
「わからん。と言うかお前何処行ってたんだ?」
「この辺、不審物や怪我人いないか確認して回ってました」
「おう、そうか…」
「だから真昼間から飲んじゃ駄目なんですよ…親分…。その子はもしかしてここの爆発に巻き込まれた子供ですか?」
「いや、フディーサランとか言うクソ野郎をぶっ飛ばした英雄だよ。そう、昨日ギルドで手柄を立てたジャンヌって名前の冒険者だ。スマンな、嬢ちゃん、コイツの名はドールンと言う、うちのメンバーだ」
ドールンね。なんというか『パステルの獣』って自由人多いわね。
「ドールンさん、ちょっとその剣見せてもらっても良い?爆発で吹き飛ばされたせいで私の剣が一本飛ばされちゃってね…。行方がわからなくなってたのよ…」
「これだけど…」
「ありがとう、それ、私のだから…見つけてくれたのね」
「お、おう…それは良かったな…」
グラットの言う通り本当に無事に見つかって良かった。
問題は鞘に入るのか…。
「ドールン、抜身じゃ危ないから鞘か鞘の代わりになるもの探しとけ」
「オッス!」
「いや、鞘ならあるわよ。腰に下げている鞘はその剣の鞘だから」
ダベンが首を傾げた。
「近くの地面に転がってた剣の鞘じゃないのか?」
「違うわよ。近くに別の鞘無かったかしら?」
「ん?これか?これがジャンヌちゃんの近くにあった剣の鞘かな?」
「そうだよ」
「お?本当にピッタシだ!良い腕の鍛冶師に会えたんだな」
「本当にそうね」
本当にヤツスナは名匠よね。転生前を含めると先代からお世話になってるけど、あの鍛冶屋は最高だわ。一応言っておこう。
「私の保有してる刀と呼ばれる曲剣は全て鍛冶屋シュウソウの2代目のヤツスナに打ってもらった業物よ」
「は!?鍛冶屋シュウソウ!?」
「なんで嬢ちゃんがそんなもん持ってるんだ?」
「俺も欲しいなぁ…」
どうやら3人とも知っていたらしい。凄い知名度ね…。
「いいや、取り敢えず鞘に入るか確認しよう。ちょっと腰の鞘借りるよ」
そう言ってドールンは腰に下げてる鞘を取り外して確認を始めた。
「吹き飛ばされて曲がったか…残念だけど流石に入らねぇわ…」
やっぱり駄目だったか…ハァ…
「仕方ないわね…。この街の鍛冶屋に鞘だけ依頼するしかないわね」
「ギルドを通じて鍛冶屋に送っておく。この街一番の鍛冶屋たる紅蓮堂にな」
グラットはどうやら世話焼きらしい。本当に助かるわ。
「そういや、嬢ちゃんはどこの宿屋に泊まってんだ?」
「迷宮の拠所よ」
「おぉ!そうだったか、俺から口利きしとくわ。安く泊まれるな」
「と言っても明日から依頼で一旦この街を離れるけどね」
「そうだったな!ガッハッハ!まぁでも次使う時も安くしてくれるだろうよ!」
「本当に何から何まで助かるわ。ありがとう」
「気にすんな」
こうして楽しく雑談しながらギルドに運ばれていった。
当然そんな状態でギルドに行けば…
「グラットさん!?何があったんですか?」
受付嬢が飛んできた。周りの冒険者もざわついている。
「おう、この嬢ちゃんがフディーサランのクソ野郎を仕留めてくれた。だが荷が重かったらしくてな…見ての通りだ…。あまり身動きがとれねぇ状況だな。とりあえず手当頼んで良いか?」
「わ、分かりました救護所に運んでください」
救護所に運ばれた私は簡易的な治療を受けた上で事情聴取を受けた。結局宿に戻ることができたのは夜になってからだった。
いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。
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