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38話 ミハイルとの会談

 お茶会の翌日は大騒ぎだった。

 私のやったことは強烈な不祥事だった。

 お父様ですら驚いていた。

 時が経てば経つほど上級貴族たちにも徐々に話が広がり、軒並み混乱していた。私の発言の意図がサッパリ分からないためだった。そうなったことで10日足らずで私の王太子就任に疑問を呈する声も出てきて立太子は先延ばしになった。これは私の望み通りの展開だった。

 因みにクズ野郎ことマイラスーンは正式に廃嫡・王位継承権剥奪となり王族の籍を抜かれ爵位も与えられないことが決まった。そして決まるなりすぐさま公表された。彼とつるんでいた若手貴族は軒並み白い目で見られていた。当然アレに付いていくだけあってゴミばっかだから「ザマァ見ろ!」って感じだけどね。


 そんな情勢の中、大神官ミハイルが私の執務室を訪れていた。要件はほぼ確実にグレンに関することでしょう。


「何故ドリビア家のグレン殿が殿下の秘密を知っておられるのですか?」

「貴方の疑問は尤もね。前にも言ったけど知る人が多くなれば危険は増す。グレンに関しては協力を仰ぐ予定だったフリードが無理矢理巻き込んでしまった為に彼を排除することは出来なかったわ。確かに協力者は何人かはいた方が良いのは事実だし彼が手綱を握るなら安心できるわ」

「ドリビア子爵ですか…。ある意味、あの『迷宮の剣聖』らしい動き方ですな…。大方『貴族たる者、王族の闇から目を逸らすな』とでも言って孫を巻き込んだのでしょうね。優秀な冒険者であり無駄に真面目な御方でしたから貴族になられた今は貴族としての在り方を考えておられましょう」

「その通りだったわ。流石にお父様にバラされるのは避けなきゃいけなかったからね…。脅された結果、他の冒険者2人とグレンを巻き込む形になってしまったわ。あれは隙を見せた私の失策ね」


 あれは隙を見せたが為にお父様にバラすとか脅迫されてしまった。だからこちらも逃げられなくなっちゃったんだよね。


「なるほど…ドリビア子爵に協力を取り付けること自体は成功、と見做して良いでしょう。問題は巻き込まれた冒険者達がどこまで信用できるかですが…」

「マリンは口が固いわ。彼女は安心できるけどツバキは軽そうね。マリンには『白い徒花』のリーダーとしてメンバーのツバキの手綱をしっかり握ってもらわないと困るわね。後で釘を刺しておく必要がありそうだわ」

「『白い徒花』ですか、確か4人パーティーだった覚えがありますが…」

「残りの2人はこちらから脅したら逃げたわ。だから2人は私の秘密を知らないわ。知る人数は極力少ないほうが良い事には変わりないからね」


ミハイルは私の説明で納得した。どこで白い徒花を知ったかを聞いたら熱心な信者の冒険者から聞いたらしい。若くてBランク冒険者と言う将来有望な美人4人組は確かに目立つ。それなりに名の知れたパーティーなのは間違いないわね。言寄るゴロツキは沢山いそうだけど…。


 先日の一件以外にも話すべきことは多かった。

 いつ出奔するのか、出奔後の名前は何にするのか、貴族社会の情勢、話すべきことが余りにも多過ぎた。特にいつ出奔するのかは大きな問題になった。そう、私の王太子就任問題がその原因だった。


「マイラスーンは確かに無能でした。廃嫡はこの国にとっては良いことでありましょう。ただ幾つか懸念もあります。大丈夫なのでしょうか?」

「そうね…アイツ自身の問題として、国としての問題は愚かで自己中心的なアイツが逆上しかねないこと、そしてそれを担ぎ出す貴族が出ないとは限らないこと」

「そして後継者の問題としてローラン殿下が現時点で幼すぎること、そして残歴転生の使命を負う殿下が囚われかけていることにございますな」


 本当にローランがまだ幼すぎるのがネックなのよね…。しかし王国の情勢は待ってはくれない、だから私に白羽の矢が立ってしまった。

 あのクズ野郎ことマイラスーンの越権行為についてはトスリロテ侯爵家が同意してなかったことから完全な成立とは言えずギリギリ首の皮一枚繋がった形だった。トスリロテ侯爵家が同意してたらトスリロテ侯爵家共々反逆者として処刑されたはずだった。死んでくれた方が楽だと思うんだけどなぁ…。実際今でも処刑すべきと言う意見は存在するわけだし。

 因みに姉は友好国の王太子と婚約してるため、王位継承権は無いに等しかった。


「ほんっと、傍迷惑よねぇ…。アイツがマトモなら私は私の道に向かって進むだけだったのに…。まぁ私の王太子就任は消える可能性があるわ。先日のお茶会での不祥事で貴族社会は混乱してるわ。後はお父様とマンノルディー公爵夫妻を黙らせられれば良いんだけどねぇ…」

「陛下はともかくあの堅物ですか…説得する術はあるのでしょうか?」

「無いわね。それこそ徹底的に問題を起こしてやるとか?」

「それは流石に裁かれるかと」


 まったくその通りである。私とて罪人として裁かれたくはない。裁かれたら裁かれたで動き辛くなるからね。裁かれず王位継承権を破棄できたら最良だけど現状それは難しい。


「今の私の暫定方針として最大3年はここにいても良いと考えてるわ。流石に育ててもらった恩はあるからね。最低限ローランが引き継ぐ準備くらいはしても良いと考えてるわ。だけど今の情勢でも無理矢理立太子強行なら10歳になったらすぐにでも出奔してやるつもりよ」

「来年は忙しくなりそうですね…一応お伺いしますが他に残歴転生を知る者はいますか?」

「鍛冶屋ソウシュウ店長ヤツスナには話したわ。特殊な依頼をする為にね」

「彼なら大丈夫でしょう。あれは秘密を守れる人物ですから」


 流石はヤツスナだった。頑固だから秘密を守るのは得意だろうしね。その他の話は特に問題なく情報共有ができた。


「本日はありがとうございました。アリシア殿下に神の祝福があらんことを」

「これからもよろしく頼むわ」


 こうしてミハイルとの会談は終わった。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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