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33話 真実

「覚悟はできたかしら?」

「覚悟?なんのことでございましょう?」


 皆疑問に思っているようだった。


「知ればもう後戻りはできない、知れば確実に厄介事に巻き込まれるからよ。フリードは逃すつもりはない、だけどそれ以外の者たちには選択の自由を与えるわ。修羅の道を歩むことになろうと戦い抜く覚悟のある者のみ残りなさい」

「え?」

「どういうこと?」


 私の宣告に動揺が広がった。

 法螺でもなんでもない、残歴転生を知るということは世界の危機を知ることになる。それは即ち修羅の道を歩むと言うこと、だから妥協はしない。

 ただ、フリードだけは覚悟を固めきったようだった。流石はSランクまで上り詰めた男だ。肝が座りきっている。


「グレン、お前も逃げることは赦さん。お前は貴族の生まれだ。貴族たる者、王族の支えでなければならない。仮に冒険者の道を選ぼうとそれは捨ててはならない。ワシは平民生まれだが叙爵の際にそれを誓った。産まれながらの貴族であるお前が逃げるなど赦すつもりはない」

「え…?じいちゃん…」

「貴族とはそういう存在だ。腹をくくれ!」

「う、うん。分かった」

「ならば良し!『白い徒花』の諸君には選択の余地が与えられている。逃げるも良し、背負うも良し、お主等の個々の判断に委ねる。お主等の決断は待つ」


 あ、フリードはグレンに道を強制したわね。彼も本当に貴族として気負い過ぎだわ…。


「私も覚悟を決めたわ。冒険者だもん。それくらいのリスクで逃げるくらいなら、こんな危険な稼業なんてやらないわ。それに関わってしまった人の闇を放置して逃げ回るような真似をしたくないしね」


 マリンも流石にパーティーのリーダーをやるだけのことはある。彼女も腹を決めたようだった。


「人生何があるか分からないから楽しいんじゃん!ここで逃げる意味なんて無いよ」


 ツバキはお気楽と言うか…大丈夫かな…?そんな覚悟で…

 まぁ選択した以上は逃さないけどね。引き摺ってでもその道についていかせる。


 結局リンネとリーネはビビってしまい知るのを断った。なので話をするために少しだけ離れてもらった。


「さて、これから話すことは他言無用、広めれば何が起こるか分かったものじゃないことを理解しなさい」


 一同は全員頷いた。


「まず初めに訊くけど残歴転生という言葉は知っているかしら?」

「知らないわ〜」

「なんか神官がそんなこと話してたわね。内容は知らないけど」

「あれは神官の出鱈目に過ぎん、信ずるに値しない話だろう。過去に例があるなら知りたいぐらいのものだ」


 フリードは話を続けようとして止めた。何かに気がついたようだ。


「まさかと思いますが殿下自身がその例と仰せになるのですか?」

「正解よ」

「まさか、王族ともあろう者があんな出鱈目を肯定しようとはな」

「でもじいちゃん、トーイス流って絶滅したとも言われてるんだよね。じゃあ何故アリシア殿下はそれを知っているの?そんな剣術を騎士たちが知ってるなんて思えないんだけど」

