52話 新たなる技術
魔族と戦う、それは普通の人の身では自殺志願と何も変わらない行為だ。
何故なら魔族は普通のやり方では殺せないことが明白であり、邪気を操る魔族を倒すには聖気を使う必要がある。聖気を使わずに倒すのは本当に至難の業で、私も一度臨んだけど結局は聖別された刀でトドメを刺している。
レインのやり方が成功すれば確かにこのパーティーの底上げにはなる。
でも確実とは言い切れない。だからこそ確実な手段を増やしておくのは悪くはない。
なので主要な話を終えたところでラーシアに一つの打診を行った。
「ラーシア、これを使ってみない?」
私が出したのは一振りの刀、偶然聖別された大輪花だ。
実のところ、彼女は私をよく観察している。強くなるためにね。
彼女は自身を嫌う継母が幅を利かせる実家から逃れて生きていくために強くなる必要がある。それに冒険者として生きていくことを決断している。だから強くなるために貪欲なのだ。
現に彼女の剣術は両刃剣のものから私を真似た刀のものへと変化させつつある。
だからここで刀に慣れさせるのも良いかもしれない。
「何故今それを?こんな危険な場所で試すことでは無くて?」
「これは大輪花と銘打たれた刀よ。偶然聖別された一振りなの。魔族と戦うには聖気を使う必要があることは知ってるわよね?」
「え……?」
「それに貴女の剣術は既に両刃剣から刀を主眼に据えたものへと変化しているわ。私を真似たのでしょうけど。だから本物の刀を体感するのも悪くないんじゃないかしら?どのみち聖気が無ければ足手纏ならと思ってね」
「気づかれていたのね」
だけど問題がないわけじゃない。
「刀の扱い方は難しい、両刃剣に比べてな。とてもじゃないがそう簡単に身に付くものじゃない。両刃剣で刀を真似てるだけの奴が刀を渡されても上手く使えるとは思えんな」
「アンタらの話は聞いている。だがオッサンの言う通りだぜ。この状況で知識のない奴に貸すのは愚策だ。学ばせるならこの騒動を解決させた後にするべきだろうよ」
臨時メンバーの皆さんの言う通りだ。否定はできないし、するつもりも無い。実際刀と両刃剣は扱い方に大きな差があるからね。
しかし彼女に大輪花を託した理由は別のところうにもある。間につけさせたし
聖気は触れ続けると体が慣れていく性質があるとされる。
そう、万が一の時に彼女が教国に庇護してもらえる可能性を作るためでもあるのだ。聖人になってしまえば護るのは容易になる。これは絶対に表立って言えない話だけど。
なので適当なことを言ってこの話は押し通した。
「それにしても見るからに刃が太いな。長さの割に重たい代物のはずだ。初めての刀にしてはこれは使いにくくないか?」
「まぁ折れた大太刀を短くしたモノだからよ。聖別された武器で渡せるものとなるとこれくらいしか無いのよね。他にも持ってるけど、それらは使い手を激しく選ぶ代物しか無いの」
「そりゃ仕方ねぇな……」
「それに身体強化も身に付けさせてるから問題ないでしょう」
皆を渋々だけど納得させたところで休憩を終了させることにした。
休憩していた場所から出るなり魔物の群れと遭遇してしまった。当然魔物たちは魔族によって強化された形跡がある。邪気を纏ってるからすぐに分かった。
「やってみるぞ」
強化された魔物の群れに気づいたレインは即座に集団強化魔法を使用した。当然聖気を混ぜ込んでおり、雰囲気からして元の魔法から別物へと変貌していた。
「道術とは比べるまでもねぇが……これなら魔族にも少しは対抗できるだろうな」
「無いよりマシってとこだろう」
やはり道術には叶わなかったらしい。
効果はあることは証明された。
正常に強化されたことに気づいているベテラン4人はいい勢いで敵を殲滅している。聖気によって魔族の邪気に対する効果が増しているのを利用して魔物を次々と屠っていた。
それにしてもこの状態で私が前に出なくても済む勢いって、なかなか凄いわね。戦い慣れているのがよく分かるし、参考になるところも多々ある。と言うか剣術だけなら私でも彼等に勝てる保証はないのよね。戦場に立ち続けた戦士の強さ、羨ましく感じるわ。
剣術だけじゃない。ここまでの戦いで聖気の取扱いに関して思うところがあった。
聖気は単純な力だと考えていた。複雑な術式は組めないと……。
でも道術という技術体系やレインの魔力との併用策、そしてあの力場もそうだ。
もしかしたら聖気も本当に魔法の様に使えるのかもしれない。そんな予感がしていた。
既に構想はできている。
「ふぅ……」
聖気で複雑な術式を構築する。それは不可能ではないはずだ。
それに限りなく近い道術は見様見真似で再現できるほど甘くはない。それは見てても分かる。レインの技は魔法の応用であり、訓練をすれば誰でもできるようになる。そう、私には魔法がある。
魔法に聖気を混ぜ込めるなら、逆に聖気に魔法で干渉することもできるはず。
魔法で聖気を強引に誘導、そして解き放った。
「ん?何だ?」
純粋な聖気を魔法で干渉し、術式として成立させた。理論を実践へと移した。
聖気によって放たれた炎は魔物を焼き尽くしつつ拡散されていく。しかし仲間は焼けない。
そう、事実上の術式として機能させた結果だ。
「道術?いや、道術で攻撃はできないはず……」
「聖気で……そんな……!?」
ぶっつけ本番だったけど全ては上手く機能した。
「コツは掴めたわね」
いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。
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