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7話 パステル市の冒険者ギルド(下)

 ギルド内は騒然としていた。

 敵対する冒険者を始末しに来たワルカリアのメンバーと敵対する少女が向き合っていたからだ。

 両者とも獲物を抜いてるともなれば緊張は限界を超える。


「に、逃げろ!」

「死にたくねぇ!」

「巻き込まれてたまるかよ!お前も見てないで逃げろ!」


 ほとんどの者は逃げていく。残ったのは身を守りきれる自信のある猛者とただの馬鹿しかいなくなった。

 私はその様な状況なぞお構いなしに相手と対峙していた。負けるつもりは毛頭ない、こんな奴らを生かしておいても価値は無い。いっその事ここで葬ってしまった方が社会の為になる。


「この小娘がぁ!そんなに死にてぇなら殺してやるぞ!」

「お前等はここで始末する。生きる価値もないマフィアの構成員に慈悲は無用よ」


 そうして私は3人のリーダーに斬り掛かった。相手は剣で防御を試みた。

 しかしその防御は意味を為さなかった。剣は圧し折られ斬られてしまったからだ。

 私は怒っていた、躊躇いはなかった、出し惜しみはしなかった。魔力に感情を込め斬撃強化の魔法とともに刀を振り抜いた。その破壊力は尋常なものではない。

 一撃で絶命したリーダーを見て残りの2人は一瞬怯んだものの、すぐに私に斬りかかってきた。挟み撃ちになるのを巧く利用している。完全には避け損ね、左腕を少し斬られた。


「今のを避けたか、班頭を斬ったのを含めて見事な腕前だがもう容赦はしない。その左腕では苦しかろう、すぐに楽にしてやる」

「やれるものならやってみろ」


 と威勢の良いことを言ったものの左腕が斬られてるのは事実、治癒魔法使おうにもそれが隙になる。片手が自由に使えない状態で2対1はかなり不利だった。

 でもやりようはある。リーネちゃんに魔法の同時発動を教えてもらったお陰で1つの策を行使できる。本当に技術は身を助けるわね。


「おいっ!正気か!勝てないからと言って…!」


 私は敢えて周りに被害を与える可能性のある爆炎球を発動した。ワルカリアのメンバーたちも流石に顔を引き攣らせ及び腰になっていた。だけどこれは囮、本命は隠して構築した氷散弾、敵に傷を与えつつ爆炎球と反応させて大量の水蒸気で煙幕を敷く作戦だ。

 ここで一手、追加の精神的追討ちを放ってやった。

 殺気と共にニヤリと笑ってやった。この状態では完全に恐怖しか感じないはずだ。


「ヒィィ…」

「し、死にたくねぇ!」

「あら、威勢よかった割には大したことないわね」


 私は爆炎球と氷散弾を同時に放った。性質の非常に異なる2つの魔法がぶつかったことで爆発と共に凄まじい水蒸気が発生し周囲を白く染め上げた。


「うわっ!」

「ど、どこなんだ?」


 思った以上に効果があったわね。これなら一気に決められそうだ。


 私は煙幕の中で治癒魔法を使い一気に腕を治すとすかさず突撃を仕掛けた。


 いきなり姿を現した私を見て1人が腰を抜かして倒れた。

 なので倒れなかった方に襲いかかった。

 振られた刀は狙い通りに首に迫り、切断した。これで残り1人、私は腰を抜かして生き残った最後の1人を上から見下した。


「た、助けてくれ!」

「犯罪組織の虫を助けやら慈悲やらをくれてやる必要が何処にあるのかしら?」


 最後の一人も一撃で絶命させた。慈悲はないとは言ったが私も悪魔では無い、痛みで苦しませないよう一撃で絶命させるのは慈悲である。


「終わったわね、この死体は外に棄てよっと」


 ワルカリアが負けたのを見て少ない見物していた人たちが集まりだした、


「おいおい、本当に勝っちまったよ」

「ご苦労さん!汚物の処理は俺達に任せときな!希望があれば沿わんこともない」

「じゃあちょっとだけ悪戯書きだけさせてください!」

「え?」

「奴等の面目を潰して住民に希望をもたせるんですよ!」

「流石に却下、危な過ぎる。いくら嬢ちゃんが強くても大人数には勝てんだろ」

「あぁ、悪戯書きなんぞしなくともこれを放置すれば奴等の面目は既に丸潰れさ」


 まぁ良いか、徹底的に奴等を侮辱してやりたいところだったけどこれで十分だと地元の人たちが言うのだからここ迄にしておこう。


「あ、お姉さん!手続き終わりましたか?」


 ちょうどいいタイミングでギルドの裏手の事務室から対応してくれた受付嬢が出てきた。彼女は答えるより先に状況を見て固まっていた。

 首を振って無理矢理飲み込んだらしく質問をしてきた。


「これは一体…?」

「反乱阻止法に基づいてぶっ殺しました!奴等が先に剣を抜いたので正当防衛です!」

「そ、そうなの…」


 呆れた顔をしていた。

 気持ちはわからなくはない。


 冒険者とは言え、ただの少女がマフィアのメンバー3人を相手に勝ってしまったのだから引かれるのは仕方無い。

 だけど重要なのはそこでは無い。


「それより依頼受注の手続きは?」

「終わってます。ど、どうぞ…」

「はーい、ありがとう!」


 依頼受注書を見た青年が呆れ顔でこう言った。


「それを受けたのなら襲われるのも仕方無い。ワルカリアとしては何が何でも荷を奪いたいだろうしな」


 うん、どうやら問題は根深いらしい…。

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