「成る程、グレンの言うことも一理あるか」

「グレンの推論は正しいわ。単刀直入に言いましょうか、『狂剣の花』は知っているかしら?」

「『狂剣の花』とはなんですか?」

「グレン…お前は…」


 どうやらグレンは私のかつての異名を知らなかったらしい。フリードが呆れてる…。


「ドラゴンと相討ちになったと言われているAランク冒険者のことですよね。やたら強い女性冒険者として聞いたことがあります。確か名前はアンと呼ばれてたような…」

「合っておる。Sランクになることを期待され、実際なるだろうと言われていた実力者だった。ワシも実際に彼女と面識があり、共闘したことも多々あったな。懐かしいものよ」

「そうね、懐かしいわね。当時のフリードは実力者として名を知られていながら学科の点が悪くてAランクに上がれてなかったものね」


 私の嫌味にフリードが顔を顰めた。

 まぁ実際、彼からしたら超嫌な思い出なのは確かだろう。そして、何より不気味に思ったはずだ。

 本来ただの王女が知るはずのない情報を語り、尚且つ懐かしいと言う、普通なら狂人か何者かが成り代わってると考えるだろう。

 しかし…


「まさかな…、確かに彼女はトーイス流の使い手だった。本当に残歴転生したと申すのか?」

「そうよ、前世の私はドラゴンのブレスをその身に受け消え散った。まさか最後の抵抗であの投げた刀があのドラゴンの致命傷となったなんて思いもしなかったけどね」

「えっ!?」


 みんなの顔に驚きが出ていた。


「ワシと直接話したいと申しておったのはそれを明かす為か…」

「それと協力を依頼する為ね。尤も予定外の人たちまで巻き込む形になったけど」

「待って、残歴転生なら使命を負ってるはずでしょ!その使命って一体…?」

「気が早すぎるわ、落ち着きなさい。説明はするから」


 みんなが落ち着いたところで私は重々しく事を告げた。


「間もなく悪の化身、悪の権化とも言える邪なる者が蘇るわ」

「神話のあれ、実在するの?」

「残歴転生が本当ならあり得るわね」

「使命とはそれの討伐だな。であれば老いぼれでは体が持つ保証はないぞ」

「邪なる者ってなんだ?悪の化身と言うのは分かったけどどう倒すんだ?」

「グレンの疑問は私も持っているわ。悔しいけど情報がなさすぎる。何をすれば勝てるかすら解らない、1つ言えるのは現れるまで待つのは愚策と言うこと、だから王位継承権なんて邪魔でしかない」


 王位継承権の放棄はお父様が認めてくれる訳が無い、そんなことは分かってるだから出奔して身を隠しつつ冒険者として動くしかない。


「陛下は殿下を王太子にする御意向だ。認めることはないだろうな。それにあの堅物の宰相も首を縦に振ることは無いだろう。まず間違いなく彼らは時が来るまで待てと言うだろう。最も王に相応しい素質を持つ王族を外に出すとは思えん」

「ええ〜!?それって打つ手が無いじゃん!」

「あるわ、出奔よ。追われる身にはなるけど最悪の手を採るよりはマシよ。そもそもお父様には何も言うつもりは無いわ。言ったところでマトモな手を打つとは思えないし、余計な手を打ち無駄な情報拡散を招くわ」

「つまりワシに求めるは出奔の幇助か」

「えぇ、頼りにさせてもらうわ」

「ならばグレン」

「じいちゃん?」

「お前は冒険者として情報収集を行え、そして殿下を支えるのだ」

「分かった」


 情報の収集はミハイルに頼んでいる。フリードがグレンにその指示を出すなら彼とは絶対に接触させる必要があるわね。


「ならグレンは大神官ミハイルに会いなさい。彼は重要なパートナーになるはずです」

「正直大神官に会う必要があるとは思えないんですが…」

「必要よ。彼も私の協力者だから」

「もしかして大神官もアリシア殿下の秘密を知っているのか?」

「今、私の秘密を知るは、大神官ミハイル、鍛冶屋シュウソウ店長ヤツスナ、そしてあなたたちだけよ」

「ほう、意外な名があるな。あの頑固者の鍛冶師を味方に引き入れることに成功したのか」

「成功したわ」

「それは意外だな」


 ヤツスナの名は想定外だったらしい、まぁどうでも良いのでそのまま流した。


「今日のことは他言無用で頼むわ。話を知る者が増えるほど危険が増えるからね」


 皆が納得し顔を引き締めた。

 そうしてる話は終わった。


 話が終わったのでリンネとリーネに戻ってきてもらった。

 戻ってきた時に在位種の魔物を暇つぶしに狩っていたらしく小型の魔物が吊り下げられていた。


 こうして元の目的地に向けて再度歩みを始めた。

 本来の「訓練」の為に

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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