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17話 想定外

 マイラスーンは最終的に半年の謹慎処分となった。

 王族男性が女性に暴力を振るうなど言語道断の上に国王権限侵食たる越権行為、あまりにも酷すぎて誰も擁護など出来ない有様だった。

 対して私はと言うとやり過ぎたことに関して怒られただけで済んだ。まぁ基本的に非はあの愚かなクズにあるからそれで済んだけど…。


「う〜ん、王都の外は気持ちいい〜」


 私は多数の護衛の兵士と教師を連れて王都から少し離れた草原地帯にきていた。

 目的は魔法の訓練である。


「やぁ!」


 掛け声とともに火の玉を投げ飛ばす。その火の玉は着地とともに爆散した。これは爆炎球と言う魔法だけど、本当は先生の予定には入ってなかったらしい。

 元々護身術の一環という名目なのでこんな高火力の魔法を想定してなかったらしい。想定していた初歩的な攻撃魔法はすぐに習得できた。というか簡単だった。あまりにも驚異的な早さだったのでカラクリを知ろうとした魔法の先生に問い詰められた。そして解ったことはどうやら魔力制御はよく出来るらしく魔法の習得が早まってるらしい。必死に独学で生活魔法などを練習した甲斐があった。

 魔法の先生はもともと予定してた魔法がスラスラ使えるのを確認して打ち切ろうとしたがそれはさせなかった。楽しくなってきた私は彼を留めてもっと火力のある魔法を教えてもらった。ぶっちゃけ護衛も含めて要らんだろって顔してたよ。


 練習を終えて休憩してたところ風が吹いた。風とともに悲鳴が聞こえてきた。


「悲鳴が聞こえるわ」

「殿下!すぐにお隠れを…どちらの方向から聞こえましたでしょうか?」

「方角的には北、ブルダブル洞窟の方角だけど…何故か違和感を感じるわ」

「ブルダブル?彼処は冒険者が多いから変な魔物が抜け出しにくいと思うのですが…」


 護衛たちは私を即座に逃せられるよう体制を作ると厳重に警戒を始めた。どうやら気がついたのは私だけだったらしい。

 しかし悲鳴は徐々に近付いてきてる。


「ん?あれは悲鳴か…?すぐに殿下を逃せ!」


 ようやく気づいた兵士が大声をあげる。

 しかしそれは悪手だった。

 襲ってきた魔物はウィズダムデビルボア、本来この辺ではあまり見かけない強力な魔物だったはず。しかも20匹近い群れだった。更にタイミング悪く襲ってた人が吹き飛ばされた瞬間だった。ウィズダムデビルボアは極めて知能が高く他の動物(魔物や人間含む)に対して超好戦的な魔物である。並の兵士では普通は勝てない相手だ。まぁこのイノシシは有名な弱点があるのだけどね…。

 ウィズダムデビルボアの群はこちらに気づいており襲っていた人が吹き飛ばされた瞬間全てを吹き飛ばすが如き恐ろしく凄まじい勢いでこちらに突進してきた。大声を上げた護衛が出た時点でこちらは既に敵判定、もはや逃げるも叶わず戦うしか無い。しかしその程度のことを兵士たちは理解できなかった。バーストボアと勘違いしたからだ。

 護衛のうちの1人が私を抱えて離脱を試みる。

 流石に犬死したくなかったので手を出すことにした。


「もう逃げ切れないわ。あれはウィズダムデビルボア、大声を上げたのは失態よ。突進を躱しつつ鼻を狙いなさい!」


ウィズダムデビルボアの弱点はズバリ鼻と腹である。腹を狙うのは至難の業、しかし鼻は割と簡単に攻撃できる。このイノシシの鼻は魔法の展開に利用されるため、ここに怪我を負うと大きく弱体化する。


「あなたも私を離して備えなさい。あれは逃げる存在を優先して追う習性がある。とてもじゃないけどあれを止めるのは厳しい、あなたと一緒に死にたくはないわ。私は対処できるから大丈夫よ」

「その方が危険です。この規模でも騎士に率いられた軍人集団ならイノシシの突進程度なら余裕で止められます」

「馬鹿者!あれはただの突進ではない!強力な魔法を纏った突進よ!正面から受ける様な真似は自殺行為でしかないわ!」


 その時前衛が吹き飛ばされた。ただのイノシシの突進と判断した兵士たち10名が一瞬で蹴散らされたのだ。無論ここに居る護衛は全員が完全重武装である。


「なっ!?馬鹿な!?」

「言ったでしょ!さっさと降ろして回避体制を取りなさい!」

「は、はい!」


 降ろしてもらった私は即座に迎撃体制をとる。

 他の兵士も全員が指示に従った。ここには誰も死にたいものは居ない。そして仲間たちが正面から受けて吹き飛ばされ重症を負ったことも知っている。


「来るぞ!避けろ!」


 大半は突撃してきたウィズダムデビルボアの突進を上手く躱しつつ反撃を行った。

 しかし5名ほど躱しそこねてしまった。

 私は身体強化魔法を使いジャンプで避けてイノシシの顔面に炎魔法を浴びせた。着地するなりすぐに倒された護衛が持っていた剣をとるとすぐに次の攻撃に備えた。

 回避から反撃で魔法を無力化出来たのは私が逆撃加えたのを含めてたったの4匹、先手をとられてる以上かなり劣勢だった。今回の場合は護衛に派遣された兵士たちにとっては乱戦の方が荷が軽い。現役時代ほどの体力の無い私にとっては勘弁してほしいけど…。


 その時だったこちらに向かってくる者たちが目に入った。

 誰かと思ってよく見たらグレンと老人が1人突撃してきた。


「征くぞ!このフリードが加勢に来たぞ!」


 まさかあのフリード?確かによく見てみればその面影が顔を残っている。あの逞しい顔つきと体は老いて尚健在だった。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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