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32話 疑惑

 フリードに率いられた7人の臨時パーティーはブルダブル洞窟に向けて平原を北上していた。

 道半ばぐらいでやはりと言うべきか、魔物、しかも上位種の群れが現れた。


「プギャー!!!!」

「ブラックオークの群れぞ!あの怪力野郎の攻撃に潰されるな!」


 ブラックオーク、オーク種の中でも硬い表皮を持つことで有名な魔物だった。しかもそれが10体もいた。


 まずは私とリンネとリーネの遠距離攻撃で始まった。魔法は普通に通じて初手で2体は何とか倒すことに成功した。しかし…


「なんで矢が通らないの?」


 震えながらリンネが怯えてる。矢は胸に、心臓のある辺りに命中していた。普通の魔物ならノックアウトしていたはずだった。しかしブラックオークの胸は特に硬い部位だったのもあって通らなかったのだ。

 そうしてるうちに近接戦圏内にブラックオークが侵入した。残り7匹(うち1匹負傷)になっていた。


「硬いだけの豚に負けねぇよ!」


 私は横薙ぎに振られた棍棒を姿勢を落として避けると、そのまま魔力を乗せた刀で脚を叩き斬った。魔力を放ち、身体強化を使うことで斬撃の威力を上げたことで硬い皮膚にも普通に刃が通るようになった。最後はバランスを崩して倒れたところで首を斬り落とした。


「まずは一匹!」


 パーティーの仲間たちも次々敵を倒していく、フリードは老獪な剣術でブラックオークを斬り落として見せ、2体目に斬りかかっていた。流石元Sランクだわ…。

 ツバキは双剣の強みである速さでノロマなブラックオークを翻弄していた。硬すぎる表皮を斬るのはコツが要るので彼女には荷が重かったらしく決定打にかけていた。しかしここも何とか時間稼ぎが出来そうだった。

 マリンもかなり強く、表皮も斬れていたので一人で何とか対処はできそうだった。

 残り3人で何とか1匹と渡り合っていた。初めてのはずなのに何故か良い連携が取れていた。訳が分からない。


 私は苦戦しているツバキの応援に向かった。ツバキに集中しているところを背後から心臓を貫き斬り捨てた。後ろからなら幾らでもやりようはあるからね。

 因みに残った一匹はフリードが遅れてきたところをあっさりとどめを刺していた。負傷してるブラックオーク如き、彼からすれば瞬殺可能な相手のはずだ。


「ハァハァハァ…何とか倒せたわね…」


 そうして敵を倒してるうちにマリンも怪我こそしたものの何とか勝てたようだった。


 グレン達は…良い感じで戦えてるわね。


「オラッ!」

「ピギーッ!」


 上手くグレンが囮役になりつつ斬って傷を与えていた。そしてブラックオークの顔面には複数の矢が刺さり出血、リーネは補助魔法や即効性の高い治癒魔法をメインに使って補助で動いてるようだった。ただ、よく見てるとところどころお邪魔虫するかのような攻撃魔法がところどころ混じっている。

 私はリーネの戦術に目を光らせた。魔法を取り入れた近接戦はあまり例がなく、超高度戦術とされてきた。だけど彼女の戦い方はそれを実現する為の鍵の1つになると考えられた。


 考え事をしているうちにリーネがタイミングよく放ったブラストボールがクリーンヒットしてブラックオークが吹っ飛びグレンがとどめを刺すことに成功していた。

 初めての組み合わせとは思えない、まさにお見事としか言えない戦いっぷりだった。


「殿下の戦闘力は一流ですな、Bランク、いや、既にAランクに匹敵する戦闘能力の持ち主であられたとは思いませんでしたぞ」

「英雄にお褒めいただき恐縮ですわね。リーネさん、私の魔法はどうでしたか?」

「威力は悪くないと思うの、でも精度はもう少し向上させられると思うの」

「確かにリーネに比べて威力でゴリ圧してるように見えたわ」

「あんたはそもそも魔法使えないでしょ!と言うか矢が通らずにアタフタしたのはだーれ?」

「うっ…」

「でも剣に魔力を纏わせたのは純粋に凄いと思うの」


 リーネは流石に魔道士として指導のお願いを受けてただけあって私の戦いをよく見てた。私のことを意識しながら自分の敵に対峙できるのは凄いわね。、


「近接戦の強みを更に強くするには魔法の複数同時展開の技術を身に着けると良いの。剣を振るいながら攻撃魔法を放てれば戦術的に大きく進化すると思うの」

「複数同時展開?」

「知らないのは無理もないの!戦闘魔道士向けの超高度技法で一般には知られていないマニアックで専門的な技術なの!私は苦手だから実戦では使えないの」

「何それ!知りたい!」

「わかった、後で教えるの!」


 リーネちゃんがやる気になってくるのはありがたい、研究学術院の魔道士の魔法は実戦的じゃないからあまり役には立たないのよね。その点、実戦経験持ちのリーネちゃんの魔法は非常に為になるものだったわ。流石フリードの人選である。


「剣術も凄いのね。この歳でこんなに強いなんて普通じゃないわ。見たところ私が使ってる人気のトインセ流とは違うみたいだけど、どこの流派なの?」

「へぇ、今の冒険者の間ではあれが流行ってるんだ?私はトーイス流の使い手よ」


 やっぱりマリンは剣術が気になるらしい。まぁ剣士だからね。


「トーイス流?聞いたことないわ…。王女殿下ですし、てっきり騎士団主流のベルタグル流だと思ってたわ」

「あの御堅いやつね…。一応それも習ったわ。あんな御堅い剣技では実戦を戦い抜ける訳が無い、あれはもう私は見切ってるのよ」

「何度も実戦を経験されたようなご意見ですが…」

「あっ…」


 やらかしてしまった…。前世を根拠にしたことを言ってしまった…。


「正直に言えば、殿下のトーイス流を初めて見た時、何故その剣術を使えるのか疑問に思いましたなぁ…。あれはこの国では絶滅したと言われている剣術ですからな。前回は回答を拒否されてしまいましたが何処で誰に教わったのか、知りたいものですな」


 フリードは確信していた、私の隠し事とさっきの失態が結びついていることを…

 これはどう答えたものか…


「あら?考え込んだところを見ると図星かしら?フフフッ」


 マリンは油断も隙もないな…。まぁ確かに図星なんだけどね…。

 残歴転生について話すのはリスクの塊、前世の繋がりのあるフリードは兎も角、彼女たちに教えてしまうのはちょっと躊躇わざるおえない。


「うむ、陛下にトーイス流剣術について話してしまうか。そうすれば殿下も下手には動けまい」


 げっ!そうきたか…。確かにお父様とフリードは友人の関係だから簡単に会えてしまう。これは超まずい。

何故か二人が意気投合してる…。

 あ、依頼を出すまでに面識があるから当然か。


「フリードにはいずれ話すつもりでいたんだけどね」

「?」


 王侯貴族間で関係の薄い者同士で名で呼ぶことはあまりない、基本は家名+地位で呼ぶのが普通である。私は諦めて話すことにした。フリードも内容はどうあれ私が「仮面」を外したことに気づいたようだった。

明日は臨時休載とします。

次回は明後日5月30日19:30を予定してます。

メンテナンスが予想以上に延び数日に渡った場合は活動報告もしくはX(旧twitter)にて予告を行います。


これからも理を越える剣姫を宜しくお願いします。

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