8話 道
「ここに顕れしは黄泉返りし聖なる英傑、我が求めに応じ聖なる英傑を導き給え!神々よ、ここに神官ボルテスの求めに応じ給え!」
神官長が祠に祈りを捧げている。
私は神官長の指示に従い祠の前に立った。
祈りが届けば祠の前に立つ者が神々に審査されるらしく、審査が通れば祠が開いて地下通路が現れるらしい。
因みに本当に審査の対象が聖人でなければ開かないし、開いた地下通路も結界があるのでそもそも聖人以外は抜けられないらしい。条件こそあれど聞けば聞くほどズルも良いところな国境の越え方だ。聖人が追われた際にここに逃げ込まれたら追手は諦めるしかない。
伝承が正しければ私は問題なく通れるらしい。公爵に見つかってなければ絶対にこんなズルはしたくはないわね。施政者側にいた経験があるから余計にそう思ってしまう。前世の私なら躊躇わず効率重視で使ってたかもしれないけどね。
「今ここに、残歴転生せし聖人ジャンヌの為、祠を開き給え!」
祈りの最後の一節と共に私とその周りが照らされた。これが神々の審査なのね、照らされることで目立つのが難点かしらね?追手が来る頃には地下通路に逃げ込めていれば良いのだけど……。
不安が募る中、私は光の中で意識が薄れていくのを感じた。
この感覚はアレだ。神界に呼び出される時の現象、こんな所で呼び出されるなんて……何が……?
そこで私の意識が一度完全に途切れた。
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気が付いた時は神界にいた。
ここに来るのは2回目、前回は残歴転生の使命についての通達だった。
色々と思うことはある、でもそれは一旦避けておくしかない。
今回、私の前に現れたのは輪廻神ただ一柱だけだった。
「久しきかな、聖者よ」
「久しく存じます、輪廻神様」
相変わらず見た目は神々しい、とは言え今回はその神意は分からないわね。ロクな要件で無いことを願おう。
「初めに私をここに呼び出した神意を伺いたく存じます」
「ふむ、お主の疑問は至極当然である。我らは残歴転生せし聖者たるお主のことを注視している。当然だが異変や特異な行動にも気が付きやすいのだ。お主が聖者の道に進み始めたからここに呼び出したのだ」
聖者?そんな高尚な存在になったつもりは一切無いんですけど……。
「はて、私は聖者の道を歩んでたつもりはございませんが、どのようにして聖者の道を歩んでると判断されたのでしょうか?」
「先日、お主は邪なる者の加護を受けた信奉者どもを駆逐しておる。その上で聖地へと歩みを進めてる。それが2つ目の質問の答えだ。他に質問が無ければ本題に入る」
「聖地とは地上のチバンガ教国、もしくはその一部という認識で良いのでしょうか?」
「あぁ、我らを奉りし者たちの祈りの場にして創世の始まり地、その国にそれは存在する。聖者ならざる人間がその真実を知る術は無いがな」
なるほど、聖地は教国上層部ですら知らないレベルの特殊な土地が存在するとはね……。
しかしその様な場所が存在する意義は一体何なのか?今の私には全く理解できない。いや、神々が教国のことを信頼していないとすれば説明はつく、でもそれは信じ難いと言うのが本音だ。
「聖地は修行の地、然るべき者が然るべき力をつけるための場である。知るべきにあらざる者が余計な真似をせぬようにする為に存在を隠蔽されてきた。お主は必ずや強い聖気に導かれ辿り着けるだろう」
「強い聖気ですか?」
「お主なら気付けるはずだ」
ナニイッテルノコノヒト
つい言いかけてしまった。本当に何を言ってるのか分からない。
私なら気付ける、どういうこと?
「聖地で鍛えれば必ずや邪悪に打ち勝つ強い神聖力を得る事ができる、お主に必ずや必要となる力だ」
「は、はぁ……」
「今は分からずとも構わぬ、征くが良い。お主は進まねばならぬ、今はその事のみを考えよ。聡明なお主ならばいつか真意に気付き使命を果たせるはずだ」
その言葉と共に戻される気配がした。
通達するだけしてそれで終わり、相変わらずメチャクチャね……。でも仕方ない、一応この時のことは頭に留めておこう。今後何があるか分からない訳だし。
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光の結界が解けると同時に私の意識は現実へと戻ってきた。
そして祠から地下に続く通路が開いており、伝承通り、結界がそこには張られていた。
「ジャンヌ殿、道は開かれました。教国へ向かいなされ。あの光の柱さ目立ちました、追手が来ることでしょう。通路に入ればこちらのものです」
「えぇ、そうね」
私は神官長の促され通路へと歩みを進めた。結界はすり抜けることができた。しかし他の者はそうでも無かった。グレン弾かれてしまった。
結界は音は遮断しないらしく、グレンの声が聞こえてきた。
「僕は後から別の道で向かう!早くいけ!追手が来る前に!」
「分かったわ」
その一言と共に頷き、通路を駆けた。
もう振り返る余裕はない、一刻も早く先に進まなくてはいけない。
この先にあるのは救いと信じて私は駆けた。
夜通し、一睡もすることなく地下通路を駆け抜けた。地下通路に光は無い、でもそれは魔道具で補った。
心を無にして只管に出口を目指した。
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地上は既に夜が明けただろうか、長い事走り続けた。無論何もなしにこんな長く走り続けることはできない。治癒魔法や身体強化を駆使して疾走してきた。もう既に魔力は枯渇気味、体も疲労困憊で体力もほぼ現界、それでもここまで走ってきた。
そして今、目の前に扉があった。出口である。
「ようやく辿り着いた……わね……」
扉の前に立ったその時、出口の扉は開いた。眩しい、ようやく太陽に照らされた大地に出れた。
外に出てみればちょうど朝日が昇ったところだった。ここから私の新しい戦いが始まる。
いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。
次回から正式にチバンガ教国での物語になります。
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