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30話 周りは推すは華の道、されど望むは武の道

 あの衝撃的な国務卿会合の後、お父様から呼び出されていた。


「お前というやつは…まさか感情の制御に異常をきたすとは…そこまで嫌か?」

「嫌です。当面の代理は仕方無いと割り切ってますけどね。どっちみち王太子交代を望まない外政卿が今回の話を広めると思います。なので私の醜聞は広まるでしょうから私の王太子就任は難しいと思いますよ」

「今回の件があろうと無かろうと少なからず反発する者は現れる。だが些事に過ぎん、立太子強行に問題は無い。今更逃げるなど許されん、大人しく諦めろ」


 あれだけ暴れても、こんなに拒否の姿勢を貫いても、強引にクズ野郎を廃嫡し私を立太子させるつもりらしい。何故そこまで無理をするのか…、全く理解できなかった。


「しかし何故そこまで焦るのです?王太子を急ぎ任命しなければならない理由なんて無いと思うのですけど…」

「体制を早急に固める必要があった。そうでなくとも王太子の謹慎で貴族共が動揺しておる。そこに魔物の大量の発生と言う有事が起きた。最早貴族社会は混乱し爆発寸前、民衆にも不安が広がり続けている。あまり猶予はない」

「つまり次代だけでも確定させて少しでも王国が安定しているとアピールしたいと、そして私はその生贄だと言いたいわけね。絶対に勘弁よ!」

「生贄とは人聞きが悪い!次代を確定するのも目的の1つだが目的は他にある。それは国を纏める有能な統率者を増やすことにある。同情はせぬ、立太子は強行する」


 お父様はどうしても折れないらしい、これは思った以上に焦ってるね…。仕方ないので当日は逃げ出してやろう。不在ともなれば問題になるだろうし、貴族たちも失望する可能性は高く廃嫡路線になるだろうしね。

 当日の脱走経路も確認しておかないとね。まだ立太子までには3ヶ月あるから余裕余裕♪


ーーーーーーーーーー


 お父様の元からから下がった後、私は待ちに待った報告を受けた。

 ヤツスナが作った刀が2〜3日のうちに届くらしい。


 ようやく届く

 ようやく本領を出せる


 剣士にとって己に合う剣は己の技量を最大限発揮できる相棒だ。私が私らしく、最大限力を発揮できる武器はトーイスの標準武器たる刀だ。でも今の私にはそれがない、だからこそ入手困難な刀が必要だった。そしてそれを打てるのは彼だけである。それ故に彼の打った刀が要る。

 だからこそ、この時を待ち望んだのだ。


 しかし…


「殿下、殿下は騎士ではなく王太子、そして未来の国王となられるお方ですよ。剣を振るい戦功を立てられるより、身を飾り社交界で華々しく活躍される方が大切にございます。ゆめゆめお忘れなきよう」


 テレジアはこう言った。彼女の立場からすれば王族の教え子が剣の道に進んでほしくないのは理解できる。だけど周りの侍女たちまで全面賛同なのは意外だった。

 理由を聞いたらこう返ってきた。


「御身体に傷がついたらどうなさるおつもりですか?おやめください」

「殿下は無骨な格好よりもドレスがお似合いですわ」

「王女や貴族令嬢が武の道に進むことはほぼありません。例外なのは余程の武名を誇る一族や、変わり者で尚且つ家督などの重責を負わないことがはっきりしている者だけです。殿下のような重責を負うことが決まった者が武の道を征くことはありません」

「私達は殿下の身の回りの世話がお仕事です。私達にとっては慣れない武器の整備は出来れば無いに越したことは無いのです」


 完全に孤立してしまっている…。

 だけどそれで私は諦めない。

 私は私の歩む道の為にしか進まない。


 この様な態度をとりだしたことで周囲からは超早めの反抗期と捉えられた。


ーーーーーーーーーー


 翌々日、早朝にヤツスナが打ってくれた刀が届いた。


 早速大太刀を手に持ってみるとかなり重く感じたけど懐かしい感覚があった。アンだった頃はこの重量物を振り回し敵を切り裂いて回っていたのだから。

 まぁ重く感じるのはまだ体が小さいし前世に比べて筋力も無いから仕方ないけど…。


 因みに予定より早く着いた理由は王都周辺の情勢を聞いた輸送商が急ぎ届けてくれたかららしい。非常にありがたい働きをしてくれているので、別途私から報奨を贈った。

 危険な道中を王族の依頼品を急ぎ届けてくれたのだからそれくらいはしないとね。


 そんなこんなで届けられた刀を持って私は騎士団の訓練場に向かった。


「アリシア殿下、今日は如何様な用事でございましょうか」

「久しぶりに模擬戦をしてみたくてね。誰か相手してくれない?」

「単刀直入ですな…丁度騎士たちが模擬戦の訓練をしていますので混ぜられては如何ですか?」


 諦めが混じった感じだったけど丁度いい情報が手に入った。

 そうして私は模擬戦に混じっていくことにした。

 騎士団では訓練のために模擬戦を行う場合、安全の為に1つの魔道具を使うことが義務付けられている。

 それは鋭い刃物で貫かれないようにする結界を体の表面に張る魔道具だ。これを使えば思いっきり愛剣を振るっても人を殺さずに済む。非常にありがたい訓練機材だった。まぁ当たれば痛いし魔法には意味ないんだけどね…。

 因みにこれ、めちゃくちゃ高価な魔道具として有名で、「訓練機材にそんな金掛けられるか!」と言う声は多く存在する。だから貴族の多い騎士団には配備されてるけど、平民の多い常備軍や冒険者の間ではあまり広がっていないのが実情だったりする。常備軍や冒険者でこれを持ってる人たちはわざわざ私財から大枚はたいて買ったということだ。


 話を戻すと私がここに来て呆れられたのはヤツスナとの行った高度な模擬戦について話が騎士団で広がっていたからだった。

 そもそも王女が剣の道に進むことはあまり良い風には思われない。なので身を守るために多少の剣の心得は推奨されてもガッツリやるのは望ましくないと言うのが貴族女性の基本、だから私はかなり異端と言える。しかし断られなかったのは前回ヤツスナとの模擬戦をやったことでその才覚が知れ渡ったことにある。あれだけ強ければ問題ないだろう、と騎士団関係者が判断した為だった。

 当然魔道具を装備するなり白い目で見られたことは言うまでもない。


 既に私の模擬戦参加は黙認されているので、これを幸いに私は思いっきり刀を振るい、騎士たちと打ち合った。やはり私の実力は高いらしく、ほとんどの騎士に対して勝利することができた。相手になった騎士によっては相性の良し悪しが出て滅多打ちにしてしまったこともあるけど、まぁ大丈夫でしょう。

 ただ、打ち合った騎士全員からバケモノ王女扱いされてしまったのは勘弁してほしかった。

 バケモノって何よ!ほんっと失礼ね!


 翌日お父様に呼び出されて、何かと思ったら騎士を滅多打ちにしたことが問題になったようで、めちゃくちゃ怒られてしまった。まぁ私は王女としてはかなりの戦闘狂な自覚はあるけど彼が弱すぎるだけじゃないの?とは思った。だって幾ら守られる側の私が相当な手練れだからといって守られる側の方が圧倒的に強すぎるって、それはそれで問題でしょ?


 後で聞いた話では私に滅多打ちにされたり、明らかに私より弱かった騎士たちは地獄の訓練が科されたらしい。騎士団全体で私に負けた場合の処遇が広まり、恐怖が伝搬しているそうだった。

 まぁ当然よね。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